日本中を震撼させた永代橋崩落から17年後、奇怪な連続殺人事件!鉄砲洲稲荷で蕎麦屋田之吉、湯島天神で煙草売り又五郎が相次いで殺された。死者の懐中に残された、五人の名を記した謎の書付け。いったい誰が?何の怨みで?
神田明神下に住む通いの摺師・安次郎。寡黙ながら実直で練達な職人の彼に、おまんまの喰いっぱぐれの心配がないと、ついた二つ名は「おまんまの安」。そんな中、安次郎を兄と慕う兄弟弟子の直助が、様々な問題を持ち込んでくる。複雑に絡み合い薄れてしまった親子の絆、思い違いから確執を生んでしまった兄弟など…安次郎は否応なしに関わっていくことにー。五つの摺りの技法を軸に、人々が抱え込む淀んだ心の闇を、澄み切った色へと染めていく。連作短篇時代小説、待望の文庫化。
呉服太物問屋の若旦那・綾太郎は悩んでいた。商売敵とはいえ、三百年続いた京の呉服問屋・井筒屋の暖簾をこのまま消してよいものかと。悩んだ末に相談に行った本両替商・後藤屋の大旦那からまさかの条件を突き付けられた綾太郎は、決着をつけるため、着物始末屋の余一とともに井筒屋へと向かった。一方、一膳飯屋の看板娘・お糸は十五のときから一途に思いを寄せていた余一と結ばれ、これから生まれてくる我が子の幸せを願い、ひと針ひと針、愛情を込めておしめを縫っていたー。市井の人情や温かさを描いた感動の大人気シリーズ、堂々の完結!!
呉服太物問屋の若旦那・綾太郎は、着物の染み抜きなどをなんでもこなす着物始末屋・余一のもとへ打掛の始末を頼んだ。毛嫌いする余一を困らせようと、生地が弱りすり切れた打掛を渡したのだが、その仕上がりは非の打ちどころのない出来栄えだった。余一に対して、何としても一泡吹かせたいと願う綾太郎。そんなある日、彼は古着屋の六助を伴い、余一に想いを寄せるお糸の飯屋を訪れた。血の気が多い職人や人足などの男達を前に、てきぱきと働くお糸を見て、綾太郎は彼女に惹かれはじめるがー(「藍の糸」より)。大好評、連作短篇時代小説。待望の第二弾!!
「井筒屋で配られている引き札を、五枚集めたら高価な絹のしごきが貰えるぞ!」「どうやら井筒屋は、配ったしごきの色で美人番付をしているらしいぞ!!」正月早々、江戸の町では開店したばかりの老舗呉服問屋、井筒屋江戸店の噂で持ちきりだ。しかし、巷を賑わす話の裏には、実は隠された陰謀があった…。井筒屋の真の“狙い”とはいったい何なのか!?着物の始末屋・余一が、一膳飯屋のお糸と共にその真相に迫るがー。着物の汚れも、市井の悩みも綺麗に始末する!!大人気シリーズ、待望の第四弾!!
激動の時代「昭和」とともにあった同人雑誌『日暦』60年間の盛衰を通して、文学に情熱を燃やした若き日の高見順、円地文子、渋川驍、田宮虎彦、大谷藤子らの青春群像を豊富な資料によって克明に描く力作長篇ドキュメント。