中国黒竜江省の省都・ハルビンから上海まで、3500キロの長大な距離を自転車で走り抜けた青年たちがいた。東北地方では冷たい雨に打たれ、南部では猛暑のなか連日200キロを超す厳しいサイクリングとなった。言葉の壁、習慣の違い戸惑い、悪路ではパンクの連続に悩まされた17日間の過酷なラン。「サイクリングを通じて日中友好」を合言葉に、広大な中国大陸に自転車を駆った彼らが求めたものはー。
文化大革命の燃え上がる初期の1966年8月、熱狂的な、若い紅衛兵の一団が、51歳になる、元国民党政府外交官の未亡人、鄭念とその愛する娘、梅平の住む、洗練され居心地の良い上海の家に乱入し、破壊と略奪の限りを尽くす。数週間後、鄭念は逮捕され、第一拘置所におくられる。彼女は、そこでその後の六年以上を、独房に幽閉生活の迫害と屈辱に耐えねばならなかった。この本は、彼女自身が、この痛ましい時代とその後を回想して記した、人間の真の強さを伝える、感動的な物語である。
吉永みち子の体当りインタビュー。各業界をリードするトップ24人がざっくばらんに人生を語る。
上海語で常用される同音の字をそれぞれ集めて排列してある。音声は国際音声記号によってしるし、排列は「上海語の発音」に附表として示した上海語音節表の順によっている。
人間の知的活動の中心に、学習・記憶・問題解決という重要なテーマがある。人間は言葉、文字、動作などによって得られた情報を脳に蓄積し、その記憶に基づいて、与えられた問題を推論し、決定することができる。コンピュータに人間と同じような機能を持たせるには、これらのメカニズムを解明する必要がある。本書は、「人間はなぜ思い出すのか」つまり人間の記憶のメカニズムの認知科学的アプローチを試みた、斯界の第一線の研究者によるユニークな成書である。
租界時代の遺物のなかに現代の中国人が蠢いている奇怪な情景。足かけ20年にわたる著者の上海行は、都市の歴史を冷厳に捉える確かな時と抑制された映像とを保証した。あたかも記憶のヴェールが1枚ずつ剥されてゆくかのように、写し撮られた映像は変貌する都市の複雑な素顔を垣間見せる。都市が〈人民〉を〈大衆〉に変えている。
食、酒、美女、政治、雑踏…。推理作家、朝日新聞上海特派員の著者がノスタルジアの街、上海でおりなす「歴史との対話」の数々。初エッセイ集!
国際都市上海は、港、租界、ジャズ、謀報合戦、耽美、最新、ジャンクが紡ぎだしな華やかな万華鏡であった。そこにたゆたう日本人のさまざまな思いをつないだ、村松友視選セピア色のアンソロジー。
日本の26倍の大地に総延長5万5千キロにおよぶ鉄路が延びる中国。その中国をこよなく愛する著者が行く先々で繰り広げる人と自然との出逢いをカメラと文で綴るフォトエッセイ。
一流の画家でおくる、子どもたちのための、楽しい詩のシリーズ!どうぶつのテーマで集めた10編の楽しい詩と、みじかいおはなし。幼児から小学校1・2年生に向けておくる詩の絵本。
上海の学者によって選ばれた単語と発音指導。品詞別分類だからひきやすい、覚えやすい。辞典としてもフルに使えるよう索引を完備。やさしくていねいな発音・文法解説つき。
母と私がはじめて会ったのは、高校卒業の直前だった。新聞の上海特派員だった父は、私の誕生以前に腸チフスで死に、母は祖父・村松梢風の意志で、祖父の籍に入れられた私を残して他家へ嫁いだのだ…。不安定な思いを胸に抱きながら母とともに、幼児期を過ごした千駄ヶ谷の家を探し、上海を訪ねる自伝的長篇。
満州事変後の排日抗日の風潮の中、聯合通信上海支局長として中国へ赴いた著者は、日中戦争勃発をはさむ6年間、上海を舞台に取材、報道にあたった。その間、中国を始め、内外の政治家・外交官・財界人・ジャーナリスト等との多彩な交友を通して、日中正常化・和平への実現に尽力した。日中外交折衝の渦中にあった著者が、40年来の情熱をこめて綴った歴史の現場からの証言。日本エッセイスト・クラブ賞受賞。全3巻。
日本で二・二六事件が起り、中国では抗日テロが頻発する昭和10〜11年。広田外相・有吉大使が進める対中親善外交の一方で、現地陸軍が推進する「華北自治工作」-日本の対中外交は二元化する。その間、汪兆銘が狙撃され、蒋・汪合作政権の対日親善外交は破局への道を歩み始める。更に知日派要人・抗日のテロが相次ぐ中、日中関係はとみに険悪化してゆく。日中戦争前夜の緊迫する外交折衝を、渦中にあった著者がつぶさに回想する。
港区南青山に住む堤聖一(29歳・独身)は、アイドル歌手の間で超売れっ子の作・編曲家。彼のライフスタイルの基本は、軽井沢、彼女、シャンパン、この3点セット。つまり、軽井沢の別荘で彼女と息抜きをするために、せっせと仕事をしているようなもの。彼は自他共に認める“軽井沢病”なのである。音楽業界人には珍しいくらいロマンチストの彼の前に、風のように訪れたつかのまの恋…。音楽業界純愛コメディー。
本書は、神経生理学の最新の成果の上に立って、「脳と心の生物学」の歴史と現状、未来への展望を提示した画期的な総説であり、脳の神経への最良の道案内である。人間の中に存在するものは「精神」ではなく、「ニューロン」(神経細胞)と「シナプス」(神経細胞の連結)であるという大胆な理論を展開した。
バラライカと盲人用タイプライターを背負って、盲目の青年詩人がはるかモスクワより単身日本にやってきた。ワシーリィ・エロシェンコ、童話作家・エスペランチストでもある彼は、日本語により童話を口述創作し、ギターとバラライカの演奏で、ロシア民謡を歌いながら、各地のエスペラント会で講演した。しかし、詩人の人々を魅了するこうした行為の危険性を見て取った内務省当局は、彼を〈帝国ノ安寧秩序ヲ害スル〉ものとみなし、日本から追放する。本書は、外務省の秘密報告書、三都で刊行された大量の新聞・雑誌、〓周作人日記〓など文革後公開された新資料を用いて、その跡を追う。そして、そこにエロシェンコに熱い共感を寄せつつも冷静にみつめる1人の中国知識人、魯迅の視座をも加えて、1920年代における文学と社会とのかかわりを鮮やかに浮き彫りにする。