タイムレコーダーの発明。懐中時計の大量生産化。鉄道時刻表の導入。夏時間をめぐる大論想。-19世紀アメリカ。それまでの自然や宗教に根ざしていた時間がすてられ、機械的なグリニッチ標準時が採用された。標準時という「新しい時間」の誕生が、人びとをどのように変え、やがては人間の生活を支配するにいたったかを丹念に掘りおこした、壮大な「時」の文化史。
ある日ふらっとやってきてそのまま居ついてしまった少女。いまでは一家は彼女のまわりを回る不思議な少女。家族の不思議。
人間は長いあいだ自然のリズムでくらしてきた。それがいつ、人工の時間をもったのか。物語や日記、さまざまなエピソードから、時計をつくりだした人間が、機械化社会をうみだしていく歴史の展開、さらにその時計にしばられている現代人への警告をこめて、人びとの生活と時計とのかかわりあいを考える。
死刑囚・江島正雄の刑執行が確定したことを立会検事・柳瀬寿彦から聞いた警視庁刑事・芹沢孝包は霖雨の町へ走り出た。3年前、一家惨殺事件に捜査員として加わった芹沢は江島無実説を主張したが斥けられたのだった。芹沢の目的は真犯人を捜すこと。しかし残された時間は120時間ー。その芹沢を宮城テレビ編成部長・曲垣修造が追う。芹沢の決意が曲垣の心を揺り動かしたのだ。果たして法相が捺印した執行命令を覆せるかー。前代未聞の闘いに身を投じた男たちの心の闇を鋭くえぐる会心の長編ハードサスペンス。
ロンドンのビッグベンを象った大時計の完成式典で、針が十二時を指した時、仕掛け人形のかわりに死体が飛び出した。死んでいたのは奇矯な行動で知られる時計作家弥武大人。出馬を要請された作家探偵霞田志郎の苦悩を嘲笑うかのように、さらに殺人は続いた。地元有力者高野の屋敷で、大人作の巨大な砂時計の中から孫娘あずみの死体が発見されたのだ。やがて事件の背後に横たわる巨大な悪意に気づいた志郎は…。『上海香炉の謎』に続く人気本格推理シリーズ待望の第二弾。
わたしの命が育まれた未来社会。そこは死の商人が支配し、人間のつくりだしたクローン人間が無差別殺人を繰り返す悲惨な世界だった。そして、それをやめさせようと努力しているのが未来の徹さんの姿だった。そんな徹さんを愛するためにも、わたしの体から爆弾を取り除かねば…。でも、そんな技術は未来世界にも存在しなかった。絶望するわたしの前に現れた1人の眠れる少女。最後の希望は、この少女だった…。
わたしは、誰?どこからきたの?わたしを付け狙うサングラスの男は何者なの?記憶を失ったわたしを守ってくれる高校生の三人組。落ちこぼれだっていうけど、とても優しくて素敵な人たち。いつか、わたしは徹クンにひかれ、恋していた。でも、ダメ。愛しちゃいけない。恐ろしい自分の正体を知ったのよ。わたしは、徹クンを抹殺するために、未来から送りこまれた…だったの。
1986年に日本経済新聞に掲載されて好評だったコラムを中心にした随筆集。彫刻家でありながらエッセイストとしても知られた筆者はこのコラム執筆後に半身不随となり、右手の自由を失った。ここには病後に左手で描いたデッサンが添えられていてその力強さがたいへん印象深い。
大激動の時代!われわれは世界の動きに無縁ではいられない。国際政治アナリスト・高野孟が、マクロ的な視野から見透し、週刊プレイボーイに連載した国際政治情報分析の決定版がここに…。
『黒い時計の旅』は、フィリップ・K・ディックの『高い城の男』と並び称される“パラレル・ワールド”テーマの傑作である。1938年のウィーンのある夜、20世紀は一人の怪人物の手によってまっぷたつに引き裂かれる。歴史を切り裂いた怪物の名前は、バニング・ジェーンライト。アドルフ・ヒトラーのためにポルノグラフィーを書く男。そして、2つの世界を旅する男。彼の口から果てしない迷路のような物語が語られる。それは呪われた愛をめぐる“もうひとつの20世紀”の物語であった。平行してロシア系亡命者デーニア親子と謎めいた〈20世紀の見取図〉の物語、デーニアの息子マークの遍歴の物語が織り混ぜて物語られ、2つに切り裂かれた世界はふたたび重ね合わさって行く…。トマス・ピンチョン、ウィリアム・ギブスン等の作家たちから激賞されている現代アメリカ文学の新星、スティーヴ・エリクソンの代表作。
両親とはなれ、12歳の夏休みを、叔母さんの家族といっしょに、湖のコテージで過ごすことになった、パトリシア。ある日、床下にかくされていた、古い懐中時計を見つけたことから、ふしぎなできごとがはじまった-時計のねじを巻くと、そこには、12歳のお母さんがいた!自分と同じ、孤独な少女が-。現実の世界で、自分の気持ちをぶつけたパトリシアは、はじめてお母さんの涙を見た。1988年カナダ図書館協会賞受賞作品。小学校5・6年生から。
大野と秋山。ふたりの男性です。幼なじみの親友どうしです。ふたりともいま35歳です。彼らをめぐる20代からの物語、現在のありかた、そしてこれからの展望が、彼らを引っぱる女性たちをとおして、描いてあります。ショート・ストーリーの積みかさなりをたどっていくと、やがてひとつのまとまった広がりのなかへ導かれていきます。35歳、折り返し地点近辺での、生きかたのマニュアルです。
あなたの未来はどうなっているか!?誕生星座とホロスコープが告げる幸福へのパスポート。長崎オランダ村の天体時計はコンピュータの計算で、たちどころにあなたのホロスコープを作ってくれます。十二の星座と十の惑星が織りなす天体の音楽の楽譜、それがホロスコープです。あなたがホロスコープを手にしたとき、何に注意すべきか。その見方のコツは四つです。さて、その四つのコツとは…詳しくは本書をご覧ください。
ひたむきに生きてはいても、なぜか少しずつ、人生の軌道からはずれてしまう人たちがいる。水道局に勤務し、漏水探知の仕事をしている孤独な青年の愛と失意をとらえた「水の音」、幸せな結婚をしたのに、昔のクセからキャバレー勤めを知られ、離婚される女をユーモラスに描く「遅れた時計」、スリをやめることができない自分に絶望して死を選ぶ少年をみつめる「予備校生」など、人生の小宇宙を創り出す秀作10篇。