アビゲイルは突然、夫のオーランドを事故で亡くし、十九歳という若さで未亡人になってしまった。母も継父もすでに亡い今、私は独りぼっち…。夫の葬儀の日、孤独感に沈んでいたアビゲイルは、一人の男の登場によって救われた。継父が目をかけていた料理人の息子、ニックだ。母と継父の結婚式のあと、継父の豪邸に連れていかれたアビゲイルを冷たく出迎えたのが彼だった。それまで継父の愛情を受けてきた彼にとって、アビゲイルは敵だった。以来、二人はなにかにつけて反目し合ってきた。アビゲイルとオーランドの結婚に反対したのもニックだ。そして今、彼は衝撃的な事実をアビゲイルに伝えた。彼女が継父から相続した莫大な財産はすべて亡夫が使ってしまった、と。途方にくれるアビゲイルに、ニックは手助けを申し出た。しかし、その条件とは…。
レイチェルは二ヵ月後に結婚式をひかえている。それなのに、式の手順をめぐって相手のロジャーと意見が合わない。今夜も言い争った末、彼女はパーティを抜け出してきた。帰途につこうとして、ふと広場の中の男性に気づく。男はハンドルに身を伏せ、身じろぎもしない。病気かしら?ほうっておくわけにもゆかず、レイチェルは男に具合を尋ねたが、直感的に、この男がトラブルのもとになるような気がして、急いでアパートに逃げ帰った。果たして翌日、レイチェルが名前も住所も告げなかったのに、その男はノックもなしに彼女のオフィスに姿を現した。
うなるような風と土砂降りの雨…。こんな天気だからといって一時間も待たされるいわれはない。こっちはNYタイムズの紙面を飾ったベストセラー作家なんだ。マーカスはいらいらと部屋を歩きまわりながら、実力派といわれる女性シナリオライターを待っていた。彼の作品を映画化するため二人で脚本を書くことになったのだ。まもなく元気な声とともに現れたアニーの姿は、マーカスの予想を裏切った。まるで子供じゃないか。小柄な体にケープをまとい、笑うとえくぼさえのぞく。一方アニーのほうは、彼の人となりを聞いていたので、挨拶がわりに浴びせられた皮肉も毒舌も意に介さなかった。手ごわそうな相手だけど、そのほうが刺激的だし、原作よりいい作品ができるかもしれないわ。マーカスは、一週間だけ試しに共同作業を提案する。始まりの一週間になるか、終わりの一週間になるか…。仕事始めは明日の朝9時。
ラスティ-さび色という愛称のとおり美しい赤毛のレベッカ。モデルとして今までそれほど目立たなかった彼女が一流のファッション雑誌『エラン』のモデルに抜擢された。撮影のためエジプトへ行くことになったラスティに同行するのはやり手とはいえ、ひと癖ありそうな編集者ダイアナ・バリー、ダイアナが連れてきたもう1人のモデルのルイーズ、そしてカメラマンは有名なジャン・リュック・スジュルネだ。ルイーズは彼に夢中でダイアナは彼とラスティを近づけまいとする。確かに彼はすてきだけれど私は恋ではなく仕事をしに来たのに。だがジャン・リュックのまなざしになぜかラスティの心は乱れた。
ヒラリーは舞踏会へ出かける支度を終え、鏡に映る姿をじっと見た。わたしも引っこみ思案な18歳のころとはだいぶ変わった。7年前の当時、ヒラリーはホテルに勤めていたが、そこで名バイオリニスト、クライブと知り合って恋に落ち、結婚した。だが、その結婚生活も1年とたたないうちに破局を迎えた。なぜなら母が…。いや、母ばかりを責めるのはよそう。今ではヒラリーはアンティークの店を経営し、インテリア・デザイナーとしても引っぱりだこだ。婚約者もいる。舞踏会で婚約が発表されたあと、ヒラリーはふと辺りを見回した。まさか!長身の男が近づいてくる。前夫のクライブだった。
ルーシーはある雪の日、息子を寄宿学校に送っての帰り道、運転を誤って車ごと溝に突っこんでしまった。なんとか車から抜け出し、歩いてやっと我が家にたどり着くと、電気はつかず、ホールは水浸しだ。雪で水道管が破裂したらしい。そんな窮地を救ってくれたのは、ジョナス・ウッドブリッジだった。彼にだけは助けてもらいたくなかったのに。あれは11年前…ジョナスの弟サイモンの突然の死後、サイモンとつき合っていた私が妊娠していると知った時の彼の態度。あの冷たい態度は忘れられない。その時以来ルーシーは、ウッドブリッジ家には頼らず独りで子供を産み育ててきたのだ。
政治家との結婚に夢破れたフォト・ジャーナリストのリンダは、思いがけずジャッドと再会する。ジャッドは、7年前の恋人で、テキサスの牧場主、そして、一度は結婚しようと夢見た相手だった。リンダは胸をときめかせ、ジャッドと会うが…。
悪女役をやらせたら右に出る者のない女優ケリー・ウェスト。彼女はスターの座を捨てて、今テキサスに帰ってきた。カリフォルニアから4日間もかかる車の旅で、故郷の町にたどり着いたとき、ケリーは疲れきっていた。1杯のコーヒーを求めて懐かしいデイリー・バーに立ち寄ると、そこで幼なじみのマットに出会った。今や、彼は町中の敬愛を一身に集める医者になっている。2人は昔と変わらぬ親しげな言葉を交わす。ところが疲労の極に達していたケリーは、その場で気を失い、マットの腕の中に倒れ込んでしまう…。
ダイナの恩人である、ソーシャルワーカーのレオのもとに、彼が面倒を見ていた女の子の一人から、救いを求める手紙が届いた。南米で、身重の体を抱えて困っているらしい。だが、レオは二ヵ月前に亡くなっていた。死の床にある彼から女の子たちのことを頼まれたダイナは、さっそく車で南米へ向かった。ところが、目的地も間近の山道で、車が動かなくなってしまった。そんな彼女を、ヒッチハイク中のジョーという男が助けてくれる。ジョーにはどこか人を寄せつけないところがあるが、仕事を持たずに放浪していると話す彼にダイナは心を惹かれた。
ビクトリア・レッサーは若い男女の仲を取り持つのが趣味で、今夜も自分が紹介して結婚した2組のカップルとディナーのテーブルを囲んでいた。その席で、2組のカップルは、お礼の意味をこめてビクトリアをカリブ海への宝さがしツアーに招待する話をまとめた。喜んで招待を受けたビクトリアは、姪のシェイを連れて港へ行くが、彼女たちを待ち受けていたのは、大学でラテン語を講じる教授と、彼の甥、ノアだけだった。こうして、2組のカップルが乗り合わせた古めかしい帆船は、コスタリカに向けてカリブの海へと帆をあげた。
ヴァレリーは胸の動悸をきっぱりと無視するとペンを取った。この面接だって、ほかの面接と変わらないはず。たとえ机の向こうに初恋の人ジェイが座っていたとしても。彼の履歴書は文句なく立派なものだった。でも、どうしてシカゴの大手法律事務所をやめて、故郷アムズデンの郡検事補という下級職に応募したのか。ヴァレリーは尋ねなければならなかった。大手ではなかなか法廷に出られない、と嘆いてから、ジェイはまっすぐヴァレリーを見つめた。「もちろん、個人的な理由もあります」ヴァレリーは、赤くなってはだめよと自分に言い聞かせた。それがわたしと関係あるはずないじゃないの。あれからもう何年もたつのだから。
探偵志願のチャーリーは、早く実務に取りかかりたいのに、ボスが言いつけるのは雑用ばかりで、手持ちぶさた。そこへ大学教授のデービッドから、失踪した母親捜しの依頼の電話が…。チャーリーは二つ返事で引き受けると、ボスに内緒でベテラン探偵になりすまし、二人で母親の追跡旅行に…。活発で機敏なチャーリーと、学問以外はからきし不器用な、どじのデービッドが、熱い思いを交わすのに、1週間とかからなかった。だが、旅の途中でチャーリーの嘘がばれ、怒ったデービッドは彼女を首にしてしまう。諦めきれないチャーリーは、密かにある場所を突き止め、独力で捜し出してみようと、目的地へ向かった。