開国の時期における、自我の原則と所属する集団・制度への忠誠との相剋を描き、忠誠と反逆という概念を思想史的に位置づけた表題作のほか、幕藩体制の解体期から明治国家の完成に至る時代を対象とした思想史論を集大成。『古事記伝』のなかに、近代にいたる歴史意識の展開を探る「歴史意識の『古層』」を付す。
初期楔形文字で記されたシュメールの断片的な神話に登場する実在の王ギルガメシュの波乱万丈の物語。分身エンキドゥとの友情、杉の森の怪物フンババ退治、永遠の生命をめぐる冒険、大洪水などのエピソードを含み持ち、他の神話との関係も論じられている最古の世界文学。本叙事詩はシュメールの断片的な物語をアッカド語で編集しアッシリア語で記されたニネベ語版のうち現存する2000行により知られている。文庫化に伴い「イシュタルの冥界下り」等を併録。
ただよく念仏すべし。石に水をかくるやうなれども、申さば益あるなり…。十三世紀末から十四世紀半ばにかけて成立した仮名法語集。法然上人、明遍僧都、明禅法印など三十四人の念仏行者、遁世者が、ひたすら往生を求めて語りかける。浄土門の信仰が平易なことばで綴られた文言集。
女優・高峰秀子は、いかにして生まれたかー複雑な家庭環境、義母との確執、映画デビュー、養父・東海林太郎との別れ、青年・黒沢明との初恋など、波瀾の半生を常に明るく前向きに生きた著者が、ユーモアあふれる筆で綴った、日本エッセイスト・クラブ賞受賞の傑作自叙エッセイ。映画スチール写真、ブロマイドなども多数掲載。
名演出家、成瀬巳喜男の「浮雲」、木下恵介の「二十四の瞳」など多数の映画に出演した戦後。その一方で、スターという虚像から逃れようと、七カ月のパリ独り暮らしをしたり、谷崎潤一郎や志賀直哉、梅原龍三郎らとの交友を楽しんだり。川口松太郎が「人生の指導書」と絶賛した、女優・高峰秀子の一代記。日本エッセイスト・クラブ賞受賞。
教会史上、正典につぐ地位を占めてきた諸文書。古代キリスト教会で評価の高かった「十二使徒の教訓」、黙示文学の形式で書かれた「ヘルマスの牧者」の他、「バルナバの手紙」「クレメンスの手紙」「イグナティオスの手紙」「ポリュカルポスの殉教」など十篇を学問的に原典から訳した、新約聖書の世界の全体像を把握するために必読の書。
資本主義の逆説とは貨幣のなかにある!『資本論』を丹念に読み解き、その価値形態論を徹底化することによって貨幣の本質を抉り出して、「貨幣とは何か」という命題に最終解答を与えようとする。貨幣商品説と貨幣法制説の対立を止揚し、貨幣の謎をめぐってたたかわされてきた悠久千年の争いに明快な決着をつける。
「かわせみ」の女中頭・お吉が、大売出しの骨董屋で一箱一両の古物の山を買い込んできた。いい買物でしたと得意顔のお吉だが、掘り出し物には裏があり、数日後、骨董屋の主人が殺されて…。東吾の鋭い洞察が事件を解決する表題作ほか、「花嫁の仇討」「怪盗みずたがらし」など、お馴染みの人情捕物帳七篇を収録。
わたしたちは世界史がつい先程まで「善」の通俗化としての残忍な悪と「悪」の通俗化としての残忍な善にとりかこまれていたのだということを忘れるべきではない(解説より)。-文学にとって至高のものとは、悪の極限を掘りあてようとすることではないのか…。エミリ・ブロンテ、ボードレール、ミシュレ、ウィリアム・ブレイク、サド、プルースト、カフカ、ジュネという8人の作家を論じる。
漢の高祖(前206)から、新の王莽(23)まで、『史記』に次ぐ第二番目の中国正史『漢書』全100巻(現行120巻)。帝王の業績「帝紀」、系譜の「表」、文化・地理などの「志」、人々の事蹟「列伝」、その記述は、歴史における個人の役割を重視した。人々の生きざまを、その弱さ愚かさをも含めて克明に描き、人間の運命を洞察する歴史文学として底知れぬ魅力をたたえ、後世史家の範となる。水のみなぎって天にはびこるごとく、漢帝国を奪った王莽は英雄か賊臣か。第8巻は、王莽の出自と家系を語り、漢帝国の崩壊を描く圧巻。
日本庭園は古来より山水に親しんできた日本人の心をあらわすかのように、自然が凝縮され我々に癒しと憩いを与えてくれる空間です。本書は初めて庭をめぐる人、どこがよいのかわからないという人に、そのみかた・見どころを平易な文章と多数の図版でやさしく解説しました。
漢の高祖(前206)から、新の王莽(23)まで、『史記』に次ぐ第二番目の中国正史『漢書』全100巻(現行120巻)。第2巻は、諸侯王や功臣などを分類し、古経典や史伝のなかの人物を採点した「表」全巻と、法律・経済・天文などの文化史「志」前半を収録。
新設間もない秋田大学医学部に、挫折と不安を抱えながら集まった医学生たち、和丸、京子、雄二、修三の四人は、解剖に外来実習に、失恋に妊娠に患者の死に悩み、あたふたしながらも、自分の生き方を探っていく。そして、彼らの十五年後ー。自らの体験を振りかえりつつ、人生の実感を軽やかに爽やかに綴る永遠の青春小説。
城田家にハンガリーからの留学生がやってきた。総勢十三人と犬一匹。ただでさえ騒動続きの大家族に、あらたな波瀾が巻きおこる。異文化へのとまどい、肉親ゆえの愛憎。泣き、笑い、時に激しく衝突しながら、家族一人ひとりは、それぞれの生の新しい手がかりを得る。そして別れー。人と人の絆とはなにかを問う長篇小説。
知人の華燭の典で、二十年ぶりに再会した実業家と、夫と死別して一人けなげに生きる女性。人生の道のなかばで、生涯に一度の至純の愛にめぐり逢った二人を描き、人の幸せとは?人を愛するよろこびとは?を問う香り高い長篇小説。作品解説のほか、雅びな恋愛小説を遺した中里恒子の作家案内と自筆年譜付き。