不敵な面構えのわりに、音楽は丁寧で大人しい。もっと若々しさを……などと思ってしまうのは、若さを失いつつあるもののひがみか。それでも、選曲にせよ音楽にせよもっと冒険が欲しい。個性の強い共演者とのセッションで光り輝くタイプのように見受ける。
現代の奇跡とも言える驚異的な超高音を持つロッシーニの名手マッテウッツィが昨年6月に東京で行なったリサイタルのライヴ録音。ベルカントの難曲を次々に歌い繋ぎ、最後は「連隊の娘」の至難なアリアを3点fで締めくくり、聴衆を興奮の坩堝に巻き込む。