専業主婦の小夜子は、ベンチャー企業の女社長、葵にスカウトされ、ハウスクリーニングの仕事を始めるが…。結婚する女、しない女、子供を持つ女、持たない女、それだけのことで、なぜ女どうし、わかりあえなくなるんだろう。多様化した現代を生きる女性の、友情と亀裂を描く傑作長編。第132回直木賞受賞作。
1946年から51年まで、沖縄はケーキ(景気)時代と呼ばれていた。誰もがこぞって密貿易にかかわる異様な時代。誰にも頼れないかわりに、才覚、度胸ひとつで大金をつかむことができた時代であった。彼らから「女親分」と呼ばれた夏子は、彼らの上に君臨したわけではない。貧しかったが夢のあった時代の象徴だった。十二年におよぶ丹念な取材で掘りおこされた、すべてが崩壊した沖縄の失意と傷跡のなかのどこか晴れ晴れとした空気。大宅壮一ノンフィクション賞に輝いた占領下の沖縄秘史。
人智学協会設立までの3年間、シュタイナーは神智学協会年次大会で4日間ずつの連続講演を行った。その各年のテーマが、「人智学」「心智学」「霊智学」である。これは各々、シュタイナー人智学の体・魂・霊の三分法に対応するもので、それぞれが感覚論、判断・感情論をへて、霊視・霊聴を通じた存在へと成就する道が精査される。アリストテレスからブレンターノにいたる伝統的「霊魂論」の批判的検討に加え、なぜ心智学が精密科学の方法によっては証明できないものであるかなどを説き、神智学運動を理論的に基礎づけた、シュタイナー成熟期のトリロジー。
写真にとって表現とは何か、記録とは何か。1960年代後半から70年代にかけて、ラディカルな思考と実践を貫きながら激動の時代を駆け抜けた写真家が、自身の作品と方法の徹底的な総括を通して、来るべき時代の表現を模索する写真+映像論集。写真は「事物が事物であることを明確化することだけで成立する」ものでなければならないとし、“ブレ・ボケ”との訣別を宣言する表題作「なぜ、植物図鑑か」ほか、メディア社会における“芸術と政治”への先験的考察は、今も伝説的に語り継がれる。原著刊行から30年余を経て待望の文庫化。
平成19年施行の改正建築基準法、最新の学会規準、SI単位に対応。平家建、2階建の構造設計を例に課題を解き構造計算書をまとめRC造の基礎から実務までを学ぶ。
玉音放送は軍・将兵への「御言葉」だった!?日本人は終戦をどう受けとめたか。政治や軍部の中枢から前線の将兵や銃後の人々まで、30の視点が語る忘れてはいけないあの戦争。貴重な証言で埋め尽された「後世への贈り物」。当事者30人が昭和38年夏に一堂に会した、前代未聞の「座談昭和史」。司会は半藤一利(当時、33歳)。
1955年、共産党第6回全国協議会の決定で山村工作隊は解体されることとなった。私たちはいったい何を信じたらいいのだろうかー「六全協」のあとの虚無感の漂う時代の中で、出会い、別れ、闘争、裏切り、死を経験しながらも懸命に生きる男女を描き、60〜70年代の若者のバイブルとなった青春文学の傑作。
長年にわたる麻雀の打ち過ぎのためか、肘が上がらなくなり、いかさまが出来なくなった私こと「坊や哲」の前にあらわれた、ドサ健、出目徳、タンクロウらとも全く違った新しいタイプの麻雀打ち、鎌ちゃん。闇の地下組織TS会から高利の金を借り、窮地に追いやられた私に生来の博打打ちの魂が鎌首をもたげ…。
戦後も安定期に入った。私こと「坊や哲」は唐辛子中毒で身体を壊し麻雀から足を洗って勤め人となった。ある日、会社の仔分がおそろしく派手な毛皮の半オーバーに鍔の広いテンガロンハットをかぶった一人の男を連れてきた。ドサ健だった。そして私は、再び麻雀の世界に身を投じることになった。感動の完結篇。
男というものは絶えず急な斜面に立っている。爪を立てて上に登って行くか、下に転落するかだー。十年ぶりに会った女は、男の会社の実力派会長の妾だった。彼女を利用して昇進に成功した男はやがて彼女の存在が邪魔になり…。表題作の他、強盗殺人犯の妻と張り込みの刑事を描く「失敗」など全六篇の短篇を収録。
中国の密航船が沈没、10人の密航者がニューヨークへ上陸した。同船に乗り込んでいた国際手配中の犯罪組織の大物“ゴースト”は、自分の顔を知った密航者たちの抹殺を開始した。科学捜査の天才ライムが後を追うが、ゴーストの正体はまったく不明、逃げた密航者たちの居場所も不明だー果たして冷血の殺戮は止められるのか。ドンデン返しとサスペンスの天才ディーヴァーの大人気シリーズ第四弾。
冷酷無比の殺人者“ゴースト”は狡猾な罠をしかけ、密航者たちのみならずライムの仲間の命をも狙う。愛する者たちを守るには、やつに立ち向かうしかない。真摯に敵を追う中国人刑事ソニーの協力も得、ライムはついにゴーストの残した微細証拠物件を発見するー見えざる霧のような殺人者は何者なのか?大人気シリーズ第4弾。
もし、現在の記憶を持ったまま十ヵ月前の自分に戻れるとしたら?この夢のような「リピート」に誘われ、疑いつつも人生のやり直しに臨んだ十人の男女。ところが彼らは一人、また一人と不審な死を遂げて…。あの『イニシエーション・ラブ』の鬼才が、『リプレイ』+『そして誰もいなくなった』に挑んだ仰天の傑作。
人間の意識の在り方(実存)を精緻に分析し、存在と無の弁証法を問い究めた、サルトルの哲学的主著。根源的な選択を見出すための実存的精神分析、人間の絶対的自由の提唱など、世界に与えた影響は計り知れない。フッサールの現象学的方法とハイデッガーの現存在分析のアプローチに依りながら、ヘーゲルの「即自」と「対自」を、事物の存在と意識の存在と解釈し、実存を捉える。20世紀フランス哲学の古典として、また、さまざまな現代思想の源流とも位置づけられる不朽の名著。1巻は、「即自」と「対自」が峻別される緒論から、「対自」としての意識の基本的在り方が論じられる第二部までを収録。
光る象、多足蛇、水面直立魚ー。世界各地には驚くべき未知の動物が棲息していた!数々の珍獣を「発見」したのち謎の失踪を遂げた動物学者、ペーター・アーマイゼンハウフェン博士の偉業を、膨大な写真や詳細な観察記録などから紹介。「存在するとは写真にうつるということである」という逆説が、動物たちの存在証明を主張する。幻の生物たちが闊歩する「あったかもしれない地球」を夢見させ、想像力の冒険へといざなう驚愕の書、待望の文庫化。
怪しい色男を巡る、二人の紳士の空疎な手紙のやり取り。寝取られた亭主の滑稽かつ珍奇で懸命なドタバタ喜劇。小心者で人目を気にする閣下の無様で哀しい失態の物語。鰐に呑み込まれた男を取り巻く人々の不条理な論理と会話。十九世紀半ばのロシア社会への鋭い批評と、ペテルブルグの街のゴシップを種にした、都会派作家ドストエフスキーの真骨頂、初期・中期のヴォードヴィル的ユーモア小説四篇を収録。
昭和37年に発刊された合気道初の技法書を完全復刻!戦前は門外不出とされた合気道の技法を、開祖・植芝盛平翁が監修し、基本から応用まで吉祥丸二代道主が解説した革命的名著。合気道家必携の1冊。