1945年、米軍の攻撃を受け悲惨な戦場となった沖縄。守備軍はもとより中学生、女学生までも戦闘にかり出され、多くの住民が戦火のなかを逃げまどいました。多くの人命を失った沖縄戦の実相をつぶさに描き、琉球王朝成立から戦後の本土復帰にいたる沖縄の歴史と人びとのくらしを語ります。沖縄への修学旅行にも役立つ一冊。
小説「失踪」の構想をねりつつ私娼街玉の井へ調査を兼ねて通っていた大江匡は、娼婦お雪となじむ。彼女の姿に江戸の名残りを感じながら。-二人の交情と別離を随筆風に展開し、その中に滅びゆく東京の風俗への愛着と四季の推移とを、詩人としての資質を十分に発揮して描いた作品。日華事変勃発直前の重苦しい世相への批判や辛辣な諷刺も卓抜で、荷風の復活を決定づけた名作。
世は生まれながらの将軍家光の時代になった。その資性は英邁ながら若さゆえの逸脱も多く、前将軍秀忠から後事を托された宗矩の責任は重い。この若き貴公子をいかに名将軍に育てるか、多難の仕事が彼の双肩にのしかかる。家康、秀忠、家光三代の師範として剣禅一如を見事に生きた柳生の鷹の生涯、完結!
剣の道はかほどに奥深く、玄妙なものであったのかー柳生の里をおとずれた神陰流の流祖上泉伊勢守秀綱と立ち合ったとき、柳生宗厳は己れを愧じた。慢心、うぬぼれ、未熟さ…目からうろこが落ちる思いでそれに気づいた宗厳は即刻秀綱に入門、切磋琢磨を誓う。無刀取り柳生新陰流の開祖石舟斎の半生。
様々な素材と趣向とテクニック。著者の才華がほとばしる短編の数々。-柳生流は無刀を兵法の極意とする。しかし宗家但馬守は、現実においては大目付の職権をもって諸大名を糾弾し、彼らの怨嗟を一身に浴びていた。家にあっては4人の子息の父。だが、その放蕩柔弱を嘆く師父でもあった。剣聖の波瀾の心中を描く「柳生月影抄」のほか、「下頭橋由来」、「大谷刑部」、「鬼」など8編を収録。