不摂生が原因で療養中のアニメ監督・楡崎の元に、突然「弟子にしてください」と一人の青年が押しかけてくる。その青年・駿は行動のわりに押しが弱く儚げで、帰る場所がないという彼を放っておけず身の周りの世話を頼むことに。生まれてから一度も泣いたことがないらしい駿。自身の中に渦巻く感情の吐き出し方がわからずもがいている彼は妙に色気があり、そんな駿を見ていると創作意欲が湧いてくる楡崎だが…?
アラミンタは、アイルランドの独立をめざし活動する過激な秘密結社により、公爵であり政治家でもあった夫をアイルランド国内で暗殺された。そのため、アラは幼いひとり息子とともに急きょイングランドへ帰国する。ところが、その過激な組織がイングランド政府に脅迫状を送り、アラの命をも狙っていることを表明。政府は彼女に護衛をつけることにしたのだが、護衛の長としてアラの屋敷へ送りこまれた男は、8年前、生涯の愛を誓いながらもアラを捨てたクレイだった…話題のヴィクトリアン・ロマンス。
公爵のアーチャーには、自分の相続人となる子どもを産んでくれる妻が必要になった。しかし、彼に必要なのは、妻ではなく痛みだ。痛みだけが、彼を過去から解放してくれるからだ。つらい過去のせいで、アーチャーは妻も子どももほしくないと思っていた。だが、自らの責任を果たすためには結婚するしかない。アーチャーが望む妻は、自分を公爵という金庫としか見ない女性だ。そういう女性ならば愛情など求めず、彼がすることを気にしないだろう。そう思っていたのに、園芸家のポピーと出会ったことで、じょじょに彼の心は動かされていきー。
エンジェル家は、まるで牢獄のような陰気な外観をもつ家だった。しかも内部は対角線を引いたように二分され、年老いた双子の兄弟が、それぞれの家族を率いて暮らしていた。彼らを支配しているのは長生きしたほうに全財産を相続させるという、いまはなき父の遺言だった。そして、死期の近いことを感じた双子の兄が、遺言の中身を変更することを弟に迫ったときから、すべての悲劇ははじまる。愛憎うず巻く二つの家族の間に起こる連続殺人事件を、たくみなストーリー展開と、もりあがるサスペンスによって描いた密室ものの古典的名作、完訳決定版!
あなたの誕生日だけで、恋や友情、そして運命まで、ありとあらゆる事をうらないます。
偶然はいった古書店で大学院生アリエルがめぐりあったのは、ずっと探していた『Y氏の終わり』という一冊の本。それは、主人公のY氏が人の心のなかでくりひろげる冒険を描いた、呪われているとされる伝説の小説だった。読み進むうちに、小説のなかの出来事は、過去に実際におこったことなのではないかとアリエルは疑いはじめる。そこに書かれた方法をためしたアリエルは、人の心のなかにはいることができるようになる。しかし、本を狙う男たちに追われ、旅に出ることに-。わたしがここにいる理由って?世界はどういうふうにできたの?この世界で、愛するとはどういうこと?長い旅を続けるうちに、アリエルが抱きつづけてきた疑問がひとつずつ解き明かされていく。ミステリの興奮、SFの思索、ファンタジイの想像力-イギリスの新鋭作家によるジャンルを越えた話題作、待望の邦訳。
クーパー?助産師のメリッサは我が目を疑った。新しく赴任してきた産科医って、彼のことだったの?彼女の脳裏を、2カ月前の一夜の記憶がよぎる。ふだんは良識家で通っているメリッサだったが、あの夜だけは、出会ったばかりのクーパーに魅了され、誘惑に抗えずに…。そして運命のいたずらは、再会だけでは終わらなかった。彼女はクーパーの子を宿していたのだ!ある病を抱えるメリッサにとって、出産は高いリスクを伴うが、いつか我が子を抱きたいと願っていた彼女には喜びでもあった。だが、かつて妻をお腹の子とともに失ったクーパーはー
海沿いの美しい町にある病院で働くアビーは、ある日、救急科に駆けこんできた男性を見て我が目を疑った。5年前にやむなく別れたルークが、どうしてここに?大統領付きの医師である彼は、お忍びで静養に来ていた身重のファーストレディが急に破水したので、急遽呼び寄せられて診察にあたることになったという。ファーストレディの意思を尊重して、彼もしばらく町に滞在すると聞き、アビーは激しく動揺した。ルークは子供が作れない自分の体を恥じて別れを選んだけれど、わたしの家には、彼にそっくりな4歳の男の子がいる…。
自分に自信のないララは、ある日、絶望の淵に突き落とされた。恋人の裏切りを目撃し家を飛び出したら、どしゃ降りに見舞われたのだ。よるべのない彼女は身も心もぼろぼろになり、やむなく雇い主夫妻を頼って、ナニーとして働く屋敷を訪れた。運よく、夫妻が休暇旅行で留守にするあいだ滞在を許されるが、そこには思いがけない人物がいたー雇い主の親友で大富豪のルーベン。彼も事情があって一時的にこの屋敷に滞在しなければならないという。こんなにハンサムな男性と二人きり、一つ屋根の下で過ごすなんて!だが、ララは思わず覚えた胸の高鳴りを戒め、もう恋はしないと誓った。片や取り柄のないナニーと、片や大富豪…分不相応な恋ならなおさら。
あと少しでクリスマスを迎える冬のロンドンで、派遣メイドのグレースは超高級ホテルの客室係として働いていた。ある雪の日、いつもとは違う部屋の清掃を任され、はじめて足を踏み入れたのは最上階のスイート。ホテルのオーナーである美しき大富豪フィンリーが使っているという。壮観な眺めを誇る部屋に入ると旅行かばんが置かれていたので、中身を片づけていくうち、奥からツリーに飾る天使の像が出てきた。洗練されているけれど冷たい感じのこの部屋をクリスマスらしくしたら?そう思いついたグレースは即座に行動し、完璧な飾りつけをした。フィンリーから罵声を浴びせられ、涙を流すことになるとも思わずに。