怪奇小説の真髄は短篇にあり、醍醐味はその語り口にある-一瞬の怪異も鮮やかなアスキス女史の佳品を筆頭に、狂気と超自然のあわいを描いたギルマンの逸品など、通にして手練の三人が選り抜いた、悠揚迫らざる古典女流の十二篇。趣向を凝らした怪談噺の数々、恐怖の愉しみに舌鼓をうたれんことを-。
ーシルヴィアの悪夢は現実のものとなった。将来を約束していた恋人が溺死したのだ。そのときからだった。否定しようのない霊能力が発揮されはじめたのは…(「頭痛と悪夢」)。-’98年度MWA賞短編部門候補作「ダヴィデを探して」を含むスカダーもの3編のほか、軽妙なタッチで読者を楽しませてくれる泥棒ローデンバーものなど13編を収録。作品の幅の広さと、変化に富むシリーズものに冴えをみせるブロックの、上質なオリジナル短編集。
弁護士藤岡は学生時代、女に乱暴を加える男を投げとばし死に至らしめてしまう。同伴の友人はその場からの逃走をすすめた。長い逃亡生活の末、仲介する男から藤岡信夫の戸籍を買い、独学で司法試験に合格し弁護士を開業する。そんな或る日、本物の藤岡(今は馬淵)が現われ脅迫する。その後も彼の扱う民事裁判の周辺から過去に繋がる様々な人物が恐喝者となって現われる。サスペンス巨編第一弾。
闇と光の交錯する混沌都市・新宿に聳え立つ超高層ビル。ハイテクに支配されたその摩天楼には、連続殺人を謀る邪悪な意志が潜んでいた。現代文明の作った巨大な棺桶の中で、異能の中学生四人組が未知の科学力を武器に、見えない敵に戦いを挑む!犯人の正体は?目的は。
夢のなかに封印された娘の記憶を解く鍵はー。同心、祖式弦一郎が江戸の闇に蠢く悪を斬る時代活劇シリーズ。
直木賞作家の最新力作恐怖の秘密生物兵器を追跡する男。瞬時に人間を怪物化する“生物兵器”の試作品が街に流れた。それを追求するのが男の任務だった。
むむむ、一寸法師が実は大男だったとは…。子なしの爺と婆が住吉明神に授けてもらった男の子・仰天は、半年もたたないうちに身長2メートルの若者になっていました。それだけではなく、畑仕事も立派にこなすし、読み書きや算術を教えれば誰よりも呑み込みが早く、全く、村一番の若者です。そんな、仰天に爺と婆の期待はエスカレートするばかり。「きっと京へ上って出世するぞ」と教えることを増やします。悩んだ仰天は住吉神社にお願いをしました。「わたしを小さくして下さい」。
〈進化し続けるウイルス!〉若き遺伝子学者・南方彩乃は慄然とした。そして今、驚異的速度で世界中に蔓延する死亡率90%の“ルシファー・ウイルス”根絶のため、各国の頭脳が筑波学園都市に結集した。はたして変幻自在のウイルスを撲滅する秘策はあるのか。やがて彩乃は、抗ウイルス剤として一万年前の巨大環状列石に使われていた奇妙な鉱石に目をつけた…。
大検校宮城道雄の“事故死”に深くかかわった1人の女の、苛まれ、焙り出されるように道から外れた“狂いの記”。
不可視の内部を持つ者同士が頻繁に接触し、さまざまの関係を取り結ぶ複雑で流動的な現代社会では、コミュニケーションは見せかけや偽装などのレトリックを必要とする。しかし、このような社会を思想史的に展望するならば、超越的な理念、懐疑と自省を無視できなくなるだろう。