LP90枚組で発表された六代目圓生の大全集のCD再発シリーズ。収められている「紺屋高尾」は昭和50年4月8日の、「後家殺し」は昭和52年の録音だ。レコード用の録音は本人も納得している出来の貴重な芸の記録。古典落語ファンの基本アイテムだ。
来春までリリースされる『園生百席』シリーズのVOL.16は廓嘲、「五人廻し」とシリーズ監修者、宇野信夫作の芝居のリメイク、「小判一両」を収めた2枚組。うまいねえ、どうも。背筋の伸びた話しっぷりがイカス。ラストについた芸談も味わい深い。
落語の中でも枕の部分が楽しいとグングン引きつけられるものだが、圓生の絶妙な味が生かされた枕をこのCDでも堪能できる。またバカ殿モノである「蕎麦の殿様」も、たっぷりと笑わせてもらった後で何か心に暖かいものが残る。本人による解説も収録。
圓生百席の聴きもの、楽しみの一つがお囃子とその選曲だ。中でも子供の頃から義太夫を語っていた圓生ならではの噺「豊竹屋」(75年)で、さすがの“猿迴し”を使っている。民話風のとぼけた噺「夏の医者」(74年)は、テケレッツのパァとしめている。
落語を笑わせるだけの芸としか考えない人種には、落語の本当のおかしさ、奥行きの深さは理解できない。この「包丁」「ミイラ取り」には人間の悲哀、果てしない愚かさ、その暖かさがにじみ出る噺で、圓生の技がハマりにハマった作品である。落語初心者にも一聴をお薦めしたい作品だ。
お馴染み、六代目・三遊亭圓生の古典落語をダイレクトに収録した『圓生百席』シリーズ。45作目となる本編には、75年4月26日に収録した「淀五郎」と、同じく75年7月2日に収録した「らくだ」をカップリング。その迫力ある語りをぜひ味わってほしい。
昭和の大名人、圓生による古典落語全集のCD化第2弾。オレがいうのもおこがましいが、このヒトの噺からは江戸文化のイキな部分がヒシヒシと伝わってくる。ちなみに「鶉衣」は宇野信夫作品。篠山紀信によるジャケット写真も最高で御座います。
六代目三遊亭圓生の巧みな話芸を収めた圓生百席シリーズ第一弾。江戸時代のケチをユニークに描いた74年録音の「一文惜しみ」、映画『幕末太陽伝』の元筋、75年録音の「居残り佐平次」を収録。江戸訛りを取り入れたり、セリフのひとつひとつが味わい深い。
絶頂期の録音で、芸に対する自信がひしひしと伝わる。『鰻のたいこ』は八代目文楽の十八番として知られるが、圓生は野だいこの一八が例の客に会うまでの過程をカットせずに演じている。文楽と圓生の、噺の刈りこみ方の違いがわかって面白く聴ける。
レパートリーの広い人だった。しかも分かりやすい。ここにも、もう圓生しかやらないような噺がのっている。歌舞伎((1))上方噺((2))講談物((3))というネタを、見事に自家薬籠中の人情噺に仕上げているところがさすが。文楽とはまた違った完璧主義者だった。
“貴様か、しぃつけたのは”なんて言われると、嬉しくなっちゃいますね、あたしゃ。“ひ”じゃなくて“し”ですよ。後は“じびた”にも手を叩いちゃったな。明治生まれの圓生師匠のキレの良い日本語は心地よい。芸の巧みさは、まるで短編映画を観ているよう。
生前は落語家としての活動のみならず俳優としても活動、CMでは「バカウマ」という流行語を生んだ圓生の、[1]は74年10月、[2]は75年5月の口演を収録。伝承古典落語だけに現代社会には実在しないが、そのぶん古き良き時代の夢もある。
いわゆる“大作”ではない噺の圓生の魅力をたっぷり味わえる。(1)の両国の見せ物について語る枕がまず聴きもの。口上の巧みさだけでもゼニが取れる。蘊蓄を傾けるにはこうありたい。噺の本題は付け足しのようなものと言っても怒られはしないだろう。
百席篇だけでCD45枚、人情噺集成篇まで加えると58枚にもおよぶという六代目圓生の芸の幅の広さには今もって驚かされる。収録は「仮名手本忠臣蔵」の「九段目(途中まで)」と、もうひとつはサゲが汚いと放送などでは敬遠されたという「汲みたて」。
普段はまず通して聴くことはない咄だが、六代目乾坤一擲の大一番はさすがに聴き応え十分。これだけの長丁場もダレることなく下げまで一気に持っていく。登場人物のキャラクターがくっきりと浮き出ていて、それだけでもこの人の芸を堪能させてくれる。
六代目・三遊亭圓生の独演の模様をダイレクトに収録。本作には「小間物屋政談」「盃の殿様」と2つの落語を収録。弁舌な圓生の語りを聞いていると、不思議と話の情景や彼の講談する姿が頭に浮かんでくる。饒舌な語りの名演を堪能出来る優れた1枚です。
落語界の最高峰・圓生の古典落語集第20弾。有名な「三年目」を目当てに購入する人も多いだろう。スタジオ録音によるクオリティの高さと、聴く者をのめり込ませる圓生の見事な話術はまさに完全保存盤。本人による芸の解説やくわしいブックレットも秀逸。
(1)は前半を縮めて演じられることが多い噺だが、ここでは、3人の旅人が馬子にからかわれたり、年を取った尼女郎にヘキエキとされるなど、円生らしい細かい描写を織り込み、通しでたっぷりと聴ける。(2)は代表的な狂歌噺で、女中の物言いが生き生き。
(1)はけっこう有名な噺だが、ふたつの長いマクラが珍しい。高座でなかなかこんなにたっぷりとは聴けない。(2)も江戸の芝居を丁寧に解説した上で始まるから、特別な知識がなくても楽しめる。今回の噺では「質屋庫」が圓生らしい人物描写の妙を堪能できる。
75〜76年のスタジオ録音。女房に先立たれて悲しんでいる捻兵衛を人魂で騙す「樟脳玉」では、いくつも呉服の名が出てきて着物の知識の程が問われてしまう。「洒落小町」は女房の悋気を題材にした噺だが、ここまで女房にヤキモキしてもらえるとはね。