上巻『時間の文化史』につづいて、本巻では「形状」「距離」「方向」の位相を軸に、哲学や科学・芸術における伝統的形状の破壊、私的空間の公的空間による侵害、世界の狭小化による国際主義の機運と植民地主義の膨張、上下軸の方向感覚の誕生などが取り上げられる。さらに、上下巻を通じて論じられてきた時間・空間認識の変容が収斂したものとして第一次世界大戦を位置づけ、開戦にいたる経緯と戦闘形態の新しさを明らかにする。あらゆる文化現象を時間・空間の機能としてとらえる壮大な試み。
本書は校訂者シーグルズル・ノルダルがアイスランド学者としてもてるかぎりの能力を縦横無尽に発揮した業績である。そこにはさらに、アイスランド人ノルダルの自民族の精神文化に対する熱い思いがみなぎり、そのため本書は古代詩校訂本にとどまらず、一つの哲学書とさえなっている。
科学とは、科学者のあるべき姿とは?常に時代の先端にたって現代科学を切り開いてきた著者が綴る回想と提言の数々。
大学教養課程の英文テキストを実例に、単語、翻訳ルールを追加するチューンアップ法を詳しく解説。
旧来の哲学的人間学の根底をなす形而上学と体系的思考を排し、環境破壊、核の脅威、マスメデァによる大衆支配など、危機的状況にさらされた今世紀の人類を覆う底深いニヒリズムの根源を暴く。技術時代を生き、黙示録的破滅を免れるための方法的エチカを探る。
愛弟子ラディゲの死にショックを受けたコクトーは、やがて阿片を常用するようになる。たびたびおとずれる禁断症状の中、幻覚に苦しめられながらも自己をみつめ、見事に結実させた20世紀文学の傑作。これは魂の告白の克明な記録であり、コクトー芸術の源泉ともいうべき記念碑的作品である。
世界のさまざまに異なる領域で体験された神秘的エクスタシスについての告白と、その体験に基づく宗教的直観の多様な記録を収集。魂の言い表わしがたい秘密を語り固有性をになう神秘体験者の言葉と声に耳をかたむけ、人間的なるものの根源の《言葉》を感得する。
ギリシア悲劇『ペルシアの人々』と能『実盛』の構成と文体の分析を通じ、劇的諸契機と詩的言語表出とが優れて渾然一体となってドラマトゥルギーを形成しているゆえに、表現芸術の極致をゆくことを明らかにした名著の完訳。
指輪三部作の舞台となる壮大な物語世界を構築したトールキン。しかしその物語世界も、かれが生涯をかけて創造した神話的宇宙の一部にすぎなかった。最初期稿から草稿の変遷を綿密に考証することで、トールキン神話成立の軌跡をたどる。