本書は、二〇〇八年のハゼ釣りシーズンに、著書が一日一〇〇〇尾以上の釣果を連続二二回達成した釣行記録をまとめたものです。
芸術生成の新たなトポスミュージアムを全開する。「作品」は観客の眼を通じて初めて「芸術」として開花する。作品と観客出会いの場・ミュージアム等に見る、芸術と社会の新たな関係性。日本学術振興会人社プロジェクトの成果。
生涯、二万に及ぶ発句。稀代の俳諧師、小林一茶。その素朴な作風とは裏腹に、貧しさの中をしたたかに生き抜いた男。遺産横領人の汚名を残し、晩年に娶った若妻と荒淫ともいえる夜を過ごした老人でもあった。俳聖か、風狂か、俗事にたけた世間師か。底辺を生きた俳人の複雑な貌を描き出す傑作伝記小説。
瀬戸内海の貧しい島で生まれ、日本列島を隅から隅まで旅し、柳田国男以来最大の業績を上げた民俗学者・宮本常一。パトロンとして、宮本を生涯支え続けた財界人・渋沢敬三。対照的な二人の三十年に及ぶ交流を描き、宮本民俗学の輝かしい業績に改めて光を当てた傑作評伝。第28回大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。
才能豊かなパティシエの気まぐれに奔走させられたり、犬のボランティアのために水商売のバイトをしたり、難民を保護し支援する国連機関で夫婦の愛のあり方に苦しんだり…。自分だけの価値観を守り、お金よりも大切な何かのために懸命に生きる人々を描いた6編。あたたかくて力強い、第135回直木賞受賞作。
「あいつをめちゃめちゃにしてやりたい」-。40年近くの年月を経ても、被害者はあの事件を引きずっていた。歳月は遺族たちを癒さない。そのことを私たちは肝に銘じておくべきだと思う。『ナツコ 沖縄密貿易の女王』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した著者の、司法を大きく変えた執念のルポルタージュ。
高山なおみが本格的な「料理家」になる途中のサナギのようなころの、雨ではないが晴れ間でもない、なにかの中間にいることの落ち着かなさ、不安さえ見え隠れする淡い心持ちを、そのままに綴ったエッセイ集。なにげない日々のなにげない出来事が静かに心を揺らし、切なく痛い。カラー口絵、32レシピ付き。
骨盤は正直です。自分の身体が本来持っている働き方や癖をきちんと伝えてくれます。同時に、身体の自己調整機能に働きかける要ともなる場所です。「内側からの視点」で身体をみつめ、声をきくと、ずいぶんと生きやすくなります。認識をちょっと変えることによって、心地よく生きていける可能性が出てくるのです。
著者は高名な精神医学者であるだけでなく、ヴァレリーやギリシャ詩の達意の翻訳者であり、優れたエッセイストとしても知られている。自らの研究とその周辺について周到な考察を展開した「知られざるサリヴァン」「統合失調症についての自問自答」「宗教と精神医学」や、学問的来歴を率直に記した「私に影響を与えた人たちのことなど」「わが精神医学読書事始め」「近代精神医療のなりたち」、精神科医の立場から社会との接点を探った「微視的群れ論」「危機と事故の管理」「ストレスをこなすこと」など、多彩で豊かな広がりを示す17篇のエッセイをまとめる。
異端の天才剣客真里谷円四郎義旭。江戸時代中期、一千回を超える他流試合に一度も敗れなかったという桁外れの強さを発揮し、門弟は大名から平士まで一万人以上に及んだ。その剣の流儀は無住心剣術。日本剣術史の上で最高峰の流儀とも賞賛されるが、傑出したゆえの矛盾点も抱えてしまった。本書は、無住心剣術の成立と衰退の過程に焦点を当て、世界に類をみない、剣術を骨格として日本の精神身体文化の形成に深く関わった「武」の思想を解明しようとするものである。旧版に、今回新たに発見された資料を大幅に増補して改訂を施した決定版。多方面で活躍する著者の思想的原点となる主著。
直木賞受賞作をふくむ傑作短篇集。小説13篇を収録。
書の歩みは、日本文化の歩みでもある。さまざまな書流の盛衰が織り成す日本の書道史を、時代ごとの年表・概論・作品図版で立体的に解説。三筆、三跡、仮名古筆、定家、墨跡、宸翰、光悦、良寛、そして現代まで、重要作品約三百点を収録。日本の美意識が詰まった一冊。
寺院や神社の境内には、清澄で落ち着いた空気が流れている。仏堂や社殿など、多くの建築が歳月をへてしぶい色をみせていることも、あの特有の雰囲気をつくりだしているだろう。しかし、かつて寺社の境内は、もっとにぎやかで楽しい場所だったかもしれないのである。法会や祭礼の日はもちろん、そうでないときにも僧侶や神官たちはしばしば田楽・延年・猿楽などの芸能を楽しんだ。多くの芸能者たちが寺社に出入りし、僧や神官、美しく装った稚児たちが芸能を鑑賞し、みずから演じてもいた。中世の寺社は、劇場でもあった。