ドナルド・キーン氏の退官記念の講演のため再訪したニューヨーク。日本人も忘れてしまった日本を「発見」した研究者たちとの触れ合いが楽しい。ブルックリン橋のたもとで「アメリカ文明」の勃興を思い、世界中からの移民を呑み込んで膨れあがるマンハッタンを歩きつつ「アメリカのおもしろさは、変化である」と言い切る。同国の歴史を変えた「9・11」に先立つこと約9年の旅だった。
“ゴールデン☆ベスト”シリーズの久保田早紀編。デビュー曲「異邦人」から「百万本のバラ」まで、久保田早紀の全シングルのAB面収録曲を収録した、コンプリート・シングル・コレクション・アルバムだ。オリエンタルで神秘的な魅力が詰まった一枚。
塗ったペンキが垂れ下がってできる不規則な模様、カップから立ち昇る湯気が液面上に描く亀甲模様、雪の結晶が成長するときの樹枝状の模様。つながりのなさそうなこれら現象にじつは共通するものがある。不安定な状態が安定な状態に落ち着こうとする変化の過程で過渡的に現われる模様なのだ。ありふれた現象ながら、意外にも古典的手法では説明がつかないという。古典理論の破れ目から見えてくるものとは何か?ほかに、ゴルフのバック・スピンはグリーンの表面状態に無関係という話、昆虫の羽ばたきの最適解からわかる、うちわの大きさ・材質の最適解など、話題は多彩。
エレファントカシマシの日比谷野音ライヴ20周年を記念して、宮本浩次の選曲・監修によってレーベル別にリリースされるベスト盤。本作はPONY CANYON篇で、その在籍時からセレクト&リマスタリングされた楽曲を収録する。
関西の城下町に生まれ育った著者が武蔵野の一角に住み着いて早数十年ー東京はふらりと歩くのに格好の町だ。角を一つ曲がれば江戸や明治と対面し、地方都市が失つてしまった年中行事が今なお生きている。足の向くまま歩けば、祭りの熱気に行き会い、懐かしい商店街に誘われ、荷風が排徊した路地裏に迷い込む。しめくくりは、居酒屋であれやこれやともの思う贅沢な時間ーひとり散歩の愉しみ、ここにあり。
フォーライフ設立1周年を記念して、小室等、吉田拓郎、井上陽水、泉谷しげるというフォーク界の大御所4人が集結した1976年のクリスマス・アルバム。クリスマスの定番曲を個性的に聴かせるほか、オリジナルも収録した贅沢な一作だ。
文具メーカー勤務のサラリーマン・上野原が、勤務中や休日に歩いた都内の風景の数々。北品川、目白、吉祥寺、井の頭公園…。ふと目にとまった出来事を淡々と描くことが、ここまで上質な人間ドラマを生み出した。「孤独のグルメ」の黄金コンビが贈る、極上のエッセイ風コミック。
熱したアイロンを布地に当てれば、熱さは裏側に伝わる。もし服地に霧を吹けば温度はより下がり、肩など丸みのある箇所も裏から手で直接支えられるのでは?ロゲルギスト少年のその推論は大きくはずれた。あやうく参事になりかねない出来事を通し、高熱水蒸気の威力をまさに肌で学習した「しみ抜きとアイロンかけ」。ほかに、魚が銀色に輝く仕組み、コマが首振りから起ちあがり直立する過程の力学、サーフィンの話題から消波・発電のアイデアなどなど。実験をまじえながら常識的な予想を小気味よく履していく。楽しみながら議論が深まっていく科学エッセイ。
片寄ったものの見方を「色眼鏡で見る」という。カメラや望遠鏡は当然、形や色の歪みを極力避ける。しかしヘルムホルツがバイオリンの弦の振動のようすを可視化した光学器械は、振幅方向のみ、つまり歪みを強調する振動顕微鏡だった。ときに色眼鏡をかけ物を処理するのも大人の力量という含蓄のエッセイ「心眼を肉眼に」。ほかに、どう考えても不思議なエッシャーのだまし絵の謎とき。蚊取線香にクリップを留めるとそこで火が止まる。そのクリップの大きさは?などなど。初級者には多様な話題のおもしろさが、上級者には噛むほどに伝わってくる味わい深さが魅力の科学エッセイ。
ことわざを通して、その国の暮らしと文化が見えてくる。中国の日々の暮らしのなかで使われることわざを取り上げ、言葉の成り立ちや用い方を紹介するとともに、ことわざに寄せる人々の思いを描き出す。
宇宙からあなたに届くメッセージ、サイレント・コーリングー。新たな人生の扉がここにある。
演歌、歌謡曲界をリードしてきた八代亜紀の、デビュー40周年を記念した6枚組アルバム。数々のヒット曲はもちろん、ジャズやJ-POPのカヴァーまでの幅広い楽曲を、ハスキーな“八代節”で聴かせてくれる。