土方歳三・33歳、中岡慎太郎・29歳、高杉晋作・28歳、清河八郎・32歳、桐野利秋・40歳、小栗上野介・41歳ーいずれも亨年である。幕末激動の世にこの若さで燦然たる光芒を放ちつつ消えた波瀾の生涯を描く。
天正七年十月、武田信玄の六女・菊姫は、越後国主上杉景勝に入輿した。武田勝頼と同盟し、御館の乱で景虎を滅ぼした景勝は、菊姫と異母弟・武田信清を厚遇する。三年後、武田が滅亡し、帰る家を失った菊姫は、景勝を敬愛し、ひたすら上杉家のために尽くす。やがて、秀吉の命令で人質となり京の藩邸で暮らす菊姫は、正室として感情を抑え、お家の発展に心を砕いた。
秀頼の狙撃に失敗した大賀は、祐夢に匿われるも徳川に捕らえられる。桝屋に潜む島たちにも追手が迫っていた。徳川幕府二代将軍となった秀忠は、本多正純らと、大坂と戦端を開く準備を急ぐ。一方、大野修理は幕府を牽制するためにとき衆を大坂城に迎え入れる決断を下した。大坂へ向かう19名の自衛官。残った穴山は大賀の処刑を知らせるために単身、大坂へ走る。夏の陣開戦時、空に轟いたのは米軍の戦闘機・ハリアーの爆音だった。
織田信長の登場をもって、群雄割拠の戦国は、天正年間にその沸騰点を迎えていた。白く秀でた額を持つ、この美しい武将は、人間の精神を焼き尽くし、神の座に就こうとしているのか。足利義昭を擁した上洛から、本能寺へ至る十余年の動乱を、正親町天皇の秘書官・勧修寺晴豊の目を通して描いた渾身の歴史小説。天皇と公家たちもまた、魔王・信長と闘っていたのだ。
織田信長が天下統一に向け邁進し始めた頃、能登の長谷川久六(等伯)は京を目指した。絵師として大望を抱く彼は、当時、画業隆盛を誇る狩野永徳に競争心を持つ。千宗易や前内大臣九条稙通らの後楯を得て、画技に磨きをかける久六。やがて、長男の久蔵も天稟の画才を発揮しだした。久六父子の台頭に永徳の異母弟は、一門の凋落を予見、どす黒い陰謀をめぐらす。
寿永三年(1184年)、義仲に代わって再び京に戻った平家を倒し、市中に入った義経は、後鳥羽帝を擁し、平家追討の宣旨が下されるのをじりじりしながら待っていた。一方、義経に追われ、後白河法皇、安徳帝をたてて屋島に退いた平家は、着々と源氏を迎え撃つ準備を。ついに勅命が下り、義経が平家追討に成功したかにみえたそのとき、頼朝を倒し、不気味にも鎌倉で沈黙を守っていた秀衡率いる奥州軍が、西へと移動を開始した!?源氏と平家の雌雄を決する最後の海戦!そこに参入せんとする秀衡の真の意図とは?書下ろし長編奇想歴史小説シリーズ、堂々完結。
国士無双と称された軍事天才「股潜り」の韓信の劇的生涯。宿敵項羽を撃滅、漢の太祖となった劉邦麾下の大将軍として、天下征覇の大功業に尽くした韓信が悲劇生涯を終えるまでを描く力作。
死の床にある秀吉をめぐって、北政所と淀殿、石田三成と古参の武将たちが激しく対立。慎重に時を待つ家康の巨大な影が、無言の圧力となって人々を脅かす。知性の人・石田三成の悲劇を描いた長編歴史小説。
「今昔物語集」や「古今著聞集」などの説話集を読んでいると、祖先たちの森羅万象の記憶が蘇ってくる。この“遠い記憶”を捜し索めているのが、著者の歴史小説なのだ…。事実と仮構の二元論に立って、“皇女和宮替玉説”を否定した「歴史文学の二元性」など、史実をふまえて〈人間〉の真実に接近する歴史随想の力作を収録した。
200X年、米朝関係緊張下に組織された「朝鮮有事派遣部隊」は、史上初の海外派兵途上でタイムスリップし、400年前の敦賀に漂着。時は戦国末期の関ヶ原合戦前夜、そこには彼らの知る正史とは微妙に異なる世界が展開していた。戦国大名・大谷吉継の庇護を受けることとなった100名余の自衛官らは、自らの生き残りを図るため西軍につき、石田三成らと命運を共にする決意をするが…。
二代将軍秀忠の末娘和子が後水尾天皇の女御として入内した。折りしも、「禁中並公家諸法度」による厳しい規制に遭い、朝延・公家社会は江戸幕府に強い反感を抱いていた。だが、天皇と仲睦まじく、天真爛漫な愛らしさを持つ和子に、周囲の人々も次第に打ち解けてくる…。朝延と幕府との平和のかけ橋として、後水尾天皇に嫁した三代将軍家光の妹・和子の生涯。
12世紀半ばの中国、宋は、大陸北方に女真族が興した金との戦いに敗れ、淮河より北の広大な領土を失った上、屈辱的な平和条約を呑まされていた。だが、政変によって金国王となった完顔亮に、不隠な動きがあることが密偵からもたらされた。宋皇帝高宗は、勇武知略の若き文官子温に、金に再侵略の意図があるか密かに探れ、との命を下した。女将軍と異名をとる母梁紅玉と共に金に潜入した子温は、侵攻必至と判断した…。60万の金軍を迎え撃と子温と忠臣英傑たち。長江を舞台に繰り広げられる宋vs.金の宿命の戦いを、華麗雄壮に描く著者渾身の書下ろし歴史スペクタクルここに誕生。
慶応三年(一八六七年)十一月十五日、坂本龍馬、暗殺者の凶刃を逃れる!十津川藩士を騙る暴漢三人が、近江屋の二階を急襲!龍馬は、とっさに高杉晋作から譲り受けたピストルで彼らを撃退、九死に一生を得た。土佐藩邸に身を移した龍馬は、討幕でなく廃幕による転換をめざして、陸奥宗光とともに精力的に動きだすが、挙兵討幕の動きは風雲急を告げていた。長州に次ぎ薩摩の西郷隆盛も武力討幕へと傾いて…。さまざまな陰謀と策略の乱れ飛ぶ維新の嵐のなか、幕府が、西郷が、さらに諸外国までもが龍馬の行く手を阻む!龍馬の想い描いた明治とは何だったのか。
慶応四年一月、龍馬の新政府構想をうけて実施された選挙で、密かに総理の座を狙っていた徳川慶喜の野望を打ち砕き、西郷政権が誕生した。西郷は大坂城を接収、斬新な国家運営を始めたが、旧徳川家臣の間に主君が西郷の風下に立ったことへの憤懣が巻き起こる。旧幕臣による政府転覆計画!発足したばかりの西郷新政権に忍び寄る暗雲!権謀術数!新時代に向かって進む龍馬に、西郷に向け、ついに矢が放たれた!龍馬の想い描いた明治は、実現できるのか?新時代の夜明けに、模索する青春群像を描く。
お福(後の春日局)は、稲葉正成の許に嫁ぎ三人の男の子を生していた。稲葉正成は小早川家の家臣として一生を終わるのをよしとせず、生家の美濃に戻っていたが、愛妄に溺れ、呆けのようになっていた。夫の醜態に愛想を尽かしたお福は、長子・千熊を連れて出奔、京へのぼった。幼児を抱え途方にくれるお福だったが、遠縁にあたる小野お通をとおして、徳川家世子・竹千代(後の三代将軍家光)の乳母という大役を将軍家より受けた。大奥に権勢を振るった春日局の隠された内実を鋭く抉りながら、波乱に満たち女の生涯を綴った書下ろし長編歴史小説の白眉!
生類憐みの令で民を苦しめ続けた五代将軍・綱吉。江戸は地獄と化し、人々は“花のお江戸は闇となる”と歌った。後に六代将軍・家宣となる綱豊は、将軍の座を巡る争いの波にもまれて育った。千姫の遺愛を受け、新井白石の知を学び成長した綱豊は、やがて思慮深い人物に。ついには“正徳のご治世”と呼ばれる善政の花を咲かせる。「理想の政とは」を問う傑作。
名古屋コーチンをつくったサムライ兄弟、瀬戸を蘇らせた磁祖・民吉、名古屋を維新の戦火から救った十四代藩主慶勝、通し矢で天下一となりながら夢を果たせなかった挙母藩士、新聞王・衆議院議長を産んだ、黎明期の中京言論界…等々をつづった歴史小説の第一弾。