貨幣論なき貨幣経済が支配し、自由論なき自由主義、個人論なき個人主義が標傍される現代社会。そのなかで、さまざまな〈技術〉と〈遊び〉の〈演技する知識〉だけが饗宴をくりひろげているのが、ポストモダンの知の風景である。本書は、その饗宴の向こう側へ旅立つべく、知識論と社会論の交差する地点に、現代社会の〈隠された思考〉を浮かびあがらせんとする力作論考である。サントリー学芸賞受賞。
兄・頼朝に追われ、非業の死を遂げた源義経。悲劇のヒーローの最期のあっけなさは、名将といわれるにしては不可解なものだった。一方、大陸のヒーロー成吉思汗。彼も、成人し、出世するまでの生い立ちは謎に満ちている。病床の神津恭介は、義経=成吉思汗という大胆な仮説を証明すべく、一人二役の大トリックに挑む。歴史の空白を埋める著者渾身の傑作推理。
気鋭の社会科学者が提唱する、「現代文明」を考える視点。
小児麻痺、極貧という悲運を克服。命いっぱいに生きようとする若き事業家の経営語録。
シラケ、指示待ち世代、安定指向、マユ族…。若者を揶揄する言葉は多い。しかし、彼らは白けていなかった。指示も待たなかった。安定指向でも、マユ族でもなかった。92年夏、「東京工学院」の学生たちはひとつの講演会を成功させた。炎天下の52日間で、彼らを何を見つけたか。
本書は、長年多くの子どもたちの心理治療に携わってきた著者が、その経験を生かし、小児心身症を子ども特有の世界から臨床的にわかりやすく解説したものである。
冬から冬へ。めぐる季節に出会ったもの、見たもの、失うもの。どこか滑稽で哀しい夢のような日々、人々の孤独の風景を、鮮やかな文体で描いた会心のデビュー作。
鑑真の渡日も、最澄の入唐も、聖徳太子は中国の高僧慧思の生まれ変わりであるという「慧思後身説」が最大の動機であった。日本と中国の文化交流史の第一人者が、中国の文献をも発掘・駆使し、生き生きとした森のごとき虚像の驚くべき影響力を解明する。