雷鳴とどろく嵐の夜に、見知らぬ男女が一夜をともにした。二人は素性を明かさぬまま、何かの束縛から放たれたように、熱く激しく愛し合った。互いの名前の代わりに歓びを声にして。そして翌朝、彼女は姿を消した。宇宙飛行士マイク・ライトにとって、それは好都合だった。厳しい訓練が始まれば、女性にかまけている暇などない。それに昨夜の思い出があれば、しばらくは耐えられるだろう。だが残念なことに、それも長くは続かなかった。今度は、恋という名の嵐が襲ってきたのだ…。
新しく赴任した滝昇の指導のもと、めきめきと力をつけ関西大会への出場を決めた北宇治高校吹奏楽部。全国大会を目指し、日々練習に励む部員のもとへ突然、部を辞めた希美が復帰したいとやってくる。しかし副部長のあすかは頑なにその申し出を拒む。昨年、大量の部員が辞めた際にいったい何があったのか…。“吹部”ならではの悩みと喜びをリアリティたっぷりに描く傑作吹部小説シリーズ第2弾。
エリーズは夫の葬儀のさなか、くずおれそうになるのをこらえていた。夫はエリーズを脅迫までして結婚へ持ち込んだものの、散財と浮気を繰り返したあげくに亡くなった。ローマに彼が購入したアパートメントを売却しなければ、明日からの生活にも困窮するだろう。途方に暮れるエリーズに、意外な人物が助けを申し出た。夫の雇い主で大企業の経営者ヴィンチェンテだ。危険な光を放つ彼の瞳に魅せられたように、エリーズはローマへ一緒に行くことを承諾してしまう。
大勢の同僚の前で元夫と熱いキスを交わすなんて!ハロウィーンのパーティ会場で、ナタリーは途方に暮れた。ひと月ほど前、小児科の研修医として働き始めた彼女は、新任の男性医師を紹介され、愕然とした。六年前に離婚したキットだったのだ。このキスで、隠していた二人の過去が噂になるのは必至だ。逃げるように会場を出るナタリーに、キットが言った。「君をひとりで帰らせるわけにはいかない」だめよ。今、送ってもらったら、誘惑に屈してしまう。元夫とよりを戻すことーそれは、身の破滅を意味するのだから。思いがけず再会した元夫婦の愛と苦悩の物語。聖夜にかなう願い事、サンタクロースからの贈り物は幸せへの再出発。
人でごった返すスペイン、マドリードの空港。搭乗便を待つメーガンは思いがけない人物にでくわした。エミリオ・リオスー以前から憧れていた兄の友人であり、いまや派手な女性関係で知られる裕福な実業家の彼。2年前に冷たくあしらわれて以来、距離をおいてきたけれど…。すると彼は挨拶もないまま、メーガンを引き寄せてキスをした。呆然とするメーガンに、彼は謎めいた視線を送ってたたみかける。「今夜、僕と一緒に過ごさないか?」「100万ドル出せるならね」動揺のあまりメーガンは軽口で返した。それが、めくるめく嵐のような1日の始まりだったー。
隣国のスルタンの誕生日パーティで、ジャミーラは初恋の人に再会した。少女時代から心ひそかに憧れていたシーク・サルマンー。5年前にジャミーラを誘惑して純潔を奪い、残酷に別れを告げた男。彼は今も悪名高いプレボーイとして自堕落な生活を送っているらしい。いいかげんに彼のことなど忘れようと決意したところだったのに…。目が合った瞬間、サルマンは苦痛を感じたように顔をゆがめたが、すぐにけだるげなまなざしでジャミーラの体を見下ろした。「君はあのときも美しかったが、今は成熟してあでやかな美女になった」値踏みするような態度に怒りを覚えて激しい口論になったのもつかの間、焼き印のように熱いキスでジャミーラは唇をふさがれた。
シングルマザーのリズは、社長秘書として一生懸命働いてきた。だが子供の進学を控え、昇給を願い出ようかと迷っていた矢先、人情味にあふれる上司ロンが急逝してしまう。新社長に就任したロンの息子チャールズは冷酷な男だった。彼はリズのたっての願いをにべもなく断り、侮辱したのだ。悔しさと恥ずかしさをのみこみながら家路へ車を走らせていたとき、雪道で大破した超高級スポーツカーが目に留まった。脇に立つ運転手はもちろん、都会から来たばかりのチャールズ。リズは一瞬昼間の屈辱を忘れて車を寄せ、助手席のドアを開けた。大嫌いなボスなのに、不覚にも顔が熱くなってしまうのを感じながら。
牧師である父を支えて生きてきたアイリス。しかし最近、父の側には未亡人のミセス・ステラが。複雑な心境のアイリスの前に、領地を継ぐべく幼馴染のアルバートが帰還する。不躾に結婚を迫り、アイリスの豊満な肢体に熱い視線を注いでくるアルバート。館に連れ去られ情熱的な指先に翻弄されつつも、愛のない結婚は決してしないと官能に耐えるが…。
エレナは逃げていた。暴力をふるう婚約者から。陸地にいてはきっと見つかってしまう。そう考えた彼女は、豪華なクルーザーの掃除人兼雑用係として働き始めた。だがそこでエレナは、元婚約者よりも恐ろしい男と鉢合わせする。アレッサンドロ・コレッティー悪名高いシチリア名家の跡取りだ。数カ月前、婚約者に連れていかれたパーティで、2人は出会っていた。あのとき、アレッサンドロはエレナをひと目見るなり、「あいつとは結婚するな。きみはぼくのものだ」と言ったのだ!エレナがとうに婚約破棄したとは知らないアレッサンドロは、クルーザーを発進させ、所有する島にエレナを連れ去ったのだった。
「エイミー、ショットガンを持ってこい」父の叫び声に驚き、幼いオリバーをその場に残して急いて駆けつけた彼女は、呆然と立ちつくした。ハンター、なぜ彼がここに、かつてわたしが愛したひと。でも、その愛は報われなかった。彼は心を閉ざしたまま、子供も家庭も欲しはしなかった。だからわたしは…。あれから三年半になる。そのとき、オリバーが顔をのぞかせ、父がショットガンの銃口をハンターに向けた。「どうやってエイミーとこの子に償うつもりだ。またこそこそと逃げるつもりか」そんな言葉より雄弁な沈黙が続き、ハンターの声が響いた。「エイミー、まさか…」。
“あのきざな男をぜったいぎゃふんと言わせてやるわ!”映画評論家のアマンダ・バタワースはその鋭い批評力を買われて、地方の小さなテレビ局からセントルイスのKCNX局へと引き抜かれた。しかも、そのセクシーな魅力で人気抜群の評論家カイル・フォックスが映画紹介をつとめる『シアター・トーク』の相手役としてだ。だが、才能、容姿の点でカイルには劣らないと思われるアマンダにも唯一弱点があった。それは、一見したところセクシーとはほぼ遠い、時代錯誤のお堅い女だと見られてしまうことだった。そんなアマンダをからかうように、カイルは初顔合わせのすんだすぐあとで彼女にいきなりキスをした…。
1896年にその産声を上げた近代オリンピック。本書では100年以上にわたる歴史を紐解き、その意外な真実、今では考えられない雑学を紹介する。