愛する娘美和を白血病で失った時、夏目国光の妻佐里は出奔した。六年の後再会した佐里は末期癌に冒され喘いでいた。共に離さず肌に抱いていた愛娘の骨片が空白を埋めた。夏目は警察をやめ、家を売り、更に強盗を働いて金を作って、骨を噛む苦痛から佐里を解放するため、麻薬を購って死出の旅に出た。警察に追われ窮地に立つ二人を救ったのは山中に潜む老婆の集団だった。数奇な出来事と秘薬が与えた妖しい光明に従って、夏目と佐里の北へ向う旅が再び始まるー。生と死の深淵と凄絶な愛の形を物語に紡いで、著者の小説世界の一大結晶を示した、傑作ハードロマン。
元刑事中館進市が撲殺され、現場から愛犬のクロベエが消えた。四年前、中館とクロベエは殺人犯逮捕に一役かったが、犯人の美笹貴信は仮出所し、父が組長の暴力団美笹組小頭として羽振りをきかせていた。美笹組員が次々と黒犬に吠み殺された。クロベエの復讎か?だが人殺し犬は法によって薬殺される。美笹組は懸賞金を賭け、犬と人間の死闘に世論は沸いた(表題作)。他五篇を収録。
ありえたかもしれない人生のいくつかを失いながら、人は歩む…。現代人のひそやかな「生」を切り取る33のストーリー。
なぜぼくは巨大なフクスケに向かって走っているのだ。時代の断片に透徹した洞察を加え、刺激と退屈、美異化と同質化のイタチごっこ、ホンモノの快楽も退屈もない〈退屈なパラダイス〉からの逃走経路を模索する、マンガ、エッセイ、評論、小説の数々。あらゆる手法で80年代末を戯れ倒したこの本は、既にして懐しい90年代を嗤っている…かもしれない。
本書は1871年9月、ニューギニア島北東海岸に上陸して長期間滞在した若きロシア人学術探検家のフィールド日誌である。急ごしらえの小屋での不自由な生活に耐えマラリアと戦いながらも、言葉が通じず猜疑心の強い原住民の信頼を次第に得てゆく経緯を克明な筆致で記す。著者自身によるスケッチ37点。
戦後、経済復興の初期、昭和32年に始まり昭和59年に至る身を挺しての人跡未踏地域での調査体験、厳しい自然条件と戦いつつ資源獲得の夢を追い続けて果たせなかった男のロマン、世界各国の人々との交流を自然科学者の立場で淡々と語る著者、今や国際化を急務とする日本人にとって時宜を得た必読の書。
垢石初期の名作『諸国友釣り自慢』のほか、満州全土を釣り歩き、魚を語り、釣りに興じ、魔味を談じた『魔味談』と、招かれて九州を旅したときの想い出『釣り旅千里』の三編を収録した奇人垢石ならではの滋味あふれた紀行文集。
この辞典は、『広辞苑第4版』に収録された項目の見出し仮名と表記形とを、見出し仮名の綴りを逆に読んだ場合の50音順に排列したものである。
日本時代の痕跡、手つかずの大自然、北方四島の経済混乱、軍隊の内部崩壊?そして経済面での北海道との交流…。岐路に立つ千島の今日的状況を、ビビッドに伝える最新リポート。
遠い国にいるあの動物にあってみたい、そしてこの手で抱きしめたい。溢れだす好奇心と、小さな一歩から、その旅は始まった。ムツゴロウさんのライフワーク、ついに完成。
ナイル川流域に点在する古代エジプトの遺跡群。それらの歴史と、土地の人々との交流を愛情のこもった平易な語り口で紹介する。斯界の第一人者ならではの格好の『古代エジプト文化入門書』。
植物と人間の相互作用を、環境問題を中心に論じた著者長年のエッセーから精選。