囚人第723号の鷲尾進は終身刑の宣告を受け、韮山刑務所に放りこまれてからすでに3年を過ぎている。だが、鷲尾の記憶は、4年前に警察病院で目覚めたときより以前のことは失われていた!拳銃弾を頭に受け、記憶喪失症におちいったままの鷲尾に分かっていることは、自分が関西の巨大暴力団山野組の戦闘員10人を死体にしたことだけだった。俺は何者だ!何故10人も殺してしまったのだ!真相を調べるために脱獄した鷲尾はおのれの過去を調べ始めたー巨匠が雄大な構想で描く会心の官能&バイオレンス巨篇
コンピュータ結婚相談所“エム・システム”のオペレータ夏村絵里子はある女性のデータを見たいという客・土井綾子の申し出を断わる。綾子の兄は、エム・システム紹介の女性と新婚旅行中、死亡したのだ。ところが、その綾子は翌日、殺された!疑問を抱いた絵里子はデータを調べるうちに、恋人市川輝雄がエム・システムの会員であることを知り衝撃をうける。さらに、データに重大な秘密が隠されていることに気づく!彼女は同僚古川信宏に相談。彼は、コンピュータに仕掛けられた何かに迫るが、殺されてしまう。謎を追う絵里子。二つの殺人事件の交錯するところにさらに大きな陰謀が…?!何重もの“罠”が読者を魅了するコンピュータ推理の傑作!鬼才の才気あふれる推理作家協会賞受賞第一作!!
頭では分っていても、悦びを知ってしまったからだはどうにもならない。つい、新しいパートナーを誘ってベッドイン。「もちろん、いつまでもこんなこと、できるとは思っていないけれど…」と思ってみても、彼の腕の中でけだるくまどろむ彼女の姿がとても美しいのは、どうしようもない事実。新婚間もなくても、10年いっしょに暮らしていても、自分の本当の愛の姿に気づいた彼女の思いは同じ。本書はそんな女性たちの告白手記集です。
情報を売る男。国家を売る男。そして魂をも売る男。男達はすべてを喪くした時、いったい何を見るのか。そこには思想もなければ野望もない。ただ荒涼ながらも輝くべき「生」があるのみだ。沸騰した「血」があるのみだ。内閣調査室秘密調査官・水野洋治の凄絶な闘いと涸渇した「生」を見事に捉えた「ヴェトナム秘密指令」を核に、闇を纒い、息を密めながら、運命の轍を超えてゆくエージェント達の冷徹にして過酷な世界を描き切る、煌めきの傑作短編集。追随を許さぬ大薮春彦作品の力点がここにある。