イルカは、なかまどうしで、はなすことばを、たくさんもっているということです。にんげんのつぎに、りこうないきものだともいわれています。そのイルカが、とらえられて、すいそくかんでみせものにされたのです。イルカは、どんなことをかんがえたでしょうか。
樋口一葉『たけくらべ』から、田中康夫『なんとなく、クリスタル』まで、明治・大正・昭和の街を描いた名作17編をとりあげ、謎解きのおもしろさをも加味した興味津々の文学散歩。
アル中は生理的な現象だが、酔いどれは社会的現象であるー。ロシアの酔いどれは飲酒という至福の宗教の祭司であり、自由と抵抗のシンボルにほかならない。本書は、20世紀のスウィフトと呼ばれる異才、亡命作家ジノビエフが30篇の戯画と詩で酔いどれの一生を描き、酩酊感を通してソ連社会の現実を批判する。ゴルバチョフの風刺画など、他の作品も含めて本邦初公開。
敗戦の焼跡で見たおびただしい死は、断じてカッコイイ散華ではなかった。8・15、ベトナム戦争、民主主義、そしてなによりも人間について思索し、行動し続ける知識人作家小田実が危機的な今日に問う代表的平和論集。「『難死』の思想」「人間・ある個人的考察」「『殺すな』から」などを収録。
現代は香りの時代であるー。香りのする製品が開発されたり、香りが治療に用いられたり、さらには博覧会やコンサートなど、各種イベントで臨場感を増すために香りが流されたりと、香りはますます我々の日常生活に入り込んでくる。そもそも香りを使う、演出するということはどういうことなのか?-クレオパトラと香りの関わり合いなど興味深い歴史的なエピソードから説き起こし、香りブームを創り出した各方面の方々との取材を通じて、今後のゆくえを占う香り読本の決定版。
蔵書印を使う習慣のない西欧では、自分の名前を入れた美術小版画を作り、本の見返しに貼って蔵書であることを証した。この美術紙片を蔵書票という。日本では明治期に移入して以来100年、今まさに蔵書票の黄金期を迎えている。とりわけ浮世絵の伝統をもつ多色摺りの日本の書票は、技法とともに世界的に愛好されている。本書は、本を愛するすべての人のために、文化史的な側面からその魅力を探り、書票文化のあり方を問うものである。
東西ドイツの統一は、戦後の世界秩序の崩壊を最も象徴的に示す出来事である。一挙に西ヨーロッパ最大の国となったドイツは、今後国際経済・政治の中でより重要な役割を果たして行くであろう。しかし、劇的なベルリンの壁崩壊からわずか1年たらずで性急に達成された統一は、今ドイツに様々のきしみをもたらしている。新生ドイツはどのような問題を抱え、何処へ行こうとしているのか?統一前から現在までドイツに居を構え、現地で定点観測を続ける若者が、歴史の激動の中で変わりゆくドイツの姿を浮き彫りにする。
フランスでは18世紀の前半、貴婦人たちが主宰した数々の「サロン」によって、絢爛たる貴族文化が開花した。なかでもタンサン侯爵婦人のサロンは、顔ぶれの豪華さ、論じられるテーマの幅広さで、ひときわ光彩を放っていた。が、こうした知の響宴も時代の変化とともに消えてしまった。本書は、実際に筆者が専門を超えて読書の愉しみを交歓できる仲間と、研究室でコーヒーを啜りながら、書斎のソファーでウイスキーグラスを傾けながら語り合つた、文科と理科を横断し、ジャンルと時代を縦断する興味深い話を綴った現代版ミニサロンである。
高い理論より豊かな具象を、深い哲学より多彩な芸術を-。日本近代史学に新しい視野を拓きつづける歴史家が、生きた歴史を捉えるために、自らの研究歴と歴史叙述の実際を語り、民衆史と地方史の方法を提唱し、歴史と文学の難問に挑む刺激に満ちた、読んで面白い史学概論。
「大晦日は一日千金」…。大晦日は江戸時代の庶民にとっては、悲喜こもごものドラマが展開される一日であった。人間味あふれる名著を、西鶴没後3百年、西鶴研究の第一人者が平易な現代語訳でおとどけします。
「理念の共和国」アメリカは、体制=民主主義の危機をいかにして乗り越えてきたのか?いま、どのような課題に直面しているか?大統領の歴史をめぐって展開される、民主主義と指導者との微妙で緊張をはらんだ物語。
SF界の世界的重鎮が“最初の、そして最良のSF史”と絶賛された前作『十億年の宴』以後の英米SF界の動向を、綿密な作家論をまじえつつ、ジャーナリスティックに概括する、待望の長編評論。ヒューゴー賞ノンフィクション部門受賞。
世界はボーダレス時代になったといわれる。輸送手段のスピードが速くなり、ヒトもモノも簡単に国境をこえられるようになった。さらに通信技術が発達し、カネも情報も一瞬のうちに国境を越える。ボーダレス・ワールドがやってきつつあるようだ。しかし、世界各地の状況をよく見ると、世の中はどうも、逆のうごきをしているのではないだろうか。国家間の争いや、民族間の紛争は、毎日のようにニュースになっている。本書は、いま世界が「ボーダフル・ワールド」になりつつあることを明らかにし、日本人一人ひとりがどのように対処すべきかを解説する。