1975年に生まれた真木はスキーの上手な女の子だった。小学6年生になったある日、白血病と診断されてから、母親とともに必死に病とたたかった。「命を半分だけください」と叫びながら…。生命の尊さと白血病を治す骨髄移植のための骨髄バンクの必要性を訴える!
「日本鬼子(日本の鬼め)!」と叫んだ中国の人びとの声が今も耳を離れない。-旧満州国関東軍憲兵はそう懴悔する。東北の優秀な一農村青年が、どのようにして恐ろしい憲兵となっていったか。どのような手段で反満抗日分子を弾圧したのか。そして戦後10年の抑留生活の中でどのように罪を自覚していったか。自らの半生を語る主人公の言葉は、強い平和への願いと深い悔悟の念に貫かれている。
時代を捉える感性は天与のものだったか。梶山季之は、ひたすらリアリストであった。その眼差しは事実の奥を見つめ、筆先はあらゆる権威・権力を撃った。一方で、弱者には優しかった。「デートもできない警職法」や皇太子妃スクープなどでジャーナリズムの新境地を開いた梶山は、日本の戦後史を浮き彫りにした“語り部”でもあった。今もなお、この三十余年前に書かれた文章の新鮮な響きに驚くばかりである。
冷害・兇作相次ぐ不毛の土地下北半島六ヶ所村に次々と訪れた夢の工業地帯計画はすべて中央大企業の土地ころがしに終った。そして1984年、人類の生存に最も危険な核燃料廃棄物処理場建設計画がふってわいた…。一つの地域に展開する資本の収奪と農民の闘いを、20年を費した取材をもとに描く、鎌田慧渾身の書下し大河ルポルタージュ。
メキシコの新しい文学の先駆者である著者がバタイユの『エロスの涙』に触発され、耐えがたい苦痛にあると同時に恍惚的な愛の儀式を偏倚で執拗な事物の描写を通して描きだした未聞の残酷怪奇譚。解剖学、写真術、心霊術、中国幻想、性愛術を巡る言葉が綯い交ぜとなって強迫的に読者を襲うヌーボー・ロマンの知られざる傑作。
警視庁カメラマンとして東京大空襲の全貌を撮った唯一の日本人・石川光陽が、撮影と並行して綴った手記がこのほど発見された。これによって当時の正確な足取りが判明し、これまで混乱していた全600余枚の写真の日時と場所が初めて特定された。無辜の庶民に犠牲を強いた、戦争の実態を証言する貴重な記録。
内蔵された高炸薬もろともに突入、敵艦を屠る人間魚雷「回天」-。鋼鉄の棺の中に己れの青春を封じ込め、生還ゼロパーセントの攻撃に三たび出撃、空しく帰投した不屈の男が、僚友たちの奮戦と苦悩をつづる大海底戦記。
チャップリンからジャームッシュまで、〈画面〉自体によって再構成される新しい映画論の冒険。密度、フレーム、モンタージュ…。刺激に満ちた5つのエッセー。
大破した船から投げ出された高耶、直江、風魔小太郎は、瀬戸内海の小島に漂着していた。身を呈して高耶を守った直江だったが、その目は光を失ってしまっていた。信長を討つため、毛利、一向宗と手を組もうとする小太郎に、高耶は激しく抵抗するが、直江を人質に取られ、毛利の本拠地へと連れ去られてしまう。一方、大和の謎を追っていた綾子たちは〈楊貴妃〉に会うため、秋芳洞へ向かうが。
論文完成までの秘訣を伝授。初めて論文を書く人のために。
広大なアラビア半島の砂漠地帯にあってメッカ、メディーナのイスラーム二大聖地を抱える国、サウジアラビア。世界の石油情勢の動向を支配するこの国の理解なしに中東と石油を理解するのは不可能である。それにもかかわらず、自由な取材活動が制限されていることもあり、そのイメージは依然として砂漠の王国の域を出ない。本書は建国から湾岸戦争後の今日に至るこの国の実像を、可能な限り広い視野からダイナミックに描き出す。