暖かな書斎の一隅で、白い砂粒が音もなく滑り落ちていく。この静謐を、知的観想の時を、わたくしたちはいつくしむ。砂時計は地球的時間の象徴である。夜明けとともに起き、一頭の獲物を得るまで狩りをした“アド・ホックな”行動様式の忘れ形見である。自ら作り出した歯車時計に支配される近代文明の逆説を、ドイツの文豪ユンガーは勁く静かに批判する。古今の文献を駆使して語る、ユニークな宇宙論。
国会議事堂、第一生命館、川奈ホテル…。近代日本の名建築をたずね、建物と、それをめぐる人間たちの姿を浮かび上がらせる。軽妙な筆致と豊富なカラー写真が評判のシリーズ最新刊。カメラとペンで追った名建築と建築家たちをめぐる物語。
『黒い時計の旅』は、フィリップ・K・ディックの『高い城の男』と並び称される“パラレル・ワールド”テーマの傑作である。1938年のウィーンのある夜、20世紀は一人の怪人物の手によってまっぷたつに引き裂かれる。歴史を切り裂いた怪物の名前は、バニング・ジェーンライト。アドルフ・ヒトラーのためにポルノグラフィーを書く男。そして、2つの世界を旅する男。彼の口から果てしない迷路のような物語が語られる。それは呪われた愛をめぐる“もうひとつの20世紀”の物語であった。平行してロシア系亡命者デーニア親子と謎めいた〈20世紀の見取図〉の物語、デーニアの息子マークの遍歴の物語が織り混ぜて物語られ、2つに切り裂かれた世界はふたたび重ね合わさって行く…。トマス・ピンチョン、ウィリアム・ギブスン等の作家たちから激賞されている現代アメリカ文学の新星、スティーヴ・エリクソンの代表作。
やって来ました今度は野獣の大草原。キリンに笑われ、ゾウには踏まれ、カバにかじられ、じわじわ進む。めざすは名峰、雪のキリマンジャロ!お待たせしました。「あやしい探検隊」シリーズ第5弾。
北アルプス飛騨側をパトロールし、日夜、登山者の安全を護っている山男たちがいる。3000メートルの交番に勤務するお巡りさんたちが、命懸けの活動を通して得た喜び、あるいは悲しみを、安全登山の願いを込めて綴る。
春、野はスミレやカキドオシなどの花々、みずみずしい草の緑、そしてきのこたちに鮮やかに彩られます。また秋には、色づいたコケモモの実、どんぐりや木々の落葉などとともに、きのこは森に入った私たちに素敵な風景を見せてくれます。本書は、そんなきのこのある自然の一画を、やさしく繊細なタッチで描いています。そして、8年間に描いた作品約500枚の中から画家自らが厳選した64枚の絵を、この画集にまとめました。
ロレックス、パテック・フィリップ、ブレゲ-。永遠の価値を放ちながら人生を刻む腕時計と、それを生んだスイスの風土と歴史。自動巻き、防水時計の開発の苦闘や、宇宙空間での絶望的事故から乗組員を救った一個の手巻き式時計の物語など、時計好きには面白さ絶対保証の一冊。
コオロギ類22種、ケラ1種、キリギリス類16種など鳴く虫の声と姿で、初夏から秋の草はらを賑やかに構成しました。
ASEAN諸国を立体的に解明。自然・文化・言語・宗教・国家形成の歴史と今日の経済発展まで、ASEAN諸国をまるごととらえた啓蒙書。
本書はニーチェ哲学の中心思想である永劫回帰思想を「啓蒙の弁証法」との対比、さらに「魔の山」に登場する人文主義者との対比により、鮮明に描き出し、それによりニーチェ哲学の全体像を捉える。そして、永劫回帰思想の中に啓蒙と神話の和合を展望し、その世にも不思議な臼く言い難い関係を見る。
冒険者とは、夢や謎や財宝や美しい姫君や凶暴な怪物を求めて、はるかな空の下、はてしない旅を続け、故郷を遠くはなれ友と歌と愛を心のささえにして、剣と魔法と自分の信念にまっすぐにつかえる、そういうものだとわたしマリリン・マリルーンは思う。そういう冒険者にわたしはなりたい。歌姫“銀のユナイア”の護衛を頼まれたマリリンと冒険者の仲間たち。ゾンビを操る死霊術師はどこに。そしてさらにしのびよる巨大な悪の影ー。はたしてマリリンたちは無事に歌姫を守りぬくことができるのかー。