「すべての人に生涯学習を」が重要であることはいまやだれもが認めるところである。しかし、それはまた同時に「生涯学習をすべての人に」とするのが実際には無理だといっているのである。ここ5年の間にOECDは教育に関して次の2つの課題に取り組んできた。まずは教育大臣が取り組むべき目標をより具体的に示すこと。そしてその目標がどのようにしたら各国でうまく達成されるのかを示すこと。本書では、これまで行ってきた作業の主要なところをまとめ、その上で将来取り組むべき課題が何かを明らかにした。OECD(経済協力開発機構)から発表される加盟各国の教育政策分析(Educational Policy Analyisis)2001年度版報告書の完訳である。
発展途上国の貧困を削減することは、現在、国際連合や世界銀行など国際社会における援助政策の最終目標に位置づけられている。その中で、貧困削減目標の核心の1つとして基礎教育の普及があげられ、教育に代表される人的資本蓄積に注目が集まっている。本書は、貧困削減の鍵として人的資本の蓄積が果たす役割や、その役割を効率的に実現するために望ましい政策・制度設計について、ミクロ・マクロ両面から理論的・実証的に分析したものである。特に、ミクロ計量経済学のアプローチを貧困削減政策に応用することで、理論的に厳密であるだけでなく、開発途上地域の家計や教育従事者の行動について客観的に分析することが可能となっている。
マサチューセッツ州初代教育長マンが、州の教育費削減案に抗し、教育の価値を金銭に換算して見せた時、新たな功利主義的教育観が誕生した。教育による労働者の資質・収入の向上、それに伴う一国の富の増進と階級闘争解消の効果等、教育の経済的生産性を公共性向上の裏づけに置くマンの教育観は、その後の米国教育思想のみならず、アメリカン・ドリームの原点とも言えよう。教育の公共性が問われる今、その思想の全貌と今日的意義を一次資料を通じ分析・考察した労作。
問題解決環境、すなわちPSE(Problem Solving Environment)とは、コンピュータやソフトウエアを使用するにあたって、特別の知識やスキルがなくとも利用できる「人にやさしいコンピュータのハードおよびソフトの環境を構築し、提供すること」を目的とする、シミュレーション科学・計算科学における新しい学問領域である。本書はそのPSEについて、基礎編では、PSEとは何か、PSEの考え方、PSEの可能性を中心に解説し、応用編では、PSEのさまざまな分野での実際問題への適用例(Grid、可視化、シミュレーション、エンジニアリング、バイオ関連など)を紹介する。人にやさしいコンピュータのハードやソフトの重要性がますます高まっている昨今、PSEの見方・考え方がいかに求められ、大切であるかを学ぶことのできる本邦初の解説書である。
『小児糖尿病ー治療と生活』の改訂版。新しいインスリン製剤の利用や、自己血糖測定器の改良を踏まえて、基本的なことを押さえ、器具の改良によりやさしくなった注射手技に関する点を簡略化。新しいインスリン製剤に関しては、ポイントのみを整理して記載している。
本書の目的は、英国の金融サービス・市場法から、われわれの金融サービス・市場法に必要な消費者保護のための規制のあり方を学ぶことにある。英国では日本と同じ頃金融制度改革に着手し、すでに金融サービス・市場法が施行されている。金融消費者の保護を規制目的の一つに掲げ、さまざまな斬新な施策を矢継ぎ早に打ち出し、消費者の信頼を得ている。本書は英国金融サービス・市場法の消費者保護に直接関連のある部分をピックアップし、英国の成功例から学び、われわれの金融サービス・市場法に取り込むことに的を絞っている。日本版金融サービス・市場法はどうあるべきか、何をどう定めたらよいかを消費者の目線で考える。
学習への需要がますます高まるにつれて、OECD加盟国は、より広範囲に及ぶ教育と訓練の機会を幼児期から成人期にいたるまでの生涯を通じて提供できるように努力している。また、資源を効率的に活用し、最も不利な人々に機会を提供するべきとの社会的圧力もある。本書を構成する5つの章は、これらの課題の克服のための方法について、最新の国際的な実践をもとに分析している。
本書の構成は、性暴力の「理解」から始め、査定、治療教育について述べ、最後に治療事例を掲載する。臨床や教育の現場での実践に参考になるよう、できるだけ具体的でわかりやすい記載を心がけた。
本書のテーマは、シナリオの開発法と、政策や実践が直面する課題を方向づけるためのシナリオの活用法である。各章では、学問的に裏づけられた見解と応用可能な大変実践的なヒントが提供されている。本書は、教育を長期的な視点から考えようとする人々、親や教師、地域の指導者や教育管理職を含む学校関係者、政策の決定に関わる人々に新たな視点を提供するものである。
圧倒的な非対称性をもたらすグローバル化世界において市民の果たす義務とは?シチズンシップ研究の新しい地平を切り拓く、エコロジカル・シチズンシップに向けて。
大規模なキャンパス計画からサテライトまで、さまざまな学部を網羅した施設計画に、耐震改修事例、学術交流館、学生会館、セミナーハウスなど大学ならではの施設を加えて、23事例を収録。
学校で教える知識や学校組織がすべての者に合う「フリーサイズ(one-size-fits-all)」のものと考えるアプローチは、個人のニーズや知識社会全体にはうまく適合しないという認識が高まっている。本書では、「個別化」した教育や公共サービスの集団的な提供の可能性が、現在の画一性を打開する方途として広範に叙述されている。個別化の方向へ漸次移行していくことの重要性は、第一線の専門家であるデイヴィド・ホプキンス教授によって、本書の序章で述べられている。
日本で最初の『環境経済学』として刊行されて以来多くの読者を得た本書は、その後18年の間に劇的に展開した環境問題をも含めて体系的に論じるために、横組の新版として生まれ変わった。90年代以降の環境問題の本質と経済のグローバル化との関係、21世紀の経済成長の主役であるアジア・中南米で深刻になっている公害・環境問題を考察の正面に据え、さらに今後日本の環境政策の中で最も重視すべきアメニティ対策を、公害と連続した視点で濃密に論じる。
10年に及ぶ資料収集・現地訪問・実態調査に基づき、仏独英等の学校には教科学習以外の役割はないという、わが国に広くみられる既成観念を打破し、それら諸国で、教科においてのみならず教科外活動を通じても多彩に展開されている、社会性を育て市民性のスキルを培うための教育の実態研究を通じ、今日のわが国の教育に大きく示唆する7つの具体的提言を行う労作。
教師の「能力・専門性」を問う。今日の激しい「教育改革」時代、教師はどのようにして自己の「教職アイデンティティ」を確保し、生徒の前に立ち続けるのだろうか。3年間の比較・調査実証・歴史研究と、締めくくりの国際シンポジウムの内容を収録。