9・11の同時多発テロは世界の仕組みを大きく変えた。アメリカの単独行動主義の結果、国際規範は権威を失い、国際法秩序は崩壊の危機に瀕している。そしてアメリカ国内でも、対テロ戦争の「戦時下」にあるとの理由で、憲法に保障された自由は制限され、国民への監視は強められつつある。「文明」の内部に生息する「野蛮」は世界の秩序をどう変えようとしているのだろうか。アメリカニズムの来歴と新たな現象を分析し、その未来を占う。
「西欧近代とは何か?」だれもが疑わなかった理想社会に齟齬が生じはじめた。その現実を前に、再認識を余儀なくされている「近代」の意味。自由、平等、民主主義、市場経済…アメリカが掲げる輝かしい「文明」は、同時に形式的な官僚主義、空虚なニヒリズムを生み出した。信ずべき確かな価値を見失い、茫然自失する私たち。人類が獲得した果実ははたして「進歩」だったのか。ホッブズ、ルソー、ウェーバーなど、近代を決定づけた西欧思想を問いなおし、現代文明の本質と危うさに真っ向から迫る新しい文明史観。
第一次大戦を境に幕を開けた「現代」。西欧の凋落を背に、自由・民主主義のアメリカ、社会主義のソ連、そしてファシズムが「世界」を動かす。二十世紀の挑戦、それは新しい価値と希望の創出だった。しかし、私たちの不安は消え去らない。ニヒリズムから逃れる術はないのだ。それに気づいたとき、勝ち残ったアメリカ文明の欺瞞が見えてくる。ニーチェ、ハイデガーの鋭い指摘を踏まえ、大衆化される現代社会の本質と危険性を暴き出す。独自の歴史観と広角な視点で時代の見取り図を提示する、佐伯啓思の「現代文明論」講義・完結編。
無縁社会の何が悪いのか。遁世も悪くない。「ポジティブ」がそんなに善いのか。格差是正なんて欺瞞だー。権利や豊かさや便利さを追求し「幸せになるべき」と刻苦勉励してきたはずの日本人が今、不幸の底に堕ちている。大震災、政権交代、「正義論」ブームなど近年の出来事を稀代の思想家が厳しく見つめた時、偽善の殻に包まれたこの国の正体が露わになる。柔らかい筆致の中に、日本人の禍福の真理が詰まった至高の啓蒙書。
何を信じたらよいか、何を信じるべきか。景気回復、東京五輪など楽観的ムードが漂う中、日本人の精神に何が起きているのか。「アベノミクス」という虚構、「憲法」という誤謬、「復興」という矯飾、「天皇家」への警鐘…大震災後の出来事から表出する国家のメルトダウン。民意や国民主権という幻想の下、幸福を一途に追求してきた日本に今、民主主義の断末魔が聴こえる。稀代の思想家が真理を隠す「偽善の仮面」を剥ぐ。
資本主義をもうやめてみたら…。経済成長と物質的豊かさ、世界での地位を追求してきた戦後の日本は、なぜ、こんな奇妙な社会になったのか。「“価格破壊”と“消費者絶対主義”の大罪」「地方創生で失われるもの」「朝日新聞の歪んだ戦後認識」「トマ・ピケティと福沢諭吉が示す禍福」「ITと金融がもたらす人間破壊」…稀代の思想家が、日々のニュースの本質を鋭く衝き、資本主義の限界と醜態を、次々と浮かび上がらせる。
「民主主義を守れ」と叫ぶ人がいる。「憲法を守れ」と怒る人がいる。だが、われわれは「民主主義」「憲法」を本当に考えてきたのか。それらを疑うことをタブーとし、思考停止を続けてきただけではないのか。戦後70年で露呈したのは「憲法」「平和」「国民主権」を正義とする民主主義の欺瞞と醜態だったー安保法制、無差別テロ、トランプ現象…直近の出来事から稀代の思想家が本質を鋭く衝く。知的刺激に満ちた本格論考。
保守論壇の新たな地平を切り拓くオピニオン誌座談会 安保・歴史・憲法論を歪める「甘え」の構造
国家観喪失者たちの虚妄を撃つ 櫻井よしこ/佐伯啓思/百地 章
南シナ海緊迫! 米軍艦「突入」の行方と先鋭化する日米VS中露新冷戦 湯浅 博
【特集 安保法制、次は核と憲法だ! 】
あんなに大騒ぎしたのに、こんなにショボい安保法制 潮 匡人
中国・ロシア・北朝鮮…日米の最大の脅威は核軍拡だと銘じよ 日高義樹
日本の核武装を可能にするのは何か〜60年代の蹉跌を教訓に 東谷 暁
【連載 近代以後】準戦時下! 核不均衡を乗り切る国家理性 古田博司
9条こそ憲法違反である ケント・ギルバート
【特集 「南京」と堕ちたユネスコ・国連】
歴史戦争の敗北はなぜ繰り返されたか 高橋史朗
登録資料・中国版「アンネの日記」自体が「大虐殺」不在の証拠だ 藤岡信勝
習近平も信じない「大虐殺」を許した外務省の大罪 阿羅健一
日中共鳴の「南京大虐殺」捏造史 本誌編集部
【連載特別版】「南京」登録で中国に説教した朝日社説の噴飯 石川水穂
【連載特別版】習近平、プーチン…独裁者が主役づら、国連に未来なし 島田洋一
「杉原千畝」記憶遺産申請に潜む危険 本間一誠
新章スタート! 日本はいかに「侵略」されたのか 第4章 欧米の太平洋侵略と江戸時代の日本1(通算第15回) 西尾幹二
安倍談話で議論呼ぶ満州事変と不戦条約の考察1 福井義高
【対談】日本語が「終わる」時代に 長谷川三千子/ 小川榮太□
北朝鮮産松茸の不正輸入は止まったか 西岡 力
「地方創生のトップランナー」福岡市の新たな挑戦 高島宗一郎
凶悪化する中国のウイグル弾圧から目を背ける人々へ ラビア・カーディル
【特集 家族の復権】
報ステのスポンサー降板に同性婚・夫婦別姓…
軽佻浮薄な世の「自由」に異議アリ! 高須克弥/八木秀次/細川珠生
「1億総活躍」では人口減少は止まらない
出生率向上に必要なのは伝統的拡大家族の再生だ 加藤彰彦
同性婚は子供のためになるか
夫婦別姓、180日再婚禁止廃止…民法議論に欠けていること 池谷和子
「女性が輝く社会」に隠された嘘 小浜逸郎
辺野古取り消し、国連演説…翁長沖縄知事、唯我独尊の代償 仲村覚
ほか
21世紀のよりよい社会実現のための提言誌【総力特集】米中対決
◆ジャパン・ファーストの時代 佐伯啓思
◆台湾海峡危機の再来 福島香織
◆トランプ劇場に振り回される中国 矢板明夫
◆南シナ海ではアメリカが劣勢 北村 淳
【特集】韓国よ、どこへ行く?
◇安倍首相にはじき飛ばされる韓国 屋山太郎
◇朝鮮半島を襲う米中の揺さぶり 長谷川慶太郎
◇「蝙蝠外交」がもたらす経済損失 渡邉哲也
○トランプ対ハリウッド 村田晃嗣
○「ヤルタ密約」英国の疑念 岡部 伸
○今、和歌に表現される両陛下の〈ご思想〉 秦 澄美枝
○養殖水産業こそ地方再生の要だ 有路昌彦
○日本経済に吹く歴史的追い風 武者陵司
○たばこと生きる力 畑 正憲
○「人間企業」が起こす奇跡 野中郁次郎/田村 潤
○第12回日本貿易会賞懸賞論文 審査結果発表
○オープンガバナンスの時代へ 宇野重規
○伝統精神の正しい復興を 松下幸之助
甲骨文字を読める人が少ないのは、甲骨文字に対する印象以外にも原因がある。それは、日本語で書かれた入門書が存在しないことである。甲骨文字を文字の単位で解説した書籍はそれなりにあるものの、文法にまで筆をのばして実際に文章を読めるように解説したものは見当たらない。そのためだろうか、中国史や中国文学を専攻する大学生が甲骨文字の研究を始めても、早々に挫折するケースが目立つ。著者は甲骨文字の研究に携わる者として、こうした現状を前々から不満に思っていた。それが動機となって執筆したのが本書である。そういうわけで、本書は、一般読者にむけた甲骨文字の解説書であると同時に、本邦初の甲骨文字研究の入門書としても機能するような構成になっている。
現代われわれが使用している漢字は、古代中国で生まれた甲骨文字を直接継承している。では、その文字は、どんな世界・どんな社会・どんな信仰において書き記されたのだろうか?甲骨文字の成り立ちや読み方を解説しながら、古代文明の姿を覗く。日本語で読める甲骨文字&殷王朝史の最先端の研究を紹介。
何かがおかしい。「嫌な感じ」がどうにも消えない。カリスマが現れても新政府ができても高邁な理想を掲げられても、絶望的いらだちが治まらないのは、なぜなのか?橋下現象、政権交代、国境騒乱等混沌の真因はどこにあるのか?維新、大戦、高度成長期等の転機から自由、平等、民主、経済成長、ヒューマニズムの追求こそが幸福であるという、この国が負わされた近代主義を徹底的に懐疑する。稀代の思想家からの鋭い一撃。
西欧近代は、私たちに光をもたらしたのか?ホッブズ、ルソー、ウェーバーなど、近代を決定づけた西欧思想を問い直し、現代文明の本質と危うさに真っ向から迫る。自由、平等、民主主義、市場経済…西欧近代が築き上げてきた輝かしい「文明」は、しかし同時に空虚なニヒリズムを生み出した。信ずべき確かな価値を見失った人類は、これからどこへ向かうのか。
これはきっと、運命じゃない、けど。優等生な朝比奈さんと世間的には不良な誠也は、日本とアメリカという遠距離ながら交流を続け、さらに仲を深めていた。一方、誠也の後輩である結衣は大好きな先輩が幸せに向かう姿を喜びながらも、彼の幸せと自身の想いの板挟みにあっていた。そこには、過去に結衣が誠也と交わした、ある約束も関わっておりー三者三様の『今』と『過去』が絡み合い、歪で美しい青春を紡ぎだす。「私のことを、絶対に好きにならないで」不器用な彼らの贈る学園青春物語第二幕、開演。
身近に起こった奇怪な体験談を主題として純粋な“日本風”の怪談をゲーム化した「顔のない村」、ルールを極端にまで単純化し、物語としての完成度を追求した作品で、著者の代表作といえる「送り雛は瑠璃色の」、本文庫用に特別に書き下ろした作品で、“占い遊び”をゲームに取り込んだ実験的作品の「夢草枕、歌枕」を収録。
眼鏡型の携帯通信端末「サイグラス」が普及したある日、見習い板前・和泉淳のもとに謎の電話が入る。その警告を無視した先に待っていたのは、殺人未遂犯としての緊急逮捕だった。冤罪にもかかわらず逮捕時の映像がサイグラスで広まったことで、淳は執拗なネット攻撃の標的に。次々と起こる出来事に巻き込まれ、傷つく淳は、窮地から這い上がれるのか?若き鬼才がリアルに描く!近未来社会の恐怖。
十年ぶりに江戸に帰還した蘭方医・里永克生は、神薬と呼ばれる麻酔を使った治療に奔走していた。舌癌に苦しむ贅沢三昧の両替商、痔瘻をひた隠しにする人気噺家、梅毒で鼻を失った大名家のお世継ぎ…。冴え渡る医術と並外れた洞察力で、一筋縄ではいかない過去を抱えた患者たちの人生を蘇らせる。偏屈蘭方医の最後の活躍を描いた感涙の物語。