伍子胥は、父に向かってまっすぐに言う。「善をなすふりをして悪をなすことほど、悪いことはないとおもいます」父・伍奢は思った。「この子を教えるのは、人ではなく天だ」と。豊かな水をたたえる長大な江水の流域で、春秋時代後期に覇権を争う、楚、呉、越。楚の人、伍子胥は堂々たる体躯で将来を嘱望される青年である。父は、王に重用され要職をつとめる。伍子胥は、呉との国境近くの邑・棠を治める兄・伍尚を助けるため船に乗り、江水を往く。強い信念をもち、父兄を尊敬する伍子胥は、地位や身分を越えてさまざまな人と出会い、歩むべき道を探していた。
芥川龍之介、江戸川乱歩が絶賛したイギリスを代表する怪奇小説作家の傑作短篇集。古典的幽霊譚「空家」「約束」、吸血鬼と千里眼がモチーフの「転移」、美しい妖精話「小鬼のコレクション」、詩的幻想の結晶「野火」ほか、名高い主人公ジム・ショートハウス物を全篇収める。
自らの信念を曲げた劉邦の真意とは?秦王の降伏を受け、劉邦は秦の都・咸陽に入る。しかし、項羽によって劉邦は巴、蜀、漢中の王として左遷されることに。項羽と天下を争うことを決意した劉邦は、関中へ兵を挙げる!宮城谷昌光作家生活25周年記念作品。
ゆうちゃんのいえで、こいぬをあずかることになりました。「かわいいこと!」「おりこうだなあ」かぞくはみんなこいぬにむちゅうです。ひとりほうっておかれたほげちゃんは、もちろん、おもしろくありません!3歳から。
その名もデロス(不可能)・キューブなる立方体に人質が閉じ込められた!開かずの扉をひらくヒントは“(-1)×(-1)”。絶望を抱えたマイナス思考のテロリストに挑む天才少女・浜村渚は、ヒントに隠された「マイナスの魔法」に気が付いた!はたして人質を救う数学的名案を導き出せるのか。数字が爆ぜる全4編+おまけ付き。
群馬県死ノ字村。通称「方程式を使うことを禁じられた村」で、気味の悪い数え歌をなぞるように連続怪死事件が起きた。数学少女は、この究極の難問をどうやって解決するのか!?二つの旧家=鶴ノ森家と亀倉家をめぐる血塗られた因縁とは。シリーズ史上、もっともディープな愛憎劇が鳥肌ものの、特別長編!
晏弱は死んだ。斉は偉大なる英傑を失った。幼少よりその天才を発揮した息子晏嬰は古礼にしたがって三年に及ぶ篤い服喪に入った。斉は周王朝の意志を奉じて魯の攻略を繰り返す。魯は援軍をもとめ、晋傘下の十二か国の大連合軍が魯のために集結した。襲いかかる連合軍の怒濤の駆塵。軍師も軍略もない斉軍は連合軍の猛攻をどう凌ごうというのか…。
快男子風洪は学問に志し、武を捨てて商人・白圭と名告る。戦乱の国々を行き交う学者や商人たち。秦の孝公は覇道を進み、公孫鞅に厳格な法の体系をつくらせる。白圭は美しい翡媛を妻に迎え勇躍、魏に囚われた、天才軍略家孫〓@52E0@を救い出す。法に生きる冷厳な男と、侠に生きる熱い血の男の、鮮やかな対比。
1994年、アフリカの真ん中で100万人が殺された。だが、世界の人々は、少しも気にしなかった。人類史上最悪の虐殺メカニズムを説き明かす戦慄のルポルタージュ。
謀叛に巻きこまれ、子国は果てる。三年の長きにわたり喪に服した子産はその後、苛烈なる改革者にして情意あふれる恵人として、人を活かす礼とは何かを極め、鄭と運命をともにしていく。時代を超えることばをもった最初の人・子産とその時代を、比類なき風格と凛然たる文体で描く、宮城谷文学の傑作長編。
東北地方太平洋沖地震の発生から1週間後の3月18日。避難所で暮らす小学生の呼びかけによって、「ファイト新聞」が始まりました。被災地の子どもたちが過ごした1日、1日は、これから先、日本が復興への道を歩き切るだけのエネルギーに満ちています。テレビや新聞の取材が相次ぎ、応援の手紙が全国各地から寄せられた、その創刊から1カ月半の全号を収録。
明智光秀の娘として美しく成長した玉子。主君である織田信長の媒酌で、細川藤孝の子・忠興と華燭の典を挙げ、平穏な日々を送っていた。だが、突如発生した本能寺の変。実父の犯した罪により蟄居を命じられた玉子は、幽閉先で出会った男に惹かれてしまう。愛の何たるかも知らず妻となった女を苦しめる恋の業火ー。絶世の美女と謳われた細川ガラシャの人生を描く華麗なる戦国純愛絵巻。
黒ヤギ・ゴマはビール箱をかぶって草を食べ、コバヤシ教授はツバメに襲われ全力疾走、そして、さらに、モリアオガエルに騙された!自然豊かな大学を舞台に起こる動物と植物と人間をめぐる、笑いあり、涙ありの事件の数々を人間動物行動学の視点で描く。
容姿も境遇もまったく異なる五人の女性。共通項は人妻、三十五歳、そして男性アイドルユニット「スノーホワイツ」の熱狂的ファンであること。ステージ上の「恋人」に注ぐのは、歪だけれど、狂おしいほどにひたむきな愛。たとえ手が届かなくとも、たとえ現実が悲惨でも、「彼」さえいれば、人生は美しいー。女の本音を余すことなく描いた“最凶恋愛小説”。
算数で「平行」を習ったときから、ひとには見えない黄色いレインコートに身をつつむことになったホラウチリカ。ある日、大学の恩師から紹介された仕事は古代ローマの女神像のおしゃべり相手だったー。誰もがコミュニケーション不全を抱える世界で、有機物と無機物の境界すら越えて、わたしとヴィーナスは手に手を取り合い駆け出していく。新しい関係性の扉をひらく無敵のシスターフッド小説!!
吾輩は乳酸菌である。名前はブルガリア菌20388株。学生時代に読んだネット投稿小説がきっかけでブルガリア菌が「推し」となった朋太子由寿の日々を温かく見守っている。「株式会社明和」に就職した由寿は、配属となった大阪支店量販部で、阪神・淡路大震災のときに活躍した「おでん先輩」のエピソードを聞き感銘を受ける。入社して一年後、広報部で由寿は社内報の制作を担当することになり、「明和ブルガリアヨーグルト五十周年」特集のために関係社員にインタビュー取材を行ってゆくのだが…。商品誕生に秘められたドラマ、新入社員の由寿の奮闘が始まる!