「エイミー、ショットガンを持ってこい」父の叫び声に驚き、幼いオリバーをその場に残して急いて駆けつけた彼女は、呆然と立ちつくした。ハンター、なぜ彼がここに、かつてわたしが愛したひと。でも、その愛は報われなかった。彼は心を閉ざしたまま、子供も家庭も欲しはしなかった。だからわたしは…。あれから三年半になる。そのとき、オリバーが顔をのぞかせ、父がショットガンの銃口をハンターに向けた。「どうやってエイミーとこの子に償うつもりだ。またこそこそと逃げるつもりか」そんな言葉より雄弁な沈黙が続き、ハンターの声が響いた。「エイミー、まさか…」。
“あのきざな男をぜったいぎゃふんと言わせてやるわ!”映画評論家のアマンダ・バタワースはその鋭い批評力を買われて、地方の小さなテレビ局からセントルイスのKCNX局へと引き抜かれた。しかも、そのセクシーな魅力で人気抜群の評論家カイル・フォックスが映画紹介をつとめる『シアター・トーク』の相手役としてだ。だが、才能、容姿の点でカイルには劣らないと思われるアマンダにも唯一弱点があった。それは、一見したところセクシーとはほぼ遠い、時代錯誤のお堅い女だと見られてしまうことだった。そんなアマンダをからかうように、カイルは初顔合わせのすんだすぐあとで彼女にいきなりキスをした…。
男ってものは。裁判所の廊下で、ヒラリーは憤慨していた。妹のテリーが、不倫の恋をして離婚調停に巻き込まれたのだ。男はいつもトラブルのもとだ。ヒラリーは気をまぎらすために、廊下で談笑する人々に目を移した。中にひとり、いかにも女性の敵という感じの男がいる。高価そうなスーツ、官能的な目。笑うと浮かぶえくぼが不つり合いだ。なぜか彼が気にかかるーそんな思いに呼び寄せられたように、男が声をかけてきた。「こんにちは、ミス・フェアファクス」どうして私の名前を。すると彼は、ヒラリーの従妹マリーンの義兄だと名乗った。夫を亡くした義妹の力になってほしいと言うのだが…。
悪女役をやらせたら右に出る者のない女優ケリー・ウェスト。彼女はスターの座を捨てて、今テキサスに帰ってきた。カリフォルニアから四日間もかかる車の旅で、故郷の町にたどり着いたとき、ケリーは疲れきっていた。一杯のコーヒーを求めて懐かしいデイリー・バーに立ち寄ると、そこで幼なじみのマットに出会った。今や、彼は町中の敬愛を一身に集める医者になっている。二人は昔と変わらぬ親しげな言葉を交わす。ところが疲労の極に達していたケリーは、その場で気を失い、マットの腕の中に倒れ込んでしまう…。
すさまじい爆音-耳をつんざく機関銃の音。アリサは懸命に走った。彼を助けなければ。「早く逃げて、早く!」だが、飛行機の爆音でその男に声は届かない。アリサが男に思いきり体あたりする。2人は抱きあったまま真っさかさまに用水路にころげ落ちた…。ミシシッピ川の下流に広がる豊かなデルタ地帯で考古学者アリサとペースの出会いは衝撃的だった。この瞬間から燃えあがる恋の炎。だが野性的な農場主ペースの表情がときおり暗く陰る。ふと彼の口を突いて出る“あの女”とは、いったいだれなのだろう?ポバティ・ポイント遺跡の祭壇で2人が愛を誓うのはいつか…。
マンディはこの西部の町、レッドポイントに戻ってきた。この町を出たのは…いや、逃げ出したのは、もう二十年以上も前になる。そのころ彼女は、教育の理想に燃える新米の小学校教師だった。昔と変わらぬ観光用SL鉄道に立ち寄った彼女は、オーナーだというさわやかな男性とふと言葉をかわし、親しみを感じた。向こうもマンディのことをよく知っている気がするという。やがて思い出したふたりは、気まずい顔でにらみ合った。わたしが初めて担任を受け持った六年生の、クラス一の問題児。わたしにここからしっぽを巻いて逃げ出させた、あのジョーイ。