イスラム世界の誕生から今日に至るまで、モスクという言葉や建物は一貫して存在する。また支配者の権威と敬虔さを示すモスク建築が、八世紀いらい有した意義は今日もさほど変わらない。ムスリムの「祈りの場」であるモスクは彼らの毎日の生活と密接な関わりを持ち、イスラム社会の特徴を映し出す鏡でもある。本書はモスクの建築史的変遷と社会における機能の変化を追い、モスクを通して、広くイスラム世界の歴史を見直す試みである。
環境破壊が深刻化し、人間の存在そのものがそれを加速しているいま、私たちはどのように自然とつきあっていけばよいのだろうか。生態学のパイオニアであり、半世紀もの間、自然保護のために精力的に行動してきた著者が、二一世紀に向けての自然との共存方法を、先人たちの軌跡や、自然誌博物館の設立など自らの体験を踏まえて語る。
いま、人類にとって、世界にとってリアリズムとは何だろうか。環境危機に直面する私たちが制度、政策、発想、そして生活様式をも変革していくためのエコロジカルな提言。先進国対途上国、企業対市民といった対立の構図を超えて持続可能な地球と新しい世紀への現実的処方箋を示す。
ダーウィンの環境淘汰説では説明しきれない、不合理とも見える性の仕組み。この謎に真っ向から挑み、原始の地球に起こった細胞レベルのミクロな争いを再現し、性の生物学に新しい頁をひらいた、マーグリスの名著。
本書は、複素数・複素平面の復習から説きおこし、双曲幾何学の具体的なモデルを主な舞台として、クラインによる視点から非ユークリッド幾何学の世界を解説した入門書である。まず、合同変換・相似変換の複素数表現から始め、その自然な拡張としてメビウス変換を導入する。つぎに、球面上の幾何学を概観した後、本書の主題となる双曲幾何学の典型的なモデルを構成し、双曲三角法の基本事項を説明する。さらに、やや高度な内容として、“双曲タイル貼り”、“2次元双曲多様体”、“2橋結び目”など、現代の数学への橋渡しとなるトピックスについても概説する。複素数が織りなす幾何学の世界を存分に感得することができる格好の案内書である。
トーラス面上にどのくらい多くの有理形関数が存在するであろうか?-この問題の解を与えるのがリーマンーロッホの定理である。複素関数論の復習に始まりリーマンーロッホの定理へいたるみちすじとその楕円関数論への応用を親しみやすく解説する。
科学・技術はめざましい勢いで進展しており、とくに最近の数々の成果には目をみはるものがある。昆虫学においても例外ではない。このような日進月歩の科学の発達を考えれば、教える側の教師にも、教えられる側の学生にも、最新の知識を取り入れた教科書が必要となってきている。本書『応用昆虫学の基礎』はこのような背景をふまえて企画された。求められることは、世紀の転換点にある今日、基本的な知識を最低限記述した上で、最近の昆虫学上の進歩と、昆虫学を利用した応用技術の発展の著しい分野に焦点を当てることであろう。本書はこれらの点を強く意識して書かれた。
種子作物はしばしば、花芽形成から減数分裂・開花・受精を経て胚・胚乳形成に至る一連の生殖生長過程において、生殖にきわめて不利な環境変動に遭遇し、収量に著しい減少を来すことが少なくない。イネもその例外ではない。イネの生殖器官(小穂)はわずか数ミリという小さなものであるが、不良環境に対応して形態を変化させたり、種子繁殖のシステムそのものを変えたりする。そこでは、穎の変形、雌ずいの増生と雄ずいの減生といった小穂の形態変化とともに、雄ずいと雌ずいという、植物が長い進化の過程で発達させてきた性の分化と受精による生殖、つまり有性生殖を転換して性によらない繁殖すなわち無性繁殖へと切り替えていく姿を見ることができる。そこには、厳しい環境が襲来してもその場所から逃げることなくそれに真向かう中で生き延びようとする闘いの姿と同時に、したたかな生命といったものを見ることができる。
私たちはどこからきてどこへいくのか。生命誌の世界は、生命科学で得られる知識だけでなく、生きものすべての歴史と関係を知り、生命の歴史物語を読みとる作業である。科学から誌への移行は、自然、人間、人工など、あらゆるものの関係づくりにつながり、あたらしい世界観の組み立てへのはじまりでもある。今、科学を文化として捉え、社会の中で生かす生命誌の世界を、だれもが身近に知ってほしい。
世界で最も成功を収める米国チャールズ・シュワブ社のCEOが描く、刺激的な経営ビジョン。企業と顧客のロイヤリティは再び息を吹き返す!オンラインと実店舗の組みあわせを指すだけではない米国発、最新ビジネスモデル。クリック&モルタルの真の意味。
本書では、1992年の地球サミット後を原則としてこの数年の出版に重点をしぼって、ぜひ読んでほしい約100冊の環境本を分野別に選定した。内容は、書評ではなく、あくまで紹介に徹している。
本書は、里山を含む里地の自然の魅力を科学的な視点で明らかにするとともに、里地保全をどのように進めていくかについて、科学、市民、行政といった観点から検討を加えたものである。
絶滅危惧種やさまざまな生態系、法制度、時事問題など、生物多様性を学び、守るための100語を解説。
社会情勢や歴史的条件からめまぐるしく変容しつづける21世紀都市。環境・産業社会・科学技術・市民生活・文化・風土といった観点から多分野横断的に捉え直し、公共空間に根づいた主体的市民による都市づくりの実践的なビジョンを提示。社会システムの再構築を促す具体的な政策提言。
「自然再生」とはどのようにあるべきか。日本のNGOが模索してきた事例や歴史とともに、第一線の研究者、フィールドワーカー、行政担当者がそれぞれの現場から詳述する。その理念と技術的な諸問題を幅広く紹介。