20世紀を目前にひかえたブラジル。ジャーナリストの主人公ドン・ルイス・ガルベスはとある熱帯の夜、男に追われて情婦の寝室の窓から逃げだし、はからずも、暴徒に襲われかけていたボリビア大使の命を救うことになる。その日からガルベスの一生は百八十度、転回する。貴族的なラテン美女と、愛に飢えたカトリック修道女、そして、気性の激しいフランス人オペラ歌手ーこの三人の女を従え、アマゾンの皇帝となることを夢見て、ガルベスはいまだ地図もないアマゾンのゴム王国の奥の奥へと踏みこんでゆく…。
腰痛を直すのを目的に、湯治にやってきた東北の温泉場で、偶然同宿した一銭パンゲ(禿)を持つ老婆。湯治客相手の一夜妻を、この地では「雁鍋」といったが、その雁鍋として若い日をすごした彼女の数奇な年輪をみごとに描いた表題作など17篇。主として著者の郷里に材を得た良質の味わい深い珠玉の作品集。
シュバイツァーは、ほんとうに“密林の聖者”だったのか?何度もアフリカへ旅した著者がその文明と歴史のなかで、シュバイツァーの“なぞ”にせまる。
ソシュール以後、「言語記号は恣意的である」という命題は異論の余地ないものとして受け入れられている。だが本当にそうなのか?本書では、聖アウグスティヌスと中世のラテン文法家たち、ウォリス、ライプニッツ、ワハターなど17〜18世紀の哲学者・文法家を経て、マラルメ、ヴァレリー、プルースト、さらにクローデル、バシュラール、レーリスなどの多彩な思考が描いた〈言語に関する夢想〉の具体例をふんだんに紹介しつつ、言語記号の有縁性について、音声象徴性について、人工言語、言語起源論へと視野を拡げ、《詩》の創造の核心へと至りつく。
黄金コンビ、もしくはイーさん、トモさんの“いいともコンビ”と自称する2人は、作家とアートディレクターという関係を超えて、競馬、ゴルフに駆け巡り、銀座、六本木を唄いまくり飲み明かす間柄。絵と文章で創り上げた、しみじみワールドのエッセンス。
天才空手随筆家大山泰彦師範の痛快カラテエッセイ集。
有罪とされた哲学者ソクラテスは、どんな罪を犯したのだろうか。その裁判の争点を問い直し、神話的ギリシア世界におけるソクラテスの真の偉大さを考察する。
萎えた心をふるい立たせる雄大な流れをつくるアンデスの〈深い川〉。そこに生きる少年の魂の内部に流れる〈深い川〉。村人に襲いかかる疫病を死の国へと運び去る〈深い人〉。山と川を越え、闇の中を町に押し寄せる裸足のインディオたちの〈深い川〉-アンデスの自然の中を流れ、人びとの魂の奥底を流れる〈川〉の力を描く、ペルー作家の名作。