ある日、コロラド州のモーテル経営者ジェラルド・フースから手紙が届いた。なんと屋根裏の覗き穴から秘かに利用者たちの姿を観察し、日記にまとめているという。男を訪ねた著者が案内され目撃したのは、全裸の男女がオーラルセックスに励む姿だった。不倫からグループセックスまで、三十年に及ぶ衝撃の記録。
北欧叙情ドゥーム・メタルの燃え続ける闇の炎。暗黒の福音書・第4章が幕を上げるとき、ジェニー・アン・スミスの女声ヴォーカルが夜空を切り裂く。
2012年にキャンドルマスのレイフ・エドリングのプロジェクトとして始動。ファースト・アルバム『アヴァタリアム』(2013)で一躍ドゥーム・メタルの新星となった後、レイフは健康上の理由でライヴ活動から撤退するが、ジェニー・アン・スミスの女声ヴォーカルとマルクス・イデルの厚みあふれるギター・リフを軸にしながら躍進を続けてきた。
『ザ・ガール・ウィズ・ザ・レイヴン・マスク』(2015)、『ハリケーンズ・アンド・ヘイローズ』(2017)が成功を収めた勢いに乗って完成された、早くも4作目のアルバムとなる『ザ・ファイア・アイ・ロング・フォー』では、初期ブラック・サバスの系譜にあるドゥーム・ロックをモダン・メタル方向にシフトさせ、憂いを込めたメロディで昇華させた音楽性が貫かれている。
先行リーダー・トラック「ルビコン」を筆頭に、もはや後戻り出来ない運命を暗示するナンバーが続く。
「ポーセリン・スカル」「エピタフ・オブ・ヒーローズ」などではマルクスが新世代ドゥーム・リフ・マスターとして覚醒、「シェイク・ザット・ディーモン」ではアップテンポで押しまくる。
「レイ・ミー・ダウン」や「グレイト・ビヨンド」、ピアノをバックにジェニーが歌い上げる「スターズ・ゼイ・ムーヴ」など、抒情的な要素も増しており、陰翳に富んだエピック・ドゥーム「ザ・ファイア・アイ・ロング・フォー」はバンドが新たなる崇高な境地へと到達したことを宣言している。
マルクスは本作についてレインボー、レッド・ツェッペリン、ドアーズからの影響を口にしているが、その音楽性は偉大なる先達へのリスペクトを表しながらも、新時代のドゥーム・メタルを提示する気概に満ちたものだ。
レイフ・エドリングは3曲のソングライティングに関わっており、新ドラマーとしてレイフ率いるザ・ドゥームズデイ・キングダムのアンドレアス“ハボ”ヨハンソンが参加。
一方、マルクスはキャンドルマスの最新作『ザ・ドア・トゥ・ドゥーム』をプロデュースするなど、北欧ドゥーム・ファミリーの結束を感じさせる作品となっている。
アルバムはストックホルムの“スタジオ・ディープウェル”でレコーディング。
マルクスが自らプロデュースを手がけ、ブリトニー・スピアーズ「トキシック」でグラミー賞を獲得したニクラス・フリクトがミックス、ラムシュタインやヴォルビートなどとの作業で知られるスヴァンテ・フォルスバックがマスタリングを担当するなど、世界のトップ・クラスを制作陣に迎えている。
2020年1月、本国スウェーデンのストックホルムとイェテボリでの公演を皮切りに、本格的にツアー活動も行われることが発表されている。
2020年の世界を、アヴァタリアムがドゥーム・メタルの漆黒の空間へと誘(いざな)っていく。
【メンバー】
ジェニー・アン・スミス(ヴォーカル)
マルクス・イデル(ギター)
アンドレアス “ハボ” ヨハンソン(ドラムス/パーカッション)
リカード・ニルソン(キーボード)