1945年3月、上海。革命と反革命のカオス、酸鼻をきわめる近代日中交渉の修羅場ー青春の時をそこに持った著者が、十年後の中国再訪直後に執筆した本書は、「中国について日本人が、戦後に書いた、もっとも美しい本のひとつ」(大江健三郎)であり、また「苦渋のあじわいをひそめた本」(同)である。現代日本人にとって中国体験とは何か、中国を理解するとはどういうことなのかを、深く多様に問いかける希有のエッセイ集。
私と同じ気持ちの、みゆきがいる。慰めよりも、励ましよりも、なによりも心強い。夜会’94年公演「シャングリラ」オリジナル・シナリオ、未公開写真、そして書き下ろしエッセイを収録。
中仏混血美人の継母による継子支配といじめ、財産乗っ取り、そして遺産相続をめぐる奸計…香港で莫大な財をなした上海人富豪一族の三代にわたる愛憎ドラマ!継母との激しい葛藤に耐え、激動の時代を生きた中国女性の自伝。
「姉を助けて」新進作家霞田志郎が、ファンの少女水沢美智子に、失踪した姉圭子の捜索を懇願された時、底知れぬ事件の幕が開いた。姉妹の父親は中国陶器蒐集で知られ、悲劇の武将岳飛愛用の“上海香炉”が自慢だった。志郎が水沢家を訪れた夜、香炉の飾られた寝室で父親の愛人の美人タレントが殺された。その首に巻きついていたのは圭子愛用のリボンであったー。
証券マンだった飛島武司は、かつて仕事での危機を、顧客の龍道に救われた。それから、飛島と龍道との奇妙な付き合いが始まった。龍道の導きで、上海出身の明子と名乗る女性と出会った飛島は、ささやかな幸せを手に入れたかに見えたが、明子が突然、飛島の全財産をもって姿を消してしまう。明子の行方を必死で追う飛島は、結婚詐欺組織の背後に龍道の影を見つけるが…。嘘と罠が渦巻く、傑作クライムサスペンス。
芸術家が創造するとき、脳の中で何が起こっているのか?絵を凝視するときには、どんなメカニズムが脳の活動を支配しているのか?美的快楽というこの奇妙な、きわめて強い感情はどこから生まれてきたのか?人はそれを説明することができるのだろうか?長い間、芸術的創造は謎とされてきた。しかし20年ほど前から、神経科学と認知心理学の貢献により、その謎は深まるどころか、徐々に解明されている。脳のエキスパートであり偉大なコレクターでもあるジャン=ピエール・シャンジューは、あまり知られていない国内外の傑作をちりばめた本書の中で、われわれをまさに創造のプロセスの中心にある素晴らしい「哲学的冒険」に招待してくれる。
本書は、東南アジアを知り、東南アジアに学ぶためのビジュアル・コミュニケーションブック。東南アジアの人々の実生活、思想、伝統文化など、アジアの「いま」を日本人にもっともっと知ってもらいたい。アジアと日本人のこころをつなぐ接点になりたい。そんな願いから「東南アジアの視点でとらえた」東南アジア情報を伝える一冊である。
ストーカーー人間の心の奥底に潜む悪意はふとしたことで、簡単に顔を出す…。K女子校に通う小曽根真琴は、ストーカーに悩まされていた。親友・亜美にはよく当たるという占いを勧められたりするが、気乗りがしない。エスカレートする無言電話に思い詰めた真琴がとった行動ーそれは、最悪の選択だった。しかも、その真琴の決断は、あらかじめ予定されていたかのように次の惨劇を生む。連鎖する殺人事件…。路上の占い師・未来は運命に導かれ、この街にやってきた。街にはびこる悪意を断ち切るためにー。
戦争の影迫る上海の街で、四人姉妹の三番目の「私」は中国の風俗と生活の中で、思春期の扉をあけ成長してゆく。鮮烈な記憶をたどる七篇の連作小説「ミッシェルの口紅」と、戦後三十六年ぶりに中国を再訪した旅行の記「上海」。長崎で被爆して「原爆」の語り部となる決意をした著者が幼時を過ごしたもう一つの林京子の文学の原点中国。