「私は他者Xに悪いことをしたと思う」-私という主体の行為の結果生じる他者の受苦(パトス)について感受される罪悪感を、あくまで一人称的かつ経験的に分析し、一人の主体の本質、人間性の一断面に迫る。知的・普遍的現代思潮にあえて逆らい、秘私的個別性の中に特異な哲学を構築する。
無動機的にみえる大量殺人や異常な性犯罪が世間を驚かせる現代。犯罪と非行に関する心理療法のあらゆる技法とアプローチについて多面的・理論的に述べている本書は、そうした事件の解明を進め、犯罪者を理解する上で非常に貴重な指針を提供してくれる。司法心理療法に携わる者はもとより、さまざまな分野の人たちの関心に応える、価値ある一冊である。
名著『情緒発達の精神分析理論』に未収録2編を加え待望の新訳完全版!
長年にわたって青年期精神医学をリードしてきた著者の、理論と臨床両面からのアプローチを集大成する論集。摂食障害に関する先駆的な研究や青年期治療をめぐる多角的な考察、さらに分裂病や様々な神経症の精神療法論など、現代が精神科臨床の場に投げかける課題と格闘し続けてきた軌跡を収める。
悪いと思っていなくても謝るのはなぜか。児童期の子どもの対人葛藤場面における謝罪の発達を実証的に検討する。
フロイト、フェレンツィ、ビオン、ウィニコットという4人の精神分析の探究者と、日本人、夢、戦争、芸術、災害、ジェンダーという6つのテーマを軸に、これまで精神分析ではどのように「トラウマ」を捉え、語ってきたのかをたどる。
本書では、「うつ病に焦点を当てた力動的精神療法」を提案し、面接における実際のやりとりが豊富に紹介されているばかりでなく、自殺などの危機管理に対する力動的アプローチ、薬物療法や他の精神療法との併用などについても論述されており、うつ病臨床全体における力動的視点の意義についても理解を深めることができる。新しいタイプの病態をもつうつ病に対して、エビデンスのある治療法を追求する本書は、精神分析に馴染みのない読者にも大きな期待をもって迎えられ、日常の臨床に役立つ知見を提供することだろう。
パーソナリティ障害は、自傷、多量服薬、性的奔逸、過食、ひきこもりといった病的行為が前面に現れ、“悩む”から“行為をする”病態へと変遷している。そして苦痛な感情や困難な葛藤を抱え対処するのが当事者のみならず関係者や治療者でもある点に、パーソナリティ障害の難しさがある。したがって、症状や病的行為という目先の問題の緩和をもって良しとするのは早計であり、その意味でこそ、“エビデンスベースト”の名のもとにある安易な治療実践にはない、病者のこころに真摯に働きかける精神分析的心理療法が求められる。本書は、パーソナリティ障害への精神分析的心理療法という、病者のこころの本質を知り、その本質に働きかけていく治療手技の実際を提示することを試みる。さらに、そのために求められる理論や鑑別、治療手技が活きるための協同態勢や環境の準備についても提示している。
本書では、「うつ病」と診断されうる病態は「抑うつ」の一部にすぎないことを明らかにし、真に「抑うつ」というこころの状態への対象関係論的な理解と治療を示す。
「精神分析臨床シリーズ」の最終巻にあたる本書は、パーソナリティ障害への精神分析的心理療法という、病者のこころの本質を知り、その本質に働きかけていく治療手技の実際を提示することを試みる。さらに、そのために求められる理論や鑑別、治療手技が活きるための協働態勢や環境の準備についても提示している。シリーズ既刊書の臨床素材はパーソナリティ障害を基底とするケースから得ており、その意味でも本書はシリーズの最終巻にふさわしい内容となっている。
本書は、著者のこれまでの日々の精神分析臨床から抽出されたもの。主題は、転移、解釈、そして罪悪感という三つの概念におおよそ収められる分析臨床体験です。
物語の書き換え。医療者と患者の相互交流の扉を開くナラティブ・アプローチ。
運命を変えるような出会いを求めて東京に出て来た湊あきなは、無職で借金を抱えた千葉凜太郎に出会い……。元敏腕芸能マネージャー・凜太郎と孤独な家出高校生・あきなの恋模様を描いたドラマCD。
交通事故、自然災害、愛する人の急死…。多くの人は、人生のある時点で、一度ならず深刻なトラウマを経験する。ところが同じ出来事に遭遇しても、人によって反応は異なる。うつ病やPTSDを発症し何年も苦しむ人もいれば、試練の後、回復し前進する人もいる。こうした違いはなぜ生じるのだろうか?著者らは、ベトナム戦争時に捕虜になった退役軍人、虐待を受けた人、がん患者、誘拐やレイプの被害者等のトラウマ・サバイバーたちにインタビューを重ね、高いレジリエンスを発揮している人たちは、何かしら共通した方法でストレスとトラウマに対処していることを見出した。本書では、この分析結果から導き出された10のレジリエンス要因と、そのを裏打ちする疫学的、生物学的な最新の研究成果を併せて紹介している。困難な出来事の後に回復する能力ーレジリエンスとは何か、レジリエンスを身につけるためにはどのような実践が有効なのかを具体的に示した1冊。
他害行為防止と社会復帰のための技法と臨床実践。心理職の役割と機能を描いた初の実践的・体系的テキスト。巻末付録・簡易版のアンガーマネジメント「おだやかブック」、医療観察法入院治療の導入プログラム「発見プログラム」。