優れた厨師を輩出することで有名な斉家村に生まれた見習い料理人・斉鎌は、ある日見知らぬ男から不思議な鍋を借り受ける。しかしそれは煮炊きをしないでいると腹を空かして動物や人間を襲い始める、とんでもない鍋であった。鍋を返すまで故郷に帰ることは叶わないー流浪の身となった斉鎌は、鍋とむらに代々伝わる霊力を持った包丁を頼りに、戦場の飯炊き場、もののけの棲み家、名家の隠居所などで腕を揮いつつ、鍋の元の主を捜し歩くが…。若き厨師と怪しい鍋が旅の途上で出会う人々と不思議、そして料理。無類の面白さに満ちた美食中華幻想譚!
彼女と私、至極の関係性。“観測者”は、あなた。珠玉の7編とそれを彩る7つのイラスト。究極のコラボレーションが実現!新時代のトップランナーが贈る、全編新作アンソロジー。
日本一位、世界二位の歴史を誇るミステリ専門誌“ミステリマガジン”の創刊700号を記念したアンソロジー“海外篇”。一九五六年の創刊当時から現在に至るまでの掲載短篇から、フレドリック・ブラウン、パトリシア・ハイスミス、エドワード・D・ホック、クリスチアナ・ブランド、ボアロー&ナルスジャック、イアン・ランキン、レジナルド・ヒルら、海外の最新作を紹介し続けてきたからこその傑作がここに集結。全篇書籍未収録作。
なぜ人間はこうも悩むのか?現代社会よりはるかに厳しい野生の世界で生きる動物たちが、ホモ・サピエンスのちっぽけ、もとい、深刻なお悩みにアドバイス。珍&名回答のなかに明日を生き抜くヒントがあるはず。動物たちが教える、人生のサバイバル術。
薩摩藩士の岡元伊織は昌平坂学問所で学ぶ俊才であったが、攘夷に沸く学友のように新たな世への期待を抱ききれずにいた。そんな中、伊織は安政の大地震の際に、燃え盛る江戸の町をひとりさまよい歩く、美しい少女を見つけた。あやかしのような彼女は訊いた。「このくには、終わるの?」と。伊織は悟った。「彼女は自分と同じこの世に馴染めぬいきものである」と。それが、伊織の運命を揺るがす青垣鏡子という女との出会いであった。魂から惹かれあう二人だが、幕末という「世界の終わり」は着実に近づいていてー。激動の時代に出会いし二人の、悲劇の幕が、いま開く。
人気デザイナー・橘修伍の元に、怪しげな男が訪ねて来た。芝居の舞台美術を依頼したいと言うのだ。お話にならない報酬に断る橘だが、そこへ死んだ旧友の妻が訪れる。かつて彼が恋した女性が、冷たい怒りを胸に抱いて…(「最後の言葉は…」)。劇団立ち上げに奔走する青年・度会恭平とその仲間が、謎に満ちた事件を、人の心の不思議を、鮮やかに解き明かしてゆく。
60年の時間の闇からよみがえる宮本百合子と湯浅芳子の友愛の意味。書き下しノンフィクション。
陸軍武官としてまずラトビヤへ、後に第二次大戦下のスウェーデンに赴任した小野寺信は、戦争終結への悲願を胸に真剣な情報活動を展開した。夫とともにバルト海のほとりに七年、日本に残した子供たちを気づかいながらも暗号電報作業を担った著者が、和平工作や欧州引き揚げの真相を語る。
劇団に所属する兄貴は、ハタ迷惑な情熱野郎だ。その兄貴が引きおこす、悲しくもせつない愛の告発を描いた「兄貴の純情」や、温かく穏やかなレンジャーの深森護が織りあげる“心優しい真実”を若杉翠の手だすけで解きあかす「時計を忘れて森へいこう」や、表題作の「橋を渡るとき」などを収録。
失綜した女牧場主の莫大な遺産をめぐって憎悪を募らせる息子たち。否応なく巻き込まれた猟区管理官ジョーにさらに邪悪な復讐者の攻撃が迫り、愛する娘も危険にさらされていく。ジョーは大切な家族を守りきれるのか?ワイオミングの大自然を舞台に不器用だが熱い男の孤独な闘いを描く好評シリーズ第5弾。