舞台はナポリ、寡黙で美しい少女と若者の恋を幾重にも取り巻く不可思議な事件。甘く優しい小鳥のさえずりとともに、世にも悲しい物語が始まる。
しあわせそうな新婚カップルを見つめながら、ジェスは意味もなく込み上げてくる涙を必死にこらえていた。古くからの友人の結婚披露パーティーで、すっかり落ち着きを失っているジェス。そのようなを、じっと見つめる男-ギャレス・セイモア。ギャレスはジェスが新郎のスコットに振られたのだと信じ込み、一方のジェスはギャレスが新婦クレアに失恋したのだと思い込んでいた。やがて、ハネムーンに出かけるしあわせなふたりを見送りに出たジェスめがけて、新婦のブーケが投げられた…。
キエンは何度も死地を生きのびた。だが、戦争という苛酷な体験は、彼の心身に癒しがたい傷を残した。凄絶な戦闘、ジャングルをさまよう死者の霊、部下たちの気高い自己犠牲…痛切な思い出の数々が彼につきまとう。戦後のハノイに生還して、キエンは奔放で情熱的な同級生フォンと11年ぶりに再会する。かつて二人は狂おしい愛で結ばれていたのだった。だが今は、芸能会の放恣な生活に身を委ねるフォン。ここにも戦争の深い傷あとがある。極限状況における人間の悲劇性を見てしまった二人に、はたして青春の愛は回復するだろうか?ヴェトナム作家協会賞受賞・英インデペンデント紙海外小説賞受賞。
この法話集は、この15年の間に、ハワイ別院の月報『ともしび』に書いたものの中から選んだものです。漢字になれていないハワイの人たちのために、その時々のトピックスをとりあげ、身近な処から仏教をやさしく説いてみたいとうことから、まとめてみると、テーマや文体に不揃いが目立ちますが、ハワイ仏教の現実を知ってもらうことにもなると思いますので、あまり手を加えず載せることにしました。
独身の実業家、五十嵐恭が毒殺された。容疑がかけられたのは、残された三人の愛人だった。相続権はなくても、彼の子供を妊娠していれば、莫大な遺産が転がり込むのだ。十津川警部と亀井刑事は愛人の一人、モデルの藤原さつきを追うが、さらに、第二、第三の事件が起こり…。やがて十津川は、裏で糸を引く狡猾な真犯人の存在に気づく。手に汗握るサスペンス長編。
親族を殺した北条時頼、殉死の予行演習をしていた乃木希典、乞食願望を持ち続けた松尾芭蕉、上官の罪を背負った青年学徒、そして『東京だョおっ母さん』のコースを歩いたわが母…日本人の底流に流れる「悲しみ」の旋律を描いた渾身の作品。
「お姉ちゃんは最高におもしろいよ」と叫んで14歳の妹がしでかした恐怖の事件。妹を信じてはいけないし許してもいけない。人の心は死にたくなるほど切なくて、殺したくなるほど憎憎しい。三島由紀夫賞最終候補作品として議論沸騰、魂を震撼させたあの伝説の小説がついに刊行。
4人の女性の苦しみと悲しみの物語を修辞批評学を駆使して展開し、この悲劇の情景を再現して現代の私たちに悔改めを迫る。
音楽家と恋をめぐる、三浦淳史さんのしゃれたエッセイ、宮本英世さんの解説、二人でたのしめるCDブックス。
先生は、じつにあっさりと愛といいました。先生の口から出たその言葉は、少しも手垢にまみれてなく、愛そのものの純粋さと美しさ、さらには暖かさを含んでぼくに伝わってきました。
「星とせせらぎの詩人」と呼ばれ、「第二の八木重吉」とも呼ばれ、日本のキリスト教を代表する詩人島崎光正が、生涯をかけて書きしるした数多くの詩から、みずから厳選した。
本書は縄文人の無垢な愛との合体を熱望し続ける詩人・宗左近の祈りの物語である。美事な人生観・宇宙観の織りなす生命讃歌のエッセイ集。
心によりそう名曲を、くつろぎながら楽しめるCDブックス。ヴァイオリニスト・千住真理子さん、ピアニスト・中井正子さんのエッセイ、そしてモーツァルトの手紙から…味わいのある一冊。
母親に捨てられ、義父の借金のカタとして金融業を営む国枝に引き渡された遙。その美しく儚げな容貌で借金返済のために売春を強要されてきた。男達からの陵辱に耐えるため、固く心を閉ざしていたはずなのに、気まぐれに自分を抱いた国枝の言葉に何故か傷ついてしまう。端整な顔立ちだが冷たい目をした国枝の冷酷さに怯えながらも、垣間見える彼の孤独と優しさに遙の心は揺れ動き…。