リップは、キーパー牧場の巡回飛行機パイロットだ。彼は何事にも無頓着で、いつも超然としている。あるとき、牧場オーナーの息子が一匹の弱った犬を発見し、飼い主を上空からさがしてみるよう、リップに頼んだ。やがて重傷を負った男を見つけ、牧場の仲間に救援を頼む。他人の地に不法侵入した愚か者め。リップは男にはなんの同情心もわかなかったが、犬を自分の家に連れ帰り、獣医に診せ、世話をしてやった。数日後、犬とともに病院を訪れたリップは、男の妹だという魅力的な女性を見て、たちまち心を乱された。
イゾベルは五年ほど前に工芸品店を開き、一人で生計を立てている。彼女は男性との深いかかわりから離れたところで生きてきた。不仲な両親の姿をいつも見ていたせいで、結婚に対してどうしても肯定的な見方ができなかったのだ。ある日、イゾベルの店に危険な魅力をたたえた男性が現れた。その男性はパトリック・ライカーと名乗り、仕事の話があると告げてイゾベルを夕食に誘った。不審に思いながらも、彼女はパトリックの招待に応じてしまうが、彼の魅力のとりこになりそうな自分を恐れ、仕事の話は断った。だが、パトリックは再びイゾベルの前に現れ、セクシーな君にまた会いたくなったと言って彼女の心をかき乱した。彼の本当の目的は何?こんな魅力的な人が私に惹かれるはずはない。
ロバータは、エンジニアリング会社社長のソロモン・マクレインーマックと付き合い始めて一年ほどになる。彼は若いころ悲惨な結婚生活を経験したせいで、二度と結婚などしないと心に決めていた。ロバータは情婦だったのだ。彼の娘のバースデー・パーティーに招待された時も、ロバータは恋人として紹介してもらえないばかりか“愛人”と嘲られた。こんな扱いを受けるのは、もううんざり!マックにとって私はそれほど大切な存在ではないのだ。このまま関係を続けても、なんの希望もありはしない。私はマックを愛しているのに、彼が求めているのは体だけ。痛手が少ないうちに早くマックと別れるべきだ。でも、私は本当に彼を忘れ去ることができるのだろうか。
ロルフとキャリーは二人だけの兄妹だ。二人は極端に厳しい父親のもとで抑えつけられて育ったが、兄ロルフは父に反抗して勘当の身となり、メキシコで自由を謳歌している。妹キャリーは、父親に従順なあまり、自分の意見一つ言えない娘だ。そんなキャリーが生まれて初めての旅に出ることになった。メキシコ人の女性との結婚を決めた兄が式に招んでくれたのだ。太陽の国メキシコへ!キャリーの胸は躍る。ところが、メキシコシティの空港に兄の姿はなかった。早くもキャリーは、心細さに泣きだしそうになった。
ゼアラ・レイストンは25歳。ファション業界をリードするウェブスター&レイストン社の若き女社長だ。豪華なフラットに住み、地位も財産も申し分ない生活を送っている。しかし、この成功の陰には、18歳のときのつらい経験があった。ヒース・マスターソン-一目でゼアラを夢中にさせておいて何も言わずに捨てていった男性。あれ以来、ゼアラは、心のむなしさを埋めようと必死で働いて現在の地位を築いたが、人生を台無しにされた恨みは、7年たった今も消えてはいない。そのヒースが再びゼアラの前に姿を現した。新しい宣伝キャンペーンを担当する広告会社の社長として。
あれはブラッド…?ケリーは我が目を疑った。彼は四年前、まだケリーが十八歳のときに出会った初恋の相手ー。そして熱い思いを打ち明けた彼女を冷たくつきはなした卑劣な男だ。以来、ケリーはダムや橋を建設する土木技師を目指して脇目もふらず一心不乱に勉強を続けてきた。それなのに、メキシコで建設中のダムへ行こうというこの日に、ブラッドと再会するとは、なんと運が悪いのだろう。その上、偶然にもそのダムの現場監督を務めるブラッドは男ばかりの工事現場に若い女性を入れるわけにはいかない、とケリーのダム行きに強く反対した。
もうすぐ二十二歳になるマリアンは、叔母が家政婦を務めるテキサスの油田王、ワードの家へ行くことになった。不治の病に冒され、余命幾ばくもない老人の回顧録を書くーそれが叔母から聞いていた仕事だったのに、空港で出迎えてくれた相手を見て、彼女は唖然とした。ワードと名乗ったその男性は、顔立ちは古代ローマの彫刻のように完璧、肉体はたくましく鍛え上げられ、健康そのもの。頑固で横暴ともいえる態度の、青年実業家だった。すべては叔母が、二人を結びつけるためについた嘘だったのだ。初めは腹を立てていたマリアンだったが、次第にワードの魅力に引き込まれていく。そして彼の優しい導きによって、彼女は未知の世界へと一歩を踏み出した。
頑固な父親に反発していたグレイグは、大学卒業と同時にハワイに移り住んだ。大勢のガールフレンドと自由なビーチライフを満喫し、所持金が底をつくと、観光客相手にシュノーケリングツアーを始めた。その事業は大成功して、今や彼は億万長者だった。刺繍店を営むペネロープは、ある日、上得意の老紳士からハワイにいる息子の様子を見てきてほしいと頼み込まれた。断るわけにもいかず、彼女はしぶしぶ承知する。グレイグと過ごす休日が熱い日々になるとは予想もせずに。
「エイミー、ショットガンを持ってこい」父の叫び声に驚き、幼いオリバーをその場に残して急いて駆けつけた彼女は、呆然と立ちつくした。ハンター、なぜ彼がここに、かつてわたしが愛したひと。でも、その愛は報われなかった。彼は心を閉ざしたまま、子供も家庭も欲しはしなかった。だからわたしは…。あれから三年半になる。そのとき、オリバーが顔をのぞかせ、父がショットガンの銃口をハンターに向けた。「どうやってエイミーとこの子に償うつもりだ。またこそこそと逃げるつもりか」そんな言葉より雄弁な沈黙が続き、ハンターの声が響いた。「エイミー、まさか…」。
“あのきざな男をぜったいぎゃふんと言わせてやるわ!”映画評論家のアマンダ・バタワースはその鋭い批評力を買われて、地方の小さなテレビ局からセントルイスのKCNX局へと引き抜かれた。しかも、そのセクシーな魅力で人気抜群の評論家カイル・フォックスが映画紹介をつとめる『シアター・トーク』の相手役としてだ。だが、才能、容姿の点でカイルには劣らないと思われるアマンダにも唯一弱点があった。それは、一見したところセクシーとはほぼ遠い、時代錯誤のお堅い女だと見られてしまうことだった。そんなアマンダをからかうように、カイルは初顔合わせのすんだすぐあとで彼女にいきなりキスをした…。
男ってものは。裁判所の廊下で、ヒラリーは憤慨していた。妹のテリーが、不倫の恋をして離婚調停に巻き込まれたのだ。男はいつもトラブルのもとだ。ヒラリーは気をまぎらすために、廊下で談笑する人々に目を移した。中にひとり、いかにも女性の敵という感じの男がいる。高価そうなスーツ、官能的な目。笑うと浮かぶえくぼが不つり合いだ。なぜか彼が気にかかるーそんな思いに呼び寄せられたように、男が声をかけてきた。「こんにちは、ミス・フェアファクス」どうして私の名前を。すると彼は、ヒラリーの従妹マリーンの義兄だと名乗った。夫を亡くした義妹の力になってほしいと言うのだが…。
悪女役をやらせたら右に出る者のない女優ケリー・ウェスト。彼女はスターの座を捨てて、今テキサスに帰ってきた。カリフォルニアから四日間もかかる車の旅で、故郷の町にたどり着いたとき、ケリーは疲れきっていた。一杯のコーヒーを求めて懐かしいデイリー・バーに立ち寄ると、そこで幼なじみのマットに出会った。今や、彼は町中の敬愛を一身に集める医者になっている。二人は昔と変わらぬ親しげな言葉を交わす。ところが疲労の極に達していたケリーは、その場で気を失い、マットの腕の中に倒れ込んでしまう…。
「そろそろ、ぼくも結婚して家庭を持ってもいいころだと思ってね」ランドの思いがけない申し出に、サラはからだをこわばらせた。「家庭ですって?まるで重役会議でもするように椅子に腰掛けたまま、あなたは結婚のことを話すつもりなの?」父の突然の死で、サラはひとり取り残され、多額の借金を背負いこんでいた。しかし、父の長年の友人で、実業界の帝王であるこのランド・エモリーにだけは頼りたくなかった。「わたしの面倒をみると父と約束したことを理由に、一方的に結婚を迫る男なんて…」。
「そろそろ、ぼくも結婚して家庭を持ってもいいころだと思ってね」ランドの思いがけない申し出に、サラはからだをこわばらせた。「家庭ですって?まるで重役会議でもするように椅子に腰かけたまま、あなたは結婚のことを話すつもりなの?」父のとつぜんの死で、サラはひとり取り残され、多額の借金を背負いこんでいた。しかし、父の長年の友人で、実業界の帝王であるこのランド・エモリーにだけは頼りたくなかった。「わたしの面倒をみると父と約束したことを理由に、一方的に結婚を迫る男なんて…」