鴎外、芥川をはじめ多くの“純文学系の歴史小説”が存在するが、それらは大衆小説の一部、または各作家論の中で説明されるという異様な様相を呈している。本書では文学史の記述上の問題を指摘し、範疇論の分析から、純文学系の歴史小説が史実・史料準拠のみを第一義とする歴史叙述とは異なり、歴史的な時空間に展開される独自の芸術作品であることを論述している。また、鴎外の歴史小説及び、鴎外の影響下に独自の世界を拓いた六名の歴史小説家の作品分析により、多面的な芸術的営為を解明している。
秀頼の狙撃に失敗した大賀は、祐夢に匿われるも徳川に捕らえられる。桝屋に潜む島たちにも追手が迫っていた。徳川幕府二代将軍となった秀忠は、本多正純らと、大坂と戦端を開く準備を急ぐ。一方、大野修理は幕府を牽制するためにとき衆を大坂城に迎え入れる決断を下した。大坂へ向かう19名の自衛官。残った穴山は大賀の処刑を知らせるために単身、大坂へ走る。夏の陣開戦時、空に轟いたのは米軍の戦闘機・ハリアーの爆音だった。
弘化三年、仁孝天皇の末子として誕生した親子(和宮)は、十六歳で徳川第十四代将軍家茂に降嫁。幕府は権威の回復に「公武一和」の政略結婚を策した。大奥に入った親子は、そこで江戸方、宮方の風儀の対立で苦悩する。だが、夫婦は互いを尊重し仲睦まじく暮らす。家茂は二度に亘って天皇に拝謁するため入洛。やがて、長州親征で三たび西上した家茂の身に異変が…。
武士道とは、生きること。みっともなくても生き抜くことだ。傷つき、汚れながら「わが人生」を歩んだ名もなき男たち-その逞しくも健気な生き方を鮮烈に描いた力作歴史小説。
徳川勢や米軍機ハリアーの猛攻を耐え抜いた夏の陣。一旦は朝廷の仲介で停戦となるが、秀忠は大坂方への再攻撃を画策。一方、武器・弾薬調達のため敦賀半島に向かった朽木らは、戦術核を手土産に米軍と同盟を試みる三ツ瀬らに捕らわれる。米軍の裏切りで村が空爆され、それを逃れた朽木は、小船にイソップを積み込みエセックスに接近、若狭湾に爆音と閃光が炸裂した。残弾千発ながらも自衛隊は徹底抗戦を決意する。
清張が舐めてきた人間の辛酸ー、権力の悪と個人の無力を慨嘆し、人間の本質に鋭く迫る。
兼好法師は歴史を影で操っていた?斬新な視点で描かれる新たな『太平記』の世界。伝奇小説の巨匠、幻の長篇、初の単行本化。
織田信長の登場をもって、群雄割拠の戦国は、天正年間にその沸騰点を迎えていた。白く秀でた額を持つ、この美しい武将は、人間の精神を焼き尽くし、神の座に就こうとしているのか。足利義昭を擁した上洛から、本能寺へ至る十余年の動乱を、正親町天皇の秘書官・勧修寺晴豊の目を通して描いた渾身の歴史小説。天皇と公家たちもまた、魔王・信長と闘っていたのだ。
安政七年、『桜田門外ノ変』。文久二年、『生麦事件』。幕末動乱の時代を開くことになる事変を追った二作品。
敗れ去るもの、落ちゆくもの、幕末維新時、抗わざるを得ず戦った人々の運命をたどる三作品。滅びゆくものを囲む歴史の趨勢を直視する。
篤い志とともに、次代を用意しながら歴史に殉じた者たち。追いつ追われつ、彼らが願い、目指したものとは。先駆者たちの孤独と悲運。
勘定奉行川路聖謨、通詞堀達之助。異国船の迫る幕末激動期に、第一線で誇り高く国を守り導いた先人たち。
なんとしても帰りたいー破船・漂流の果てに待つ、異国での過酷な境涯と歴史の翻弄。そして、時代は彼らの帰還をどう迎えたか。
激動の時代を証した女たちー鎖国から開国へ流れる歴史のただ中で、時代の障壁と運命の隘路に窮しつつ、人生を選択した女たちを描く大長編。
天正七年十月、武田信玄の六女・菊姫は、越後国主上杉景勝に入輿した。武田勝頼と同盟し、御館の乱で景虎を滅ぼした景勝は、菊姫と異母弟・武田信清を厚遇する。三年後、武田が滅亡し、帰る家を失った菊姫は、景勝を敬愛し、ひたすら上杉家のために尽くす。やがて、秀吉の命令で人質となり京の藩邸で暮らす菊姫は、正室として感情を抑え、お家の発展に心を砕いた。
志高く学び、信念堅く生きる。蘭学者前野良沢、幕末明治の医師、高松凌雲・松本良順。前人なき世界に挑み、日本の近代医学を拓いた立志の人々。
江戸庶民の衣・食・住!大道芸の数々からあっと驚く珍商売まで、江戸の文化と生活をになった人々の真実を網羅。
歴史を大観し、使命に任じる。大津事件、日露講和交渉、脚気による軍隊壊滅の危機。国の試練に際して、近代国家日本の理性を体現した人々。