ベートーヴェン:遥かな恋人に、シェーンベルク:架空庭園の書、ベルク:アルテンベルク歌曲集
クリスティアン・ゲルハーヘル、ゲロルト・フーバー
南ドイツの小都市シュトラウビング出身のバリトン歌手、ゲルハーヘル(生地近くのバイエルン語圏、ミュンヘンが活動拠点ということもあり、本来はゲアハーエアと書かれるべきなのでしょうが、日本ではゲルハーヘルが通名となっています)。
【ウィーン古典派&新ウィーン楽派】
最初に置かれたベートーヴェンの『遥かな恋人に』は、まとまった単位の歌曲で流れを形成することにより、情感表現のいっそうの深まりを狙った「連作歌曲」の最初の傑作といわれる作品で、シューマンにも大きな影響を与えたことでも知られています。
アルバム中央に置かれた『架空庭園の書』は、シェーンベルクの初期無調作品であるほか、そのバビロンの空中庭園が舞台という題材のユニークさも印象深い傑作。通常は女声に歌われることが多い作品なので、バリトンでの歌唱という点も注目されるところです。
続く3曲は、様々な技法に通じた円熟のハイドンによる「クラヴィア伴奏による歌曲集」から選ばれたもので、伴奏まで豊かな表現力を備えていることでも知られる作品ながら、とりあげられることの少ない曲でもあるので、今回の録音の登場は貴重。
最後に置かれた『アルテンベルク歌曲集』は、『架空庭園の書』の3年後に書かれた若きベルクの作品ですが、シューマンの影響も受けた世紀末的な美しさを持つ作風を師のシェーンベルクは好まず、初演されたのはベルクの死からずいぶん経ってのことでした。この曲も、通常は女声に歌われることが多い作品なので、バリトンでの歌唱は歓迎されるところです。
【ゲルハーヘルとフーバー】
ウィーンゆかりの音楽を集め、シューマンに影響を与えた作品に始まり、シューマンから影響を受けた作品に終わるこのアルバム、伴奏は長年コンビを組んできたゲロルト・フーバーが受け持っています。
フーバーはゲルハーヘルと同じ1969年に、同じシュトラウビングに生まれたピアニスト。これまで数多くのアルバムで見事に息の合った演奏を聴かせてきましたが、今回はピアノが大活躍する作品が多いので、その貢献度に期待が高まるところです。
一方、軽快な動きも得意とするゲルハーヘルの歌は、細部まで克明な表現にも定評があるので、これらの多彩な作品から、それぞれの魅力を縦横に引き出してくれるものと思われます。(HMV)
【収録予定曲】
・ベートーヴェン:連作歌曲『遥かな恋人に』 Op.98
・シェーンベルク:歌曲集『架空庭園の書』 Op.15
・ハイドン:12のクラヴィア伴奏による歌曲集第1集〜『不幸な恋の慰め』XXVIa-9
・ハイドン:12のクラヴィア伴奏による歌曲集第2集〜『宗教的な歌』Hob.XXVIa-17
・ハイドン:12のクラヴィア伴奏による歌曲集第2集〜『人生は夢』Hob.XXVIa-21
・ベルク:アルテンベルク歌曲集 Op.4
クリスティアン・ゲルハーヘル(バリトン)
ゲロルト・フーバー(ピアノ)
録音時期:2012年1月
録音場所:バイエルン放送スタジオ
録音方式:デジタル(セッション)
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最高の音で楽しむために!
最高の音で楽しむために!
全曲、日本語のオリジナルでまとめた第2作。哲学的意味を深読みできそうな歌詞が印象的な「庭園」、ヴォーカルに加えてピアノを中心としたアコースティックなサウンドもキャロル・キングを思わせる「パスポート」、ハーモニーから浮遊するサビ・メロが新鮮な「貝がら」、曲調が確信に満ちた歌詞にぴったりで胸に染みる「遂に」などがいい。