昭和十六年十月、極秘のうちに誕生した、不沈戦艦「大和」の予行運転が初めて行われた。同十二月、太平洋戦争突入。そして戦況が悪化した昭和二十年四月六日、「大和」は三千三百三十三名の男たちを乗せ、沖縄への特攻に出撃した。日本国と運命を供にした「大和」の過酷な戦いと男たちの人生を、丹念に、生々しい迫力をもって描く、鎮魂の書。新田次郎文学賞受賞作。
沖縄への特攻に出撃した翌日、昭和二十年四月七日十四時二十三分、戦艦「大和」、米航空機部隊の攻撃により沈没。死者三〇〇〇余名。東シナ海の海底に散る…壮絶な「大和」の最期と生存者、遺族の戦後を描き切り、日本人とは何かを問う、戦後ノンフィクションの金字塔。
自然を破壊し人体を蝕む化学薬品。その乱用の恐ろしさを最初に告発し、かけがえのない地球のために、生涯をかけて闘ったR・カーソン。海洋生物学者としての広い知識と洞察力に裏付けられた警告は、初版刊行から四十数年を経た今も、衝撃的である。人類は、この問題を解決する有効な手立てを、いまだに見つけ出してはいないー。歴史を変えた20世紀のベストセラー。待望の新装版。
唇でふれる唇ほどやわらかなものはないーその瞬間、二人の絶望的な放浪が始まった。詩集『こがね虫』で詩壇にはなばなしく登場した詩人は、その輝きを残して日本を脱出、夫人森三千代とともに上海に渡る。欲望と貧困、青春と詩を奔放に描く自伝。
ユング、ガンディーが敬慕した20世紀最大の覚者ラマナ・マハルシ、その珠玉の教え。
一九七〇年の夏、海辺の街に帰省した“僕”は、友人の“鼠”とビールを飲み、介抱した女の子と親しくなって、退屈な時を送る。二人それぞれの愛の屈託をさりげなく受けとめてやるうちに、“僕”の夏はものうく、ほろ苦く過ぎさっていく。青春の一片を乾いた軽快なタッチで捉えた出色のデビュー作。群像新人賞受賞。
暗く重たい雨雲をくぐり抜け、飛行機がハンブルク空港に着陸すると、天井のスピーカーから小さな音でビートルズの『ノルウェイの森』が流れ出した。僕は一九六九年、もうすぐ二十歳になろうとする秋のできごとを思い出し、激しく混乱し、動揺していた。限りない喪失と再生を描き新境地を拓いた長編小説。
あらゆる物事を深刻に考えすぎないようにすること、あらゆる物事と自分の間にしかるべき距離を置くことー。あたらしい僕の大学生活はこうしてはじまった。自殺した親友キズキ、その恋人の直子、同じ学部の緑。等身大の人物を登場させ、心の震えや感動、そして哀しみを淡々とせつないまでに描いた作品。
御先祖を正しくお祀りするために。人間は死んでも死なないー死後の生活はかくの如く在る!人間・神の子、無限生命の立場からはじめて説き明される先祖供養の意義と実際のすべて。位牌・仏壇・神棚・お墓などの正しい祀り方は?祖先の宗教と和解するには?誰もが持つ疑問、悩みに懇切丁寧に答える宝典。
美しい日本語のリズムにのせて、人間の優しさと寂しさを、世界の本質を鮮やかに提示する阪田寛夫の豊穣なことばの宇宙。第一詩集から未刊詩篇まで、一三二篇を収録した珠玉のアンソロジー。
新宿歌舞伎町でホテルを経営している東浦は、不倫をネタに暴力団に脅され、ついにはホテルを乗っ取られてしまう。一方、広告代理店に勤めている藤崎は、失踪した妻の美和が売れない役者と心中らしき事件を起こしたことを新聞で知る。現場には謎のアドレス帳が…。二つの事件には、意外なつながりがあったのだ。現代を生きる男と女の愛と自由と孤独を描く、長篇ミステリー。
女王さまのため、きらめくクリスタル求め、アリたちは長く危険な旅へ。ところが、そんなアリたちのなかに、2ひきの、いけないアリが!クリスタルの山に魅せられた「いけないアリ」がくりひろげるシュールな大冒険。
夏休みに山ほど遊びイベントを設定しようとも、宿敵コンピ研が持ちかけてきた無理無茶無謀な対決に挑もうとも、ハルヒはそれが自身の暴走ゆえとはこれっぽっちも思っていないことは明白だが、いくらなんでもSOS団全員が雪山で遭難している状況を暴走と言わずしてなんと言おう。こんなときに頼りになる長門が熱で倒れちまって、SOS団発足以来、最大の危機なんじゃないのか、これ!?非日常系学園ストーリー、絶好調の第5巻。
伊丹の新酒を積んで江戸に向かったはずの新酒番船が消息を絶った。その船頭の息子と知り合った「かわせみ」の面々が心配するなか、父親の船頭が生還したとの知らせが。安心したのもつかの間、船頭は、再び海に挑む…。表題作ほか、全七篇を収録。美しい江戸の四季を背景に、人間模様を情緒豊かに描き出す不朽の人気シリーズ。
戦後日本の代表的な作家六人の短編小説を、村上春樹さんがまったく新しい視点から読み解く画期的な試みです。「吉行淳之介の不器用さの魅力」「安岡章太郎の作為について」「丸谷才一と変身術」…。自らの創作の秘訣も明かしながら論じる刺激いっぱいの読書案内。
現代の奇妙な空間ー都会。そこで暮らす人々の人生をたとえるなら、それはメリー・ゴーラウンド。人はメリー・ゴーラウンドに乗って、日々デッド・ヒートを繰りひろげる。人生に疲れた人、何かに立ち向かっている人…、さまざまな人間群像を描いたスケッチ・ブックの中に、あなたに似た人はいませんか。
『羊をめぐる冒険』から四年、激しく雪の降りしきる札幌の街から「僕」の新しい冒険が始まる。奇妙で複雑なダンス・ステップを踏みながら「僕」はその暗く危険な運命の迷路をすり抜けていく。七〇年代の魂の遍歴を辿った著者が八〇年代を舞台に、新たな価値を求めて闇と光の交錯を鮮やかに描きあげた話題作。