海軍をひきいる米内が、陸軍同様に戦争継続を主張していれば、広島、長崎への原爆投下、ソ連の参戦があったあの時点でも、天皇の終戦裁断は不可能であった。米内は「海軍を預る者」(海軍大臣)として、海軍を運営して国を誤らず、海軍を犠牲にして国家と国民を破滅から救うという、抜群の功績を残したのである。
「日出づる国」日本の「東西観(東西信仰)」と、天地を結ぶ「柱を立てる」祭祀は、どのように生まれ、受け継がれてきたのか。纒向遺跡や土偶「縄文のビーナス」、諏訪大社の御柱祭、出雲大社の高層神殿、伊勢における夏至と冬至の太陽などから、そのルーツをたどり、それらが生み出した生活文化「神道」と稲作との密接な関係にふれるダイナミックで画期的な論考。
地中海に浮かぶニケ諸島を支配する、ウニオーネ・ニケーレ一家。そこに引き取られたリエトは、ある事情で一家から疎まれる存在だった。そんななか唯一リエトを大事にしてくれたのは、穏やかで優しい一家の跡取り・イザイア。自分のすべてを求めてくれた気持ちを嬉しく思い、一度だけイザイアと身体の関係を結んでしまったリエトだが、この関係が彼の立場を危うくすることに気づき、一方的にイザイアを突き放し姿を消す。しかし数年後ー別人のように残忍な微笑を浮かべたイザイアがリエトの前に現れる。「二度と逃げることは許さない」と孤島に閉じ込められたリエトは執着と狂気に形を変えたイザイアの愛情に翻弄されていくが…。
シーナのカメラ人生、一つの句読点。
2011年、網走。亡き息子との思い出の地を訪れた「わたし」の胸に甦るアイヌの歌。その調べに導かれ、ある少女の波瀾に満ちた物語が繙かれる。キリスト教迫害が進む17世紀、アイヌと和人の子チカップは、聖職者を志す少年ジュリアンと共に、故郷のマツマエから遠く離れたナガサキ、そしてマカウを目指す航海に出る。時を越え海を越え、多層的な物語が壮大に繰り広げられる、遺作にして津島文学の集大成。
一九四一年十二月七日、真珠湾攻撃の前日。宿毛湾では戦艦「大和」の公試運転が行われていた。世界最大最強の戦艦がその偉容を示す中、海面下には不穏な影が蠢いていた。一方、欧州では空前の好景気に沸くイタリアが参戦を拒否。大西洋では米駆逐艦がUボートを撃沈し、米独戦の火蓋が切って落とされた。緊迫する世界情勢の中、真珠湾に向かう帝国海軍第一航空艦隊は、航行中に米太平洋艦隊に捕捉されてしまいー。日本は絶体絶命の窮地を覆すことができるのか?「大和」なき皇国の反攻を描く新シリーズ、ここに開幕。
現在、野生生物たちは大きな危機ー地球史上6度目の大量絶滅ーに直面している。さまざまな人間活動(土地改変、乱獲、外来種問題、気候変動など)が、彼らを追い詰めている。生態学者がその事実を明らかにしてきた。しかし、絶望してしまうのは、まだ早い。絶望的事実を直視することが、希望の種をまくことにつながる。生物多様性の危機を把握し、生物多様性の保全を進めるために、生態学が、そして本書が間違いなく役に立つ。
魚のうろこをさわったことはある?タコって黒いスミをはくんだよ!サメの肌はざらざらしているって知ってた?手や指先を刺激しながら、子どもの好奇心に答える、さわってまなべるしかけ絵本。対象年齢2歳以上。
ウミサボテン、ウミフクロウ、ウミヤナギ、オカメブンブク、カメノテ…歩いて見つけたへんな生きものがぎっしり。
海の見える市立図書館で司書として働く31歳の本田。十年間も片想いだった相手に失恋した七月、一年契約の職員の春香がやってきた。本に興味もなく、周囲とぶつかる彼女に振り回される日々。けれど、海の色と季節の変化とともに彼の日常も変わり始める。注目作家が繊細な筆致で描く、大人のための恋愛小説。
人間活動を含んだ水辺の生態系を里湖・里海と呼ぶ。そこで採られた水産肥料の主な対象は、木綿やサトウキビなど近世の外来植物だった。山地の環境変化や都市の消費需要も視野に入れ、人為的な「自然」の実像に迫る。
マングローブデルタや都市で暮らす海民の生活世界を長年のフィールドワークをとおしていきいきと描き、ひとり歩きする市場経済という毒を周縁の社会の営みから逆照射する。