辞書の中から立ち現われた謎の男。魚が好きで苦労人、女に厳しく、金はないー。「新解さん」とは、はたして何者か?三省堂「新明解国語辞典」の不思議な世界に踏み込んで、抱腹絶倒。でもちょっと真面目な言葉のジャングル探検記。紙をめぐる高邁深遠かつ不要不急の考察「紙がみの消息」を併録。
江戸後期、回船問屋として加賀国で名を掲げた豪商・銭屋五兵衛。代々続いた家業に加え、志高く海運業を興した五兵衛は、功を成して加賀藩の財政を度々救う。ところが晩年、藩や地域のためと進めていた潟湖の埋め立て工事で冤罪をかけられ、無念の最期を遂げた。隆盛期には「海の百万石」と称された銭屋五兵衛と一家を支え、共に生きた女たちー母のやす、妻のまさ、長男の嫁のきわ、孫娘の千賀。一家への謂れなき罪を背負い、銭屋再建のためそれぞれが必死に尽力した姿を、4代の女たちの視点から描いた壮大な歴史ロマン。第6回草思社・文芸社W出版賞金賞受賞。
二〇世紀最大の思想家ベンヤミンはメディア論・芸術論においてもいまだに最も鮮烈にして核心的な震源であり、いまもその可能性は汲み尽くされていない。「シュルレアリスム」、「写真小史」、「技術的複製可能性の時代の芸術作品」(第二稿)、「生産者としての執筆者」、「叙事的演劇とは何か」、フックス論など重要なテクスト群を第一人者が精選して全面的に訳し下ろした決定版。
焼け跡から発見された頸や顔が焼け焦げた母子の死体。監察医の著者は、焼死ではない、「絞殺死」だと見破る。その根拠とは?死斑の色に、まぶたの裏に、頭蓋骨の奥底に、本当の死因は隠されている。捜査機関から絶大な信頼を得た元監察医が、二万体を超す検死実績から導き出した、死体の声無き声を聴く「上野法医学」決定版。
人とモノの大きさの関係がひと目でわかる画期的作画資料集のニューバージョン!!絵を描く人にとって、「こんなシーンを絵にしてくれ」「こんなシーンの絵を描いてみたい」となったとき、ハタと困ったことはありませんか?絵を自由自在に描くためには、人とモノの大きさを把握し、さらにそれらが、視点から遠ざかるほど小さくなっていくパースのつく空間に置かれていることを理解しなければなりません。作例では人物とモノ、空間との対比を数値化し、絵を構成していく上での目安を提示しています。
「恋の代わりに一句を得たあのとき、私は俳句という蔦に絡めとられた」。正岡子規を輩出した愛媛松山で生まれた少女は16歳で運命的に俳句と出会う。恋愛、結婚、出産、子育てー。ささやかな日々から人生の節目までを詠んできた俳句甲子園世代の旗手が、俳句と生きる光を見つめ、17音の豊饒な世界を案内するエッセイ集。
轟く雷鳴の中、材木問屋の女主人が惨殺された。この殺人と宿屋を狙った連続盗難事件の陰に、いま江戸で評判の祈祷師、清姫稲荷のおりょうの姿がちらつく。果たして、その正体は?表題作ほか、「横浜から出て来た男」「穴八幡の虫封じ」「阿蘭陀正月」など全八篇を収録。旅籠「かわせみ」を取り巻く人人の江戸情緒豊かな人情捕物帳。
生涯、二万に及ぶ発句。稀代の俳諧師、小林一茶。その素朴な作風とは裏腹に、貧しさの中をしたたかに生き抜いた男。遺産横領人の汚名を残し、晩年に娶った若妻と荒淫ともいえる夜を過ごした老人でもあった。俳聖か、風狂か、俗事にたけた世間師か。底辺を生きた俳人の複雑な貌を描き出す傑作伝記小説。
高校生二年生の鈴森実は、ある日、クラスメイトの城之崎聖良が、赤いジャージに身を包み、マントをつけた「ヒーロー」に扮して困っている人を助けているところに遭遇する。「ヒーロー活動」を見られたと知った聖良は、「わたしと一緒に人助けしない?」と実を誘うが、実には彼女と関わりたくない「ある理由」があって…?傷を抱えながら「世界」と向き合う、少年少女の思いが胸を打つ傑作青春小説。文庫書き下ろし。
六人に一人いるとされる「子供の貧困」を放置すると、年間約四〇兆円が失われ、国民一人ひとりの負担が増える!「かわいそう」では済まされない日本の最重要課題を、データ分析、当事者インタビュー、学術研究の紹介から国内外の先進的な取組みまで、包括的に論じつくす。