ふとしたいたずらがもとでこびとにされてしまったニルス少年は、ガチョウに乗ってガンの群れといっしょにスウェーデン縦断の旅をすることになります。スウェーデン児童文学の古典を、原書のさし絵を豊富につかい完全訳で贈ります。小学上級以上向き。
原始仏典の中にはブッダの生涯はほとんど記されていない。だが彼の死は、信徒にとって永久に忘れえぬ出来事だった。パーリ語本『大パリニッバーナ経』の中に、ブッダの死とその前後の事件が詠歎をこめて語られている。本書はこのパーリ語本を底本とし、サンスクリット本、漢訳本を参照して邦訳。巻末に周到詳細な注を付した。
大吉田藩七十万石の正嫡順二郎は、四歳の時、側室一派の陰謀によって廃嫡され、国許で幽閉同然の生活を送る。ところが、二十四歳になった時、世継ぎとされていた側室の子が突然死亡し、順二郎は隠密裡に江戸表へ迎えられる事になるが…。お家騒動の渦中に投げ込まれた世間知らずの若殿の眼を通して、現実政治に振り回される人間たちの愚かさとはかなさを諷刺した長編小説。
平穏な日々の内に次第に瀰漫する倦怠と無力感。そこから脱け出ようとしながら、ふと呟かれた死という言葉の奇妙な熱っぽさの中で、集団自殺を企てる少年たち。その無動機の遊戯性に裏づけられた死を、冷徹かつ即物的手法で、詩的美に昇華した太宰賞受賞の表題作。他に『鉄橋』『少女架刑』など、しなやかなロマンティシズムとそれを突き破る堅固な現実との出会いに結実した佳品全6編。
新発明の設計図を携えて、息子の元に旅立ったロンドンの富豪、ジョン・マギル卿が北アイルランドで消息を絶った。しばらくして、彼の遺体が息子の家の庭から発見されるが、息子にも他の容疑者たちにもアリバイがあった。失踪直前のマギル卿の不可解な行動、謎の男、アリバイの秘密など、もつれた糸をフレンチ警部は着実に解きほぐしていく。著者の作品の中でも一、二を争う名作。