鎖国派と海外交易派の政争のうちに翻弄される、長崎奉行所の通辞上田与志と混血の美女コルネリアが結ぶ愛のロマネスク。
奇しき生涯をたどる哲学者皇帝を主人公に、文学創造の根底に横たわる叙事詩の精神を現代に見事によみがえらせた現代文学の最高峰。
鴎外歴史小説研究の新時代を予感させる激震の書が出た。本書に触れずに今後論が書けるか。「歴史其儘」の内実を抉って、「文芸」として蘇らせた感動の書が出現。
勧工場は明治一一年に設立された東京府営の大型小売業・共同店舗が第一号である。明治一〇年第一回内国勧業博覧会が開催され、その売れ残り商品を東京府が展示販売したのが勧工場物品陳列所である。同一三年民営化、また多くの勧工場が設立され、明治二〇〜三〇年代に繁栄し商品の陳列方式、土足のまま店舗に入る方式、正価販売方式などで都市住民の人気を集め、明治の都市文化に大きな影響を与えた。しかし呉服店が百貨店へ転換し消費者を吸引したため勧工場は急速に衰退した。本書は、その勧工場について、正確な実態を総合的に分析したものである。
四人の作者…井伏鱒二×中野重治×小林多喜二×太宰治…を列する居心地の悪さに近代文学研究という制度の枠、その政治性を気鋭の研究者が問い直す。
宿命を甘受して現実世界の中に生の意味を求める書家の本阿弥光悦、自分の心をひたすら絵筆にこめる画家の俵屋宗達、学問と事業の狭間で懊悩する角倉素庵-。三人の美しい魂の触れ合いをとおして描かれる嵯峨本の世界。
奇しき生涯をたどる哲学者皇帝を主人公に、文学創造の根底に横たわる叙事詩の精神を現代に見事によみがえらせた現代文学の最高峰。
比叡山開創1200余年、時をこえて不滅の光芒を放つ最澄の人間と思想をとらえた、吉川英治文学賞受賞の表題作の他4短篇を収載。
平安時代は、薬子の変後の嵯峨朝に始まる。王朝の推進者藤原冬嗣、真夏兄弟を軸に、桓武・平城・嵯峨の三代に亘る波瀾の時代を描く。
二十年余の平家一門の栄光と屈辱のすべてを経験した棟梁の妻・平時子を軸に、公家・乳母制度の側面から捉えなおした、新平家物語。
父明智光秀の裏切り、キリスト教という西欧との邂逅。細川忠興の妻お玉の数奇な生涯を描いた表題作のほか「青苔記」など6短篇を収載。
近代日本の翻訳論の歴史を、明治・大正期から昭和期にかけての代表的テクスト31編と、現代の翻訳研究者によるそれらの解題を通じて総合的に批評する、画期的で初の試み。翻訳研究の邦語必読文献。
本邦初のドイツ歴史小説論。十九世紀初頭の歴史小説の成立から、シュティフター、マイヤー、フォンターネ、ラーベ、ブレヒト…とつづく作品群を解説した。さらにバルザック級と評されるアレクシスの祖国小説の再評価、デーブリーンがスパルタクス団の一揆の挫折を壮大なスケールで描いた「ドイツ革命」の小説を紹介している。