「わちきが酌をいたしいす…不調法なれど受けてくンなまし」廊で他藩の留守居から辱しめられた武士を救った華魁の気転。2人を待っていたのは運命のいたずらだった。-武士の意地と妻女の悲劇を描く「妻よ許せ」他、色情を描いて人間の業にせまる異色短篇9篇。小説の醍醐味はここに極まる。
今ふりかえれば、昭和19年から十数年余の、農家の嫁としての暮らしはなんと貴重な歳月であったことか。-あの日々、姑をはじめ村の女たちは、きつい農作業に励み、しきたりや行事を守り、気の遠くなるような労働を、寡黙に、確実にやり遂げていた。町育ちの著者の、村の暮らしへのとまどいは、やがて静かな感動となり、さらに歓びへと変わっていく。時と共に失われつつある日本人の「生」にむけるひたむきさを、四季の香りと共に瑞々しく映し出した、胸にせまる名エッセイ。
「引札」江戸から明治末ごろ、商品や店の宣伝のために配られたチラシ広告。商家などが年始の挨拶に得意先へ持参した美しい絵ビラ(ポスター)を、とくに正月引札という。えびす、大黒、福助、弁天、パラソル美人に陸蒸気。嬉しなつかし明治後期チラシ世界のスターたち。
パリから地方へ、やってくる一年の夢を織りなす。復活祭、パリの朝市、プロヴァンス地方の「光」、アパルトマンの生活、汽車の旅、ブルゴーニュ地方の伝統、いなかの小さなホテル、メトロ(地下鉄)等…早春の森からヴァカンスの夏にかけてのフランスをつづる。
戦国の遺風いまだ消えず、巷に浪人があふれていた明暦年間ー女遊びがこうじて扶持を失った伊吹進二郎は、ふとしたことから、芝居小屋瓢座を根城とする群盗の仲間に入ることになった。頭の草間匡助、若衆春日千之介、天草の乱の残党細見喜十郎など、腕に覚えのある面々が揃っていた。いずれもが、世をすねて太く短く生きようとの魂胆。ある夜、日本橋の豪商くじら屋に押し込んだ…。長篇時代小説。
英国は美しい…。豊かな自然、趣きのある街並みや建物、人びとの暮らしと生活哲学をつづる。
西欧の行事にもとづき、ハーブと暮らしとのかかわり、つながりをまとめたもの。はるか昔の人々がハーブに寄せた思いが、一年を通して行事とともにわかる。