本書は、明治期から現代にいたる歴史小説と時代小説の主要作品を選び出し、その内容と特色を解説したものである。「通史」「作品解説」「作家紹介」のほか、巻末に「年表」「参考文献」「索引」を付して、収録されている作家および作品が、歴史・時代小説のジャンルのなかでどのような位置にあるかを理解する縁とした。収録作品の総数は283編、作家数は130名にのぼる。
『枕草子』『方丈記』『徒然草』といった古典から、作家・詩人・評論家・エッセイスト・民俗学者・科学者・数学者などさまざまなジャンルの現代の書き手までー書くときに拠り所となる「読むべき」文章を精選し、それぞれに解説を加えた、文例集であると同時に作文術指南の書。巻末に、文彩を網羅した「レトリック小辞典」を付す。
奇しき生涯をたどる哲学者皇帝を主人公に、文学創造の根底に横たわる叙事詩の精神を現代に見事によみがえらせた現代文学の最高峰。
渡来後の鑑真と弟子たち、陰謀術策に生きた藤原仲麻呂と孝謙女帝。天平期の政治と宗教の関わりを活写した、女流文学賞受賞の大作。
蘇我氏の血を享けた悲劇の女帝・元正女帝と新興藤原氏との皇位をめぐる葛藤。古代女帝の役割を描く『美貌の女帝』他8短篇を収載。
確かな史料解釈と巧みな構成で、草創期の鎌倉幕府を複数の歴史の担い手をとおして描き、直木賞を受賞した『炎環』のほか、三作収載。
平安から鎌倉という、戦中戦後に比すべき歴史の変革期を、源頼朝の妻として、また頼家・実朝の母として生きた、政子の波瀾の生涯。
史上ただ一人という女戦国大名は公家の姫君で今川義元の母-歴史の中に埋もれた人物に光をあて、今川氏のイメージを一新した作品。
史上随一の美女・信長の妹お市は政略結婚の犠牲者なのか…。英雄伝説を排した素顔の信長と戦国の歴史を左右したお市の劇的な生涯。
秀吉の天下取りの戦いが終ったその時から、おねねの戦国は始まった…。おねね・お茶々〔淀君〕など、秀吉をめぐる女たちの戦国時代。
江戸期には珍しい女性エッセイスト、只野真葛を描いた『葛の葉抄』、『炎環』以来ひさびさの連作小説『うたかたの』を収録。年譜付。古代から江戸まど、小説で辿る歴史の旅。
漢文との堅い絆を断った歴史叙述は、漢字仮名まじり文に新たな分割線を引き、おきまりの総ルビを振り捨てた小説は、新たな読者と新たな読みを成型しはじめるー。19世紀後半期、この国の言説の構造変動を踏査する、スリリングな道行き。待望の論集。