昭和の始め、映画がトーキーになった。それまでのサイレント映画は、国境を超えて理解できる純粋な面白さがあった。世界は一つの文化を共有していた。しかし、映画に音が入ったとき、表現力が飛躍的に大きくなる一方で、映画は「ことば」という大きな壁にぶつかった。時あたかも世界大恐慌、ナショナリズムの台頭と共に、映画はプロパガンダの武器として利用され始める。娯楽から国策映画へ、不幸な変化の軌跡。
関東大震災の復興に必要な巨額な資金を、日本はウォール街・モルガン商会の協力で調達した。以降急速な近代化を実現していったが、実に国家予算の六割を超える対日融資をモルガン商会の手で受けていた。昭和初期、再び金本位制をとることが不可欠だとするウォール街の強い要請に導かれて、日本は金解禁を実施する。しかし、アメリカの株価の大暴落に引続く大恐慌。全てのシナリオは無効となった。
五百余の会社を設立・育成し、“大実業家”として名を馳せた渋沢栄一。現代人が学ぶべきその精神と行動哲学を独自の視点でとらえた渾身の書。
貸金業内部からの告発。借りた金は返すのが常識。これからも増える借金女の悲劇。
新しい国際社会のなかで日本が果たすリーダーシップとは。経済大国・軍事大国日本の“常任理事国入り”の選択はいかに。気鋭の国際政治学者が肉迫する。
中国では満州国を「偽満州国」と呼ぶ。それは、清朝の復興、皇帝への復辟の妄執に憑かれた一人の男と、大陸の「新国家」建設を一途に押し進める関東軍との、綱渡りのような13年半の建国の歴史であった。最後の皇帝と関東軍との、密室で繰り広げられた、権力を巡る野心と謀略、裏切りと失意のすべてを記録したノートが初めて公開された。皇帝薄儀の最も信頼厚かった通訳官の記した『厳秘会見録』である。
日独防共協定ー国際連盟を脱退し、世界の孤児となった日本とナチス・ドイツの同盟。緊迫の続く国際外交舞台裏では、常に何層幾重もの思惑が交差し、権謀術数が行き交う。誰が、どのように仕組んだのか。普段は巧妙に糊塗されたものが、ある時僅かな綻びを見せ、歴史の背景が顔を出す。ハックもクリビッキーも、そしてゾルゲも、それぞれの信ずるものに導かれ、悲劇の歴史を駆け抜けた。