本ばかり読んでいる稔、姉の雀、元恋人の渚、娘の波十、友だちの大竹と淳子…。切実で愛しい小さな冒険の日々と頁をめくる官能を描き切る、待望の長篇小説。
一日のはじまり。この日常に不満はない、と、瑠璃子は思う。淋しさはたぶん人間の抱える根元的なもので、聡のせいではないのだろう。自分一人で対処するべきもので、誰かにーたとえ夫でもー救ってもらえる類のものではないのだろう。でも、と、聡の好きな桃をむきながら瑠璃子は考える。でもそれなら、春夫といるときに淋しくないのは一体どういうわけだろう。あんなにみちたりてしまうのは。
外国人青年、少女、老婦人、大家族…。空港の到着ロビーで行き交う人々の、人生の一瞬の重なりを鮮やかに掬い取った川端賞受賞の表題作。恋人に別れを告げられ、妻が眠る家に帰った男性の心の変化をこぼさず描く「寝室」。“僕らは幸福だ”“いいわ”-夫婦間の小さなささくれをそっと見つめた「ピクニック」。わたしたちが生きる上で抱え続ける、あたたかい孤独に満ちた、六つの旅路。川端康成文学賞受賞作。
小さな動物や虫と話ができる幼稚園児の拓人の目に映る、カラフルでみずみずしい世界。ためらいなく恋人との時間を優先させる父と、思い煩いながら待ちつづける母のもと、しっかり者の姉に守られながら、拓人は大人たちの穏やかでない日常を冒険する。
広告代理店およびクリエイティブエージェンシーに所属する12人の営業担当者たちの奮闘の日々を語るインタビュー集。
卒業旅行に25社が協賛。この不況下で、なぜ!?NTTレゾナント、キヤノン、ヒューレット・パッカード…錚々たる企業が女子大生の「世界一周旅行」のスポンサーに。企画立案、アポイントどり、プレゼンテーションから、70日間で世界一周を成し遂げるまでの涙と汗の全記録320ページ。
「ものの見方」で、暗い時代をひっくり返そう!創造力と元気をはぐくむ市民講座を、紙上で再現。
いまも胸にのこる後悔、運命と信じたはかない恋心、忘れえぬ異国の光景、取り戻したかったあの瞬間の空気。そう、願いがかなうものならばー。メロディーを耳にしただけで、あの頃の切ない想いを鮮やかに甦らせてくれる永遠の名曲たち。不世出の天才シンガーソングライター、ユーミンのタイトルが、6人の作家によって新たなストーリーへと生まれ変わる。唯一無二のトリビュート小説集。
わたしの名前は栞。部屋に迷いこんできた「やどかり」を追って隣の少年が訪れてきたことから、奇妙な物語の扉がひらいたー。義姉が「それを探しに行く」という謎の手紙を残して失踪したり、兄が名前を偽って重婚が判明したり、やどかりに尾行されたり、義姉と名乗る変な女に部屋を占領されたり、まずい卵料理を食べさせられたり。そりゃあ、勿論、人生にはいろいろあるけれど。1993年の夏、私と兄をめぐる「不思議な真実」にみちた話をしよう。
夫、愛犬、男友達、旅、本のこと…自らの日常を、柔らかく、かつ緊張感に満ちた文章で綴った珠玉のエッセイ。
恋愛にお手本はない。なぜ人は愛に生きるのか。愛と孤独、セックスと気持ち、結婚と離婚、不倫と純愛…究極の恋愛論。
大学生の透は恋の極みにいた。年上の詩史と過ごす甘くゆるやかなひと時、世界はみちたりていた。恋はするものじゃなく、おちるものだ。透はそれを、詩史に教わった。一方、透の親友・耕二は、女子大生の恋人がいながらも、蠱惑的な喜美子に夢中だった。彼女との肉体関係に…。夫もいる年上の女性と大学生の少年。東京タワーが見守る街で、二組の対極的な恋人たちが繰り広げる長篇恋愛小説。
仲の良い両親と、ふたつ上の兄・惣一郎、幼なじみの少年・九に囲まれ、福岡で育った茉莉。しかし惣一郎の死をきっかけに、幸せな子供時代は終りを告げる。兄の面影を胸に、茉莉は17歳で駆け落ちし、東京へ向う。男たちとの出会いと別れ、九との再会を経てめぐりあったのは、このうえない幸福と、想像もつかないかなしみだったー。辻仁成と組んで放つ、愛を求めて流れゆく男女の物語。
日本語を憂う人、悩む人、さらにこわす人に贈る、ことばの観察記。
一九九五年「インターナショナル・ブック・アウォード」受賞。
人にはみな才能がある。マーケティング的な発想は企業活動に限らず、個人の生き方を考えるうえでも実に有用なソフトである。実力主義時代を生きる“自分発見”の知恵。
誰もが知っている、誰もがなつかしむ、戦後を彩ったベスト広告500点一挙に掲載!戦後日本。心に響いた想い出の広告史。時代を創り、時代を駆け抜けたアートディレクター、コピーライター、カメラマン、イラストレーターたちの軌跡。
読書論の王道を行きながら、この熾烈なビジネス社会を生き抜くため成功術と読書を結合させる大型「新人」による、「日本人として成功していく、幸福になっていく」ための読書のしかた。
本書は、三十数年前の子供向け雑誌に掲載された「広告」の中から時代色を強く反映した傑作を中心に選び出し、その画像情報と文字情報を、最新の画像処理システムを用いて当時の「色」のままに原寸大で復元したものである。