沖縄戦開始の日の夜、「赤十字看護婦の歌」を歌いつつ陸軍野戦病院へと出発したひめゆり学徒隊。16歳の少女は、そこで何を見、何を体験し、何を感じ、何を思ったかー。砲弾の下の3ヵ月、生と死の境界線上で書き続けた「日記」をもとに戦後50年のいま伝えるひめゆり学徒隊の真実。
覇権を奪いあう諸王たちの中から、楚の荘王が傑出してきた。夏姫を手中にして逡巡した楚王は、賢臣巫臣に彼女を委ね、運命の二人が出合った。興亡激しい乱世に、静かに時機を待った巫臣は、傾国の美女を驚くべき秘密からついに解き放ち、新しい天地に伴うのであった。気品にみちた、長編歴史小説。
中原の小国鄭は、超大国晋と楚の間で、絶えず翻弄されていた。鄭宮室の絶世の美少女夏姫は、兄の妖艶な恋人であったが、孤立を恐れた鄭公によって、陳の公族に嫁がされた。「力」が全てを制した争乱の世、妖しい美女夏姫を渇望した男たちは次々と…。壮大なスケールの中国歴史ロマン、直木賞受賞作。
十兵衛亡きあとの混迷の江戸柳生。対する連也斎率いる尾張柳生の隆盛。-将軍家剣術指南役の家に生まれながら、坊主にさせられた烈堂は、不甲斐ない当主に代わって連也斎を倒すべく修行の旅に出た。めざすは父宗矩に剣禅一如の極意を授けた沢庵和尚の秘奥義。が、連也斎も同じものを求めていた。沢庵が遺した謎の問答をめぐり、烈堂の剛剣が鞘走る。
黄土高原の小国曲沃の君主は、器宇壮大で、野心的な称であった。周王室が弱体化し、東方に斉が、南方に楚が力を伸ばし、天下の経営が変化する中で、したたかな称は本国翼を滅ぼして、晋を統一したが…。広漠たる大地にくり広げられる激しい戦闘、消長する幾多の国ぐに。躍動感溢れる長編歴史小説全三巻。
称の孫重耳は、翼攻めに大功をたてた。雄偉な体躯の心穏やかな公子で、狐氏から妻を娶り、その一族の厚い庇護を受けていた。称の死後晋の君主となった詭諸は、絶世の美女驪姫に溺れ、奸計に嵌まって重耳たち公子を殺そうと謀る。逃れ出た重耳と家臣たちの、辛酸の日々。晋の国内は大きく乱れて…。
晋の内乱が鎮静し、重耳の弟夷吾が素早く君主に納まったが、軽佻不徳に人心は集まらず、重耳の帰国が切望された。刺客の魔手を逃れながら、飢えと屈辱の、十九年一万里の流浪の末、ついに重耳は晋を再建し、やがて中国全土の覇者となった。-春秋随一の名君を描く、芸術選奨文部大臣賞受賞の名作。
易経、史記、論語、孟子、貞観政要、韓非子など、中国の長い歴史が生み出した数多い古典の中から、中国歴史小説の第一人者が選び抜いた名言名句集。自己啓発や経営戦略など現代生活に役立つよう工夫された平明な解説がつけられている。知的刺激に満ちた味わい深いエッセイでもあり、人生の指針となる実用の書でもある。
これみよがしのおべっか使いが相手なら話は単純だ。本当に厄介なのは、見え透いたやり口は使わずにすり寄ってくる連中である。ではどうすればこの手合いを真の友人から見分けられるか?こう説き起こしてプルタルコスは彼らの手口のあの手この手を実例をあげて紹介する。よく人間を知る者ならではの観察眼がひかるエッセイ4篇。
強国晋を中心に大小いくつもの国が乱立した古代中国春秋期。気儖な君公に奸佞驕慢な高官たちが群れ従う斉の政情下、ただ一人晏弱のみは廟中にあっては毅然として礼を実践し、戦下においては稀代の智謀を揮った。緊迫する国際関係、宿敵晋との激突、血ぬられた政変…。度重なる苦境に晏弱はどう対処するのか。斉の存亡の危機を救った晏子父子の波瀾の生涯を描く歴史巨編、待望の文庫化。
太公望以来の斉の悲願、東方の国、莱の併呑。その重責を一身に負った将軍晏弱は僅か五千の兵でそれを成し遂げると宣言した。迎え撃つ莱の智将王湫は一万の精兵を束ね、虎視眈々と斉軍の到来を待ち受ける。圧政に苦しむ敵国の民。彼らの命を何よりも尊ぶ人倫の人、晏弱のとった戦略は凡百の策士には及びもつかぬ大胆なものだった。策略と計略が水面下で激しく交錯する緊迫の第二巻。
晏弱は死んだ。斉は偉大なる英傑を失った。幼少よりその天才を発揮した息子晏嬰は古礼にしたがって三年に及ぶ篤い服喪に入った。斉は周王朝の意志を奉じて魯の攻略を繰り返す。魯は援軍をもとめ、晋傘下の十二か国の大連合軍が魯のために集結した。襲いかかる連合軍の怒濤の駆塵。軍師も軍略もない斉軍は連合軍の猛攻をどう凌ごうというのか…。
崔杼は慶封と手を組み君主を弑した。一旦は崔杼の専制が成ったかにみえたが、崔氏は分裂崩壊し、代わった慶氏も誅せられた。脆弱不安の政情下、晏嬰は天の意志、民の声を全うしうるのか。後代、司馬遷がその御者になりたいとまで敬慕した晏嬰。稀代の聖人の人生の哲理を捉えた巨編。
むし歯のバイキンは小学生の歯がだいすき。どうして、きみたちの歯が一番むし歯のバイ菌にねらわれやすいのかな?むし歯のバイ菌にねらわれたら、どうしたらいいのかな?本書は、歯医者さんの北川原健先生と、絵本作家の柳生弦一郎さんがつくりました。小学生から。
教会史上、正典につぐ地位を占めてきた諸文書。古代キリスト教会で評価の高かった「十二使徒の教訓」、黙示文学の形式で書かれた「ヘルマスの牧者」の他、「バルナバの手紙」「クレメンスの手紙」「イグナティオスの手紙」「ポリュカルポスの殉教」など十篇を学問的に原典から訳した、新約聖書の世界の全体像を把握するために必読の書。