塗ったペンキが垂れ下がってできる不規則な模様、カップから立ち昇る湯気が液面上に描く亀甲模様、雪の結晶が成長するときの樹枝状の模様。つながりのなさそうなこれら現象にじつは共通するものがある。不安定な状態が安定な状態に落ち着こうとする変化の過程で過渡的に現われる模様なのだ。ありふれた現象ながら、意外にも古典的手法では説明がつかないという。古典理論の破れ目から見えてくるものとは何か?ほかに、ゴルフのバック・スピンはグリーンの表面状態に無関係という話、昆虫の羽ばたきの最適解からわかる、うちわの大きさ・材質の最適解など、話題は多彩。
長門守忠重が、藩主の世子を廃し、秘かに自分の子を後継に据えようとしているー荘内藩空前の危機、いわゆる「長門守事件」を題材とした、歴史小説の佳品である表題作。ほかに、武士の世界を女性の視点から描き、藤沢周平の巧みさと比類ない魅力を存分に味わえる「夢ぞ見し」など、初期短篇の秀作全五篇を収録。
新進の考古学者・高須通子は、石造物の調査のために訪れた奈良で、殺傷事件に巻きこまれた海津信六を助ける。海津は、かつてT大史学科に籍をおく気鋭の研究者だったが、ある事情で学界を追放された過去があった。通子は、酒船石の用途を研究するうちに海津の示唆を受け、ペルシア文明との関連を調査するためイランへと旅立つ。
イランでゾロアスター教の遺跡を踏査した通子は、帰国後、飛鳥文化とペルシア文明の関連を考察した論文を発表する。斬新な仮説への反響とは?的確な批評を寄せつつ消息を絶った海津の行方と運命は?骨董品取引の裏側や学界の学閥主義など人間の業の深さや心の闇をも鋭く描いた清張古代史ミステリーの代表作。
複雑な人間行動を数学的に記述する新たな可能性を開き、ゲーム理論の基礎を確立した記念碑的著作。第3巻ではn人ゲームの理論のさらなる一般化を進め、“単純ゲーム”の詳細に分析を行う。また、ゼロ和ゲームを非ゼロ和ゲームに拡張し、得られた結果についていよいよ経済学的解釈を試みる。著者自身が「数学的ジャングル」と呼ぶ、複雑で厳密な議論をもって経済学に大変革をもたらした世紀の書がここに完結する。
幕末明治の天才画家・河鍋暁斎。狩野派仕込みの卓抜した腕前、明治の大物建築家ジョサイア・コンドルを弟子にとり、新し物好きで諷刺・茶化しが大好き、肉筆美人画から浮世絵、戯画、春画まで何でもござれの幅広い仕事ぶりだが、なかでも妖怪画・化物画は有名だ。本書はいにしえの「百鬼夜行絵巻」を踏まえて描いた遺作の版本、『暁斎百鬼画談』を全ページカラーで収録、奇にして怪、滑稽と愛嬌に満ちた妖怪たちの魅力を余すところなく再現する。近年再評価の機運著しい暁斎の、多彩な画業を俯瞰する、充実した解説を収録。暁斎の妖怪ワールドへようこそ。
よくどなる、よく殴る、なにかあると卓袱台をひっくり返す…向田家の父をモデルにしたといわれる人気テレビドラマを作者自身が小説化。
平屋建、2階建の構造設計を例に課題を解き、構造計算書をまとめ、鉄骨造の基礎から実務までを学ぶ。平成19年施行の改正建築基準法、最新の学会基準、SI単位に対応。
50年にわたるロングセラーを、現代に合わせ完全リニューアル!第1部では実務者として身につけておくべき伝統建築の諸知識を、第2部では在来工法の計画から施工までを1400点の図表により解説。索引付で事典的にも使え、一生涯役に立つ、建築実務者必携の書。
北町奉行所町方同心見習い組には六人の若者がいる。伊三次の仕える不破友之進の嫡男、龍之進を始め、緑川鉈五郎、春日多聞、西尾左内、古川喜六、橋口譲之進という面々。俗事に追われ戸惑いながらも、江戸を騒がす「本所無頼派」の探索に余念がない。一方、伊三次とお文の関心事は、少々気弱なひとり息子の成長だが。
乃木希典ー日露戦争で苦闘したこの第三軍司令官、陸軍大将は、輝ける英雄として称えられた。戦後は伯爵となり、学習院院長、軍事参議官、宮内省御用掛など、数多くの栄誉を一身にうけた彼が、明治帝の崩御に殉じて、妻とともに自らの命を断ったのはなぜか?“軍神”の内面に迫り、人間像を浮き彫りにした問題作。
21世紀に入ってさらなる広がりを見せる情報化社会への道は、クロード・シャノンが大戦直後に発表した一本の論文から始まったー本書はその「通信の数学的理論」に、ウィーバーの解説文を付して刊行されたものである。“ビット”による情報の単位の定義やエントロピーを用いた情報量の計算、さらには“情報源符号化定理”や“標本化定理”など、数々の画期的な洞察はまさに今日の情報通信を基礎付けるものであり、先端技術が当面する問題を解決するためのヒントにもなるだろう。「およそ“情報”を主題とするすべての研究分野に光明をもたらす」と評されるシャノンの不朽の研究が新訳で甦る。