「お義兄さん、抱いて。私、この日を待っていたの」豊麗な裸身を惜しげもなく晒して抱きつき愛撫を迫る義妹。妻にはない艶気と愛らしくも熟れた肉の感触が、矢島を男に!20年前に会った時から密かに感じていた邪な欲情が玲子のほうからの哀願となって実現するとは…こうして妻の妹との、絶対秘密の蜜会がはじまった。
一瞬の生と無限の美との間で麻薬の罠に転落し、バリ島で逮捕された画家・哲郎。死刑なんて、きっとなにかの間違いだ。誰にもテッチを殺させはしない!パリから帰国した妹のカヲルはひとり、バリ島へ飛ぶが…。交錯する生と死、西欧とアジア、そして絶望と救済。毎日出版文化賞受賞の傑作長篇小説。
二十五歳のOL知花は両親の猛反対を押し切って、先妻と死別した五十歳の上司・国元公二と結婚した。後妻の立場と大きな年齢差が懸念されたが、それよりも問題は夫の妹にあった。四十五歳の義妹・小恵子は、二十も年下の兄嫁を「お姉さま」と呼んで慕い、洋服の趣味から髪型、さらに口癖・習慣に至るまで、知花のすべてを模倣しはじめる。そこには公二の先妻の死とも絡む大きな秘密があった。
ある日偶然見つけた押入れの穴。光のもれてくるその穴を覗いてみると、そこは妹の華鈴の部屋だった。塞がなければならないと思いつつも、一人身体を慰めている華鈴から目が離せなくなる秀治。そう、華鈴はなんとオナニーをしていたのだ。秀治の視線の先には、誰にも見られていなという安心感からか、エロ本をオカズに大胆に自慰に耽る華鈴。それまでは華鈴に女としての魅力を全て感じていなかった秀治だが、これを目撃したことにより彼は自分の妹に対する認識を改めざるをえず…。
姉のレイチェルは39歳。知的障害を持つ妹ベスは38歳。レイチェルは長年つきあっていた彼と別れて以来、成功だけを夢見て仕事に没頭する日々を送っている。かたやベスは生活保護を受けながら、働かずに暮らしていた。ベスは路線バスに乗るのが大好きで、始発から好きな運動手のバスを次々と乗り継いでは、夕方まで車内の人たちとおしゃべりを楽しむのだった。離れて暮らし、あまり連絡もとりあわなかったふたり。だがベスの突然の提案で、1年間いっしょにバスに乗ることになる。はじめはベスに「つきあってあげていた」レイチェルだったが、ストレートに愛情を示すベスや車内の個性的な人々と交流するうちに、自分が変わりはじめたのに気づき…。
脳障害を負って生きてきた著者は語る。「私は条件をつけずに愛されました。このまんまの私を受け入れてもらえました。脳障害であることは大変ではあるけれど、私の存在を否定する材料にはなりえませんでした。…私は私自身でありさえすればよかったのです」と。その、魂に共鳴する言葉のひとつひとつに、気持ちが洗われ、生きる力が湧きだしてくる。
合理的思想と自然科学が波及し、「光の世紀」と呼ばれたヨーロッパの十八世紀。啓蒙主義の伝播が遅れ、真の「近代的改革」の不在がいわれてきたオーストリアでも、新思潮は確実に浸透しつつあった。啓蒙専制君主ヨーゼフ二世による「都市近代化」が人びとに与えたものは、束の間の残像などでは決してない。それは、都市の社会文化を規定する、根底的変革をもたらしたのだ。「光の世紀」が喚起した、これら社会文化史的変容の諸相を探る。