あたし、雨宮結花には、両親がいない。パパとママの死後、あたしを引きとって育ててくださったのは、ふたりの親友だった石見家の、おじさまとおばさまで。あたしは、やさしい他人たちの中で、けっこう幸せに成長して、ことし、高2になった。そんな、ある日。大好きな“おにいちゃま”役である石見貴志さんから、プロポーズされたのだけれど…。あたし、まだ16歳なのに。人生、決めちゃって、いいのかしら…。
小さな頃からお世話になっている石見家の、ひとり息子の、貴志さん…、24歳から、あたし、雨宮結花は、プロポーズされてる。なのに、あたしの心は、街で出会ったばかりの男のコ、18歳の藤丸クンに、強く強く、引かれはじめても、いる。恋って、愛するって、幸せって、なに?16歳、高2の結花が、生まれてはじめて真剣に考えて、悩んで、迷って。ようやく見つけた、ほんとうに好きな人は…?!
朝子と8つの恋の変奏曲。離婚直後に、ふと思い出した古いあじさいの絵。あの花の絵を贈った男たち、私の青春を通過していった8人の男たち…雨の長崎から角館へ、あじさいの開花を追いかけるように、再会の旅が始まる。
中原街道ぞいの旗の台にある千々岩薬局は旗の台や荏原町の駅前商店街でも評判になるくらい大勢の客を迎えて繁盛していたが、一家5人は家族と言えない状態であった。父・夕起夫は女性関係がルーズで、母の葉子はそんな夫に黙ってたえていた。両親に反発する姉・加奈は薬科大学に入学すると、妻子ある男と自室で半同棲のような生活を始めた。高校生の美佐と祖母だけが、まともな生活を送っていたのだが、隣の独身マンションで別居中の人妻が殺され一家の残っていたたがはずれた。父が犯人だと主張する加奈は家を出、葉子が自殺を図った。そして美佐の唯一の拠り所である恋人の多久也との間にも、千々岩家の暗い影がさし始めた。
したたるようなあい紫の花ばなは、まるで大きなあおいまりのようであった。遠くでみると、しーんと沈んだようでいて、近よるにつれ、ぱっとあでやかな、ふしぎな魅力をもつ花、あじさい。蕗子は、吸いよせられるようにそろそろと、花に近づいていった。小学校上級から。
歌人の目に映えた自然と人情を温かく見つめた好随筆集。抑えた文章の底に深い喜びと悲しみが横たわっている。