人を殺し、育った修道院兼教護院に舞い戻った青年・朧。修道女を犯し、暴力の衝動に身を任せ、冒涜と倫理のはざまで揺れる日々。目指すは、僕の王国ー世紀末の虚無の中、「神の子」は暴走する。第119回芥川賞受賞。
「つくづくとばかばかしく思うのだよ」なれど「このお役目が、おれの性にぴたりはまっている」のである。だから火盗改方の長官・長谷川平蔵は、疲れにもめげず今日もまた出動する。作者もいよいよ脂の乗った「礼金二百両」「猫じゃらしの女」「剣客」「狐火」「大川の隠居」「盗賊人相書」「のっその医者」の七篇収録。
蝦夷地の主・松前藩は、アイヌの人びとを酷使して豊富な海産物を独占していたが、この内実を他に知られるのを恐れ、北辺にせまる大国ロシアの足音を聞きながら、それをも隠し続けた。漸くにして嘉兵衛が巨船を作り上げ、憧れのかの地を踏んだころから、情勢は意外な展開をみせ始めた。幕府が東蝦夷地の経営に乗り出したのだ。
ロシアは、その東部の寒冷地帯の運営を円滑にするために、日本に食糧の供給を求めた。が、幕府が交易を拒絶したことから、報復の連鎖反応が始まった。ロシア船が北方の日本の漁場を襲撃すれば、幕府も千島で測量中のロシア海軍少佐を捕縛する。商人にすぎない嘉兵衛の未来にも、両国の軋轢が次第に重くのしかかってくる…。
女の子には出世の道が二つある!社長になるか社長夫人になるか、キャリアウーマンか専業主婦かー。職業的な達成と家庭的な幸福の間で揺れ動いた明治・大正・昭和の「モダンガール」たちは、20世紀の百年をどう生きたのか。近代女性の生き方を欲望史観で読み解き、21世紀に向けた女の子の生き方を探る。
幕末・新政府軍に凄い奴がいた!!神算鬼謀の将・山田顕義(市之允)を吉田松陰ー久坂玄瑞ー高杉晋作の巨脈の中で描く。
30歳にして人生どん詰まりの梨央。一目惚れしたとび職を追いかけて飛び込んだ工務店では、亭主に逃げられた女社長がぶち切れ寸前。なにがなんだか大混乱。それでも家は建てなきゃいけない。だって、お仕事なんだもん。
販売、広告、メディアを先端技術で革新し、人々の暮らしを劇的に変えてゆく「ウェブ2・0」。一方、存亡の危機に瀕したTV、新聞、雑誌ー。激動のネットビジネス最前線をレポート。その先のビジネスの可能性について、現時点で判断できるすべての要素を加味し、ウェブ2.0の今後の方向性と将来性を、徹底的に洗い直した。書かれている論点は、それらビジネスの実現可能性を包括的にとらえる試みである。
哲彦が疎開先の漁村で出会った少年・喬史の顔の左半分を覆う真っ黒な痣。村人たちはそれをスナメリの祟りと忌み嫌うが、痣に埋もれた喬史の左目にはもっと恐ろしい秘密があったー。表題作など、グロテスクな美意識が異彩を放つ驚異のデビュー作。オール讀物新人賞受賞。
静かな、静かな、ひとりぼっちの月。ぼくたちは明日から、もう家族じゃない。澄んだ光に満ちた秋が、かけがえのない時間を連れてくるものがたりの歳時記ー「秋」の巻、12編。
銀座の花師・佐月恭壱のもう一つの顔は絵画修復師。大正末期に活躍した画家の孫娘から、いわくつきの傑作の修復を依頼された佐月は、描かれたパリの街並みの下に別の絵が隠れていることに気づく…表題作ほか、欧州帰りの若き佐月を描いた文庫書下ろし「凍月」等全三篇。裏の裏をかく北森ワールドに酔う一冊。
激しい発作に襲われる少女・あや香。米国の医療刑務所で、終わりなき地獄の責め苦を受ける不死の死刑囚。時空を超えて二人をつなぐ運命の桎梏とは。
「殿は、いつまでもあの『覇王』の手先であってはなりませぬ」。死を目前にした軍師・竹中半兵衛は、病床で秀吉に四つの忠言と秘策を授けた。天正七年(一五七九)六月、蜂須賀小六、前野小右衛門ら播州から駆けつけた異能集団“山の民”を伴い、秀吉は密かに天下取りに動き出す。大ベストセラー『信長の棺』に続く本能寺三部作、第二弾。
相談無料。地獄の沙汰も脳次第。いま注目の脳科学が楽しく学べるユーモア小説!遺伝子、進化、A.I.など最新トピックがこれでわかります。
益田ミリが、10代でやっておきたかった「青春」があなたの胸をきゅんとうつ!哀愁のエッセイ&コミック。
亡き父の借財を抱えた大学生、井領哲之。大阪にあるホテルでのアルバイトに勤しむ彼の部屋には、釘で柱に打ちつけられても生きている蜥蜴の「キン」がいるー。可憐な恋人とともに、人生を真摯に生きようとする哲之の憂鬱や苦悩、そして情熱を一年の移ろいのなかにえがく、青春文学の輝かしい収穫。
夏目清茂七十四歳、本日脳梗塞のためめでたく昇天いたしました。「どこにでもいるただひとり」の男の一生を、一代記とは異なる形で描いた傑作長編小説。
曹操はついに立った。天子を奉じることを決断。七年前に脱出した洛陽へと向かう。時代は、攅峰を均すという作業をはじめた。ひときわ高い山だけが残る。たれに帰服すればよいかー志のあるものは、高山の麓に集まりつつある。呂布、袁術らが舞台から姿を消し、いよいよ曹操と袁紹は天下分け目の「官渡の戦い」へ。文庫版オリジナル書き下ろし『後漢と三国の仏教事情』(三)収録。